プロローグ
スニーカー二次落ち作品です。よろしくお願いします。
【プロローグ】
高校に入学すれば何か変わると思っていた。
ただ現実は厳しくて無慈悲で何も変わることはなかった。
何か面白い部活動でもあるかと希望を持って顔を出したがどれもこれも不思議なくらい普通で平凡でしょうもないものばかりだった。
もしかするとそう願っていたからそうなったのかもしれない。
今日もいつものように授業を受けている。
ときどき出る欠伸もいつものこと。
変化なんてあるはずない。あっていいはずない。
何も起きない平和こそ本来は望むべきものだと解ってはいても何かが起こってほしいと思うのは健常だと思う。
何が言いたいかというと。
天野鴇矢は退屈だったのだ。
高校になってもクラスのカーストでは下の方。いわゆる日陰者と呼ばれる身。かといって友人がいないわけでもない。中途半端な立ち位置。
それが幸せだというなら幸せなのかもしれない。
それでも鴇矢は平穏より刺激を求めていた。
それがどんなものか明確にイメージしていたわけではないが、そのイメージできない不可視の何かを鴇矢は求めていた。
そんな鴇矢の元にいつもとは違う非日常的な出来事が飛び込んできたのは高校二年になったばかりの春のことだ。
忘れようと思っても忘れられない全てを変えた日。
そして全てを変えた人物。
「初めまして。白河鈴音と申します。皆さんこれからよろしくお願いします」
転校生がやってくるというプチイベント。
しかもかなりの美少女ときた。
クラス中で歓声が上がる。これ以上に無いくらいだ。
それだけで如何に凄い美少女だということが解るだろう。
「ま、俺に縁は無いんだけど」
是非お近づきになりたいが鴇矢の席は廊下側の前から三番目という中途半端な位置で、お目当ての転校生は一番後ろの席となった。
一番後ろの席というだけで羨ましいことこの上ない。
鴇矢は高校入学以来一番後ろの席というものに縁が無かったからだ。
転校してきていきなりカースト上位にのみ許されるような席に座った美少女白河。
おかしいことに一目惚れなんてことはしなかった。
何故かって?
このクラスには白河に匹敵する美少女でありクラスのヒロイン的存在である長瀬実莉という絶対的存在がいたからだ。
どっちかといえば鴇矢は長瀬の方が好み。だからといって白河のファンになった連中を蔑むようなことはしない。
休み時間ともなればその美貌からか物珍しさからか野次馬が集まってくる。
鴇矢といえば、何もできずにその光景を見ているだけ。仕方ないだろう。鴇矢と美少女転校生では接点が無さ過ぎる。
それならいっそ関わりを持たない方がマシというもの。
陰キャと馬鹿にするならすればいいと鴇矢は踏ん反り返る。
美少女転校生? だからどうしたというのだ。
何も変わらない。
ちょっとしたイベントではあったが鴇矢には無縁のものだった。
そう無縁のもののはずだった。
だからこそ肘をつき、また欠伸。
「ほんとなんにも起きないな」
退屈な日常にいつものように退屈を感じていた。
ありがとうございました。