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今日から悪魔(ルシファー)  作者: 流石挿入画
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今日から悪魔(ルシファー)第九章

よろしくおねがいします

 ガコン!! ガンガンガンガン!!

 

 空間圧縮断絶砲弾。簡易空間魔術。白河が最も得意とする固有能力の一つ。単純な原理として相手を魔力によって空間ごと押し潰すエグイ攻撃。視界の先に入るのならばどこにいようと狙うことができる代物だ。

 空間が次々と圧縮され潰れていく。その度に甲高い音が響き耳をイラつかせる。

 固有能力には膨大な魔力が必要となる。特に現実空間に干渉する。物理現象から程遠い魔術ほどその量は増加していく上に体力を消耗する。

 

 レヴィアタンの力は強力だ。

能力だけならサタンルシファーベルゼブブの次に強力な代物だが如何せん魔力の消費がその三体に匹敵するため燃費が悪いともいえる。

 それくらい空間操作は難しいのだ。

 周りに影響を出さないという理由だけが異空間を作り出す理由にはならない。

 異空間とは空間を操る魔術に適した空間であり燃費の悪さを解消したり威力や精度を向上させるといった理由もあるのだ。

 

 しかし――、

 

 解放者というだけあって隙が無い。

 これで天使化していないのだからとんでもない力の持ち主だ。

 異空間を作り出す隙も作らせず攻撃と守りをしっかりとしてくる。

 空間圧縮断絶砲弾も空間固定による物理的動きを一方的に止める防御手段も無限には行えない。

 

 強い。想像以上に強かった。

 そこらの雑魚とは違い手加減する余裕も無いが異空間で無い以上必要以上の地上破壊は避けなくてはならない。

 敵が位相をずらしている為、他の人間に感知はできないだろう。だがあくまでずらして認識できなくしているだけだ。当然破損された場所はそのままになる。

「なるほど。マモンが危険視してただけのことはあるってことかしら」

「どうしたレヴィアタン。その程度か。七大罪が呆れるな」

 空間圧縮を避けるため随時回避行動しながら移動を繰り返す大男。まるで瞬間移動。一つ一つの予備動作が少ない。そのおかげでラグの大きい空間圧縮断絶砲弾が追い付かない。

 ユグドラシル側はラグナロク側以上に無関係の人間に正体がばれることを嫌う。

 そのはずなのだがこの男にはそんな様子が微塵も感じられない。全く気にも留めていないということだろうか。

「どうかしらね」

 瞬間――、拳が大男の顔面に突き刺さる。

「あんたが思ってる以上に七大罪は強いわよ。七大罪の私が言うんだから間違いないでしょう」

「かっ、どういう」

 痛みに怯む大男に追撃するように称号者を一撃の上で倒したケリを腹に力いっぱい放つ白河。

 それを素早く回避――できなかった。

 衝撃で吹き飛び辺りのコンクリートやパイプやらを砕き捻じ曲げて倒れ込む大男。

「知覚って言葉くらい解るわよね」

「知覚まさか……この俺に、いつ」

 空間知覚。認識そのものを操り誤認させる簡易魔術。

「気づくのが遅いわ。それとね、解放もせずにレヴィアタンの転生者である私とタメ張ろうなんて不可能だってことくらい理解できないのかしら」

 バランスを崩す大男にさらに連撃を加えるように空間圧縮で敵を押し潰す。

 殺した……とは思えない。

 空間圧縮断絶砲弾の威力は魔力の量によって変わる。

 相手の防御力が圧縮力を上回ればダメージを与えることはできても殺すまでは至らない。

 

 ガコンガコンガガガガ!!

「が、ぐ、がああ、ぐ」

 何度も空間ごと圧縮されながら原形を留める大男。

 空間内の知覚情報を操りつつ敵を押し潰す連続攻撃。

 白河の息が切れていく。

 ただでさえ燃費の悪い空間操作をこうも連発すれば対象の敵も無事では済まないが、術者も無事では済まない。

 魔術の行使に必要なのは魔力元素と体力。

 両方が万全であって初めてその効果を最大限に生かせるといってもいい。

 息切れが続く。

 しぶとさに白河は舌打ちをする。

 体力の限界が近い。そろそろ決着を着けなくてはまずい。

 そう思い全開の魔力を使い空間を圧縮した次の瞬間そいつが光を放った。

 即座に魔術の発動を停止。

 その行く末をわざわざ見届けてやらんとばかりに空中を優雅に漂う白河。

「いよいよかしらね。随分襲い出番じゃない。あんまり女を待たせるんじゃないわよ」

 その眩いまでの光は見覚えがある。この光を発した者の姿は変わり力も跳ね上がる。

 言葉と同時に空間圧縮断絶砲弾を試し打ちのように撃つ白河。

 が、当然のように空間圧縮を跳ね返す大男。

 烈風が辺りに吹き荒れる。コンクリートがギシギシと音を立てる。

 この男には簡易的な魔術である空間圧縮断絶砲弾はもう通用しないだろう。

「断層鋭絶剣」

 立川の右手に空間を振動させ唸らせる日本刀に近い透明の剣が出現する。

 空間を切り裂き、空間を繋ぎ止める、雑魚なら一撃の元にあの世へ送る代物だが解放した者を相手にすれば、通常の人間を殺す通常の刀程度の効果しかない。

 だが逆にいえば確実に通じるほどの空間攻撃。

 刀の形を常に魔力で作り出している為実は相当に燃費の悪い魔術でもあるが今目の前の敵を相手に異空間の中でも無いのならこれが一番効率の良い武器だろう。

 

 片方に三枚づつの翼を持つ天使が姿を見せる。

「初めましてになるのかしらね。ごめんなさい。私は今まで解放した天使を殺し損ねたことがないものだから当然初めましてよね。おかしなことを言ってごめんなさい」

 言いながら魔力でさらに肉体の強化を行う白河。

「あなたは一体どんな天使様なのかしら?」

「レリエルといえば解るか女」

 解放は人間を天使化させるものだ。通常の称号者では行えない高位魔術も扱うことができるだけでなく身体能力も転生者に匹敵する代物となる。

レリエルを名乗る男は先ほどまでとは違いどこか余裕に満ちた雰囲気を持っていた。

「解らないわね。レリエル? そんなマイナーな名前の天使じゃガッカリとしか言えないわ。どうせならミカエルとかメジャーなのが現れてほしかったものね」

「マイナーか。随分とした言い草だな。確かに……レヴィアタンを倒すには幹部クラスでなくては難しいかもしれんな」

 

 だが、とレリエルは笑う。

「随分と疲弊しているようじゃないか。力の無駄が多すぎるように思えるがね」

「あんた程度天使を殺すくらいなら十分よ」

「そうか……では始めるとしようか。天使と悪魔の殺し合いを」

 空間を蹴ったレリエルの早さは解放していない時のそれとは比べ物にならなかった。

 次の瞬間には宙を舞った白河に続けるように一撃をお見舞いしようとするレリエルに断層鋭絶剣を振るうもギリギリの間合いでそれを回避された。

 すぐに体制を整え壁を蹴り懐に飛び込み断層鋭絶剣を突き刺す。

 が、謎の力によって弾かれ、わずかに生まれた隙から放たれる光のビームをどうにか空間固定によって防ぐもその衝撃の反動で回転しながら飛ばされる白河。

 地面に着地した白河の頭上にレリエルが追撃をする。

 凄まじい法術による衝撃。

 範囲攻撃の為知覚操作も意味をなさない。

 何十層の高位法術か解らないが空間固定を砕くほどの一撃ではなかった。が、連続して行われる光の法術によって徐々に固定された空間に亀裂が走り、白河の額に脂汗が滲み出る。

 これ以上は耐えきれない。

 空間固定を解除し素早く横に回避する白河。

 彼女が先ほどまでいた場所に光の雨が降り注ぎコンクリートを砕いていく。

「判断が早いなレヴィアタン。でなければ今頃蜂の巣が出来上がりだ。もっとも味はよろしくなさそうだけどな、ふはははは」

 

 宙を優雅に舞うレリエルに、

「空間は私の専売特許よ。私の把握する空間内の情報は全て私のもの。空間を支配する私は戦いすら支配する。あんたの敗北は絶対よレリエル」

 ついていた膝を地面から離し立ち上がる白河。

 体力はかなり使った。いい加減に決定打が必要だ。

「そうね。だから教えといてあげるわマイナー天使。この一撃で全てを丸く収めてあげる」

「面白い。私も本気で行くとしよう」


 コンクリートが砕けるほどの衝撃で地面を蹴った白河は宙を舞うレリエルに接近。迎え撃つレリエルは謎の衝撃派を白河に向けて撃つ。

 ぶつかる断層鋭絶剣と謎の光の衝撃派の法術。

 その余波でただで狭い裏路地に圧迫されるような暴風が巻き荒れる。建物はギシギシと音を立て、簡単に崩れてしまいそうな衝撃。位相をずらしていなければその破壊音と振動で登校中の生徒やら一般人にも気づかれたことだろう。

「っは、ちょろいもんね単細胞は」

結果として謎の光の法術は空間ごと引き裂かれ、その引き裂いた空間内に吸い込まれるように白河とレリエルが吸い込まれようとする。

「な、これが狙いか。小癪な悪魔が」

「今更気づいても遅いわ」

「おのれ……」

「一緒に来てもらうわよレリエル。私の空間に」

 異空間の発生。

 レヴィアタンの力を最大限最適に使える空間へと二人は吸い込まれていった。


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