第二話
待望の第2話
虚言なんて無かったんや
ーカチッ カチッ カチッ
無機質な音が部屋に広がる。時を刻む時計の秒針がこの空間を支配する中、静寂を破ったのは常人ことお巡りさんであった。
「どうしてあんな所に居たんだい?」
随分と軽い口調ではあるが、その眼光からはこの不審者のどんな些細な反応も見逃さないという意気込みが見てとれる。
だがODAは悪びれる様子もなく
「どうしてですって?そんなの決まっているじゃありませんか。愛でるためですよ。」
しかし、お巡りさんは理解に苦しむようで立て続けに質問する。
「愛でるって何を?校内にあった花か?それとも飼育されていた兎か?まさかとは思うが、小学生じゃ無いよな?」
「どれも違いますね」
「じゃあ一体何を見ていたんだ?あんな嘘までついて」
「少女達を観ていt・・・」
だが何か引っ掛かったODAは今の言葉をゆっくりと自分の中で噛み砕き、咀嚼していく・・・。
実際に観ていたのは小学生女子である。したがって、此処は「少女を観ていた」というべきであろうか。否。しかしそれでは少女(7歳ぐらい〜12歳ぐらい)を観ていたという事であって、その言い方では幼女(3歳ぐらい〜6歳ぐらい)を観ていなかった。という風である。そんな事があってたまるか‼︎と自分を叱咤する。
(突然叫んだODAにお巡りさんはビック!となるが、そんな事には気付かない)
この完璧なロリコン紳士であるODA、生涯で一度でも幼女を軽視する事があってはならない。と今一度魂に刻みつける。そこで今度は完璧な答えを見つけ出すため思考する。
どの位時間が経っただろうか・・・1分か10分か、或いは既に1時間経過しているかもしれない。極限まで集中力を高めたODA時間を忘れて思考していた。
だが、ようやく・・ようやく答えを導き出したODAの顔はどこか誇らしく、まるで歴戦の戦士のごとくどっしりと構えていた。
ーゴクリ
誰かが生唾を飲む。
ゆっくりと動き出したその口からはODAの思いの丈が溢れ出す。
「僕は幼女と少女が大好きです‼︎」
「いや、ごめんなんの話?」
思わず素になるお巡りさんであった。
「ですから僕は、幼女と少女を校門から愛でていたんです!これが答えであり、それ以上もそれ以下もありません。」
はあぁ〜。思わず溜息が溢れる。これから更に見廻りとかあるのかぁ、面倒くせぇ〜。とボヤきながらも、目の前の変質者に焦点を合わせる。
「いつからだ?」
「そうですね、自分がロリコンと自覚し始めたのは・・・」
「違う。いつからだあんな事やっていたんだ?」
「あんな事ですって?今あんな事と言いましたか?良いですか、僕があそこで愛でる事で幼女t」
「ごめん、ごめん言い方が悪かったね」
「分かれば良いんですよ。全くこれだから最近の大人は・・・」
ブツブツと文句を垂れるODAに軽く殺意を覚えつつも職務を全うする。
「で?」
「5年前ぐらいからですね。」
「常習犯じゃ無いか・・・」
はあァァァァァ〜〜。溜息が防波堤の決壊により流れ出す。このままでは今後の仕事に支障をきたすと思い、目の前の容疑者を追い出すべく本題に入る。
「じゃあ、最後に一つだけ。色々苦情が来てるから、これだけ言わせてもらうね」
「苦情ですか?」
「そう、苦情だ。具体的には君にだ。」
「は?もしかしてあの子たちの保護者からですか?あの野郎どもは僕たちの気持ちなんて考えずに、『この子のため』とか言って、自分の意見ばっかり押し付けるんですよ。憤慨せずにはいられませんね。」
本気で怒っているらしく、ODAの背後には般若が浮かび上がっている。だがそこにお巡りさんが爆弾を投下する。
「『あの子たち』からだ。」
「は?」
投下された爆弾はODAの心の中で爆発し、思考回路をショートさせた。
だが、聞き取れなかったと勘違いしたお巡りさんは無意識に、トドメを刺すとも知らずに言葉を続ける。
「小学生から、苦情がきてるから、もう校門前には極力行かないようにね?まだ続けるようだと、此方も動かなければ行けなくなるから。」
ODAが頽れる。四つん這いになり、只々虚空を見つめる姿からは先ほどの歴戦の戦士の様な気品は微塵も感じ取れない。
『変質者の目撃情報・・・』
そんなODAに狼狽しつつも、突然入った無線へと意識を向ける。
『変質者の特徴は身長165〜175程度、体型は小太り。出没したのは昨日夕方で、被害者は小学生の女の子・・・』
前言撤回。今はこの犯人が何よりも大切である。未だに四つん這いになっているODAに質問を浴びせる。
「君身長は幾つだい?」
ODAは地面を見つつ、質問に答える。
「正確な数値は分かりませんが、170前半です」
お巡りさんの表情が険しくなる。
「君少し太っているね?体重は?」
目を瞑り、何処か感情のない声で淡々と質問に答える。
「67.5ぐらいですかね?夜中のカ“ロリ”ーの摂取は最高ですよ。」
その姿に何処か気味悪さを覚えつつも、核心をつく質問をする。
「昨日は何をやってた?」
目からハイライトが失われる。
「アリバイなら有りますよ。昨日は総合格闘技の練習があったので、夕方はずっと体育館にいました。」
鋭い眼光がODAに突き刺さる。が、目の前の少年は嘘を言っている様には感じられない。それに・・・とODAが言葉を紡ぐ。
「僕の心の根幹にあるものは『YESロリータ NOタッチ』ですから・・・」
静かな口調でお巡りさんを諭す。だが、その焦点の定まっていない目からは何も感じ取ることが出来ない。
「では、失礼しました。苦情が来たならば仕方ありませんね。もう金輪際あそこで愛でる様な事はしませんよ。」
帰り支度を始める少年に対し、混乱をしながらも、「もう暗いから、君も気をつけるんだぞ」と社交辞令を言いながら、交番前まで見送ろうと席を立ち上がる。だが、
「いいですよ。これから忙しくなるだろうし、少しでも身体を休めてください。」
というなんとも意味ありげな言葉に何処か納得しつつ、交番から出て行く少年お巡りさんはを見つめていた。その姿が見えなくなるまで・・・。
少年は不気味に口を歪ませる。
次回は・・・