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第四話
その人は博に傘を差し出し、透き通る声をかけた。
「大丈夫ですか?」
ジイを亡くし、悲しみと孤独に打ちのめされたその日に彼女と出会った。
神様はいるのかもしれない。
彼女の名は白石結衣。
こんな偶然から、二人は恋人同士になった。
彼女は博のこれまでの孤独をくまなく癒し、まばゆい明るさを与えた。
それから博は会社で孤立することもなくなり、
家ではインスタントではなく、結衣の作る肉じゃがや魚料理を食した。
二人は一年後に入籍し、人生を連れ添った。
子供は出来なかったが、仲むつまじく穏やかな人生を共にした。
そうして博は結衣に看取られながら、88年の天寿を全うした。
眠るように旅立った博に、結衣は別れの言葉をかけた。
その声音は、出会った日に発したもの同様に透き通っていた。
「ありがとう、、また会いましょう」
結衣は博の右の手首を持ち上げ、それをペロリとなめた。
神様はいるのだ。