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絶品料理は店長お手製

転移終了後、目を開けると俺は国の中で複数ある広場の一つにいた。この広場は主に長距離転移する際にとても用いられる。遠い所に行くには転移を使うのはこの世界では基本の常識。例えるなら地球の車の認知度といったところか。


現在時刻は真昼である。地球とは時間の流れ方が異なるので、日中ではなく夜中に活動するのはこのため。


俺が現在主に活動を(特に金稼ぎ)してるのはモンスターが大量に住み着く草原や洞窟があるグボーツィー王国。市街地内では、争い?なにそれ?と思われるという半端なく平和な国である。日本より安全かなというほど治安が良い。昔は他国が進軍してきたこともあったらしいが、大抵攻めた国と仲の悪い国々が一時的に団結し撃退してくれる。そして、時が経つにつれ全ての国が他国から制裁を食らうことを恐れて攻めるには鬼門の国となったという。へー。


某地球でロケット発射しまくるあの国とは周辺国の対応が真逆だな。平和とは意図せず守られるものと思ってしまう。


それからモンスター。冒険者が収入を得るには倒さないといけないが俺はあまり近寄りたくない。吐き気がする見た目のやつもいればグロテスクなやつまである。毒々しい見た目のキノコモンスターなんてまだ可愛い方。


なんだが。


外見で判断すると非常に納得いかないけど、モンスターの肉は・・・美味い。やや高級食材だ。さらに出すエキスは香水が出来るほど匂いが良い。他にも長所があるが実に解せぬ。もう見た目が論外だしぃ!


良い例を言おう。これまでに遭遇したなかで最も酷かったのはスライム見たいに変形するGフォルムのモンスターである。それが熊以上の大きさだったもんだから危うく粗相してしまうかと思ったわ。手足の震えが止まらなかったけど逃げ切れたのでホント助かった。


今はまだこの国しか知らないけど、いずれは国外に出てみたいな。


え?国?他にも一杯あるよ!数えきれんほど。妖精とか、ちょっと引くかもしれんが昆虫人とかいる国とか。でもモンスターではない、決して。理性があるし、フレンドリーな種族もいっぱいいる。どうしてか胴体虫だけど顔だけ人間の顔でイケメンや美女、なんてのがいるらしい。


通貨の単位はゴールドで、材質と価値は低い方から、


鉄(1G)

銅(100G)

銀(10,000G)

白金(100,000G)

金(1,000,000G)

ミスリル(需要によって変動し、一般人は一生見ることはない)

アダマンタイト(不明)

ヒヒイロカネ(不明)

オリハルコン(不明)


の硬貨が存在する。ミスリル以降の硬貨は市場に出回ることはない。材料が貴重すぎるためだ。だからあまりにも計り知れない多大な功績(国を救ったとか難病特効薬発見とか)が有ったものだけに支給される。


そして、貨幣のみでは不便なため、地球で言う小切手のような物でこっちでは魔法の紙に紋を描くことで通貨の代わりとすることが多い。


魔法紙紋を現金に替えてくれるのは王国だ。専用の窓口に持って行けば何時でも支払ってくれるが、多くの人はそのまま貯蓄して持っておく場合が多い。市場に出回るお金を制限する目的で少し利子をつけているからだ。


プラチナが金より安いんだって!銀もめっちゃ安い!これはなんということか!でも含有量はそこまでないらしい・・・。ガックリ。


と、まあ、この異世界について今知っているのはこれで以上。




俺はアイテムボックスから眠気覚まし薬を取り出して飲んだ。これは1錠で十分に眠気をなくせる優れもの。雑貨屋に売ってる。これが買えなかった時期はホントつらかった。


あ、アイテムボックスというのは誰もが持ってる自分専用の倉庫だ。異空間だか亜空間だか知らないが、兎に角欲しいものを念じただけでその場から持ち物を消したり出現させたり出来る。何があるのかも"所持リスト"と念じれば脳内で表示かアナウンスをしてくれる。俺はアナウンスが好きだからそっちにしてるけどね!女の人の声だし!テンション上がるんだよっ。


気になって困るがこの声の持ち主は一体どんな人なんだろうか!転移の時もアナウンスしてくれるし!会ってみたい!




そんな感じで一人であれこれ考えていたとき。


ぐぅぅぅぅ。


お腹が鳴った。夕食が早かったからそのせいだな。なら何か食べさせてもらうとするか。現在、俺は全財産を金貨に替えてしまったので金欠中なのである。


そこで知り合いの女の子がいる店に向かった。そこでは俺だけタダでご馳走してくれる。その理由はある事件を俺が解決してしまったから。




大通りの角でその飲食店は営業してるのである。所要時間は広場からたったの徒歩5分だ。


カランカラン。


「いらっしゃいませ! あっ! モットウさん!」


「こんちは。なんか食わしてくれない?腹へってさ」


「はい!喜んで!」


この世界では俺はモットウと名乗ってる。もっと金が欲しいという意味で。


彼女の名前はミモニーニュ。この店を一人で切り盛りしている若店長で料理は超一流。この異世界ビーラスで数少ない人間族の一人である。


彼女と出会ったのは俺がまだこの異世界に慣れてなくて冒険者の仕事すらしていなかった頃のこと。


当時はまだ所持金はなくぶらぶらするだけだった。そんな中。


あるお店の中で男が大きな声で怒鳴り声が。そこで好奇心で店内を覗き、盗み聴いた。その時の俺って周りから見たら野次馬で変質者だよな、完全に。


見てみると、ははあ、胡散臭いおっさんが少女に紙を突きつけている様子だ。


ここから先は直接彼女から教えてもらった話。


~~~


元々両親がこの飲食店をやっており、そんな中手伝いをはるかに越えたレベルで彼女はお店で働いていた。


なんでもお手伝いすることが楽しかったらしく、時々褒められるのも嬉かったそうだ。


お店は繁盛していたのだがある日親は相次いで働けなくなってしまった。それぞれ病気とケガだ。当初は命に別状はなく、娘の熱心な看病により長い時間さえかければ治ったそうなのだが、店を長期間閉めるのは大切な常連さんに迷惑がかかると両親は考えた。


そこで魔法で治すのは非常にお高いがお店で儲かっていたので両親2人とも高額の借金して治療しようと決意。すぐに稼いで返せると見越したのだろうが、不運なことに頼み先がとんでもないヤブ仲介で、金だけ騙しとられ治療が正しく行われなかった。


それどころか様態がさらに悪化し逝ってしまったらしい。その責任を取らせようにも元々助かりませんでした、治療代は頂きますと言い訳いう始末。


残ったのは娘、お店、多大な借金。それからというもの、彼女は哀しみに明け暮れる暇もなくお店を継ぎ、何とか営業はしたものの以前のようには客足は伸びず、ついに返済期限が迫ったというわけある。この世界は借金が払えないと借金奴隷落ちも有り得ると言うが・・・。


~~~


その時の店内での会話は聞いた限りこうだったかな。


男「こっちももう待てませんよ?潔くお店と貴女の身柄を明け渡して下さいますか」


ミモニーニュ「あ、あと少し!あと少しだけ待ってくれませんか!?毎月必ずお支払いしますので、お店だけは!私の大事な家なんです!」


男「そうは言ってもねぇ、こっちも商売だし、泣きつかれて金を払わない客も大勢見てきたから、ここだけ贔屓するわけにもいかないんでね、1週間後に権利書と身支度を整えて置いてください、専門の業者を呼びますから」


ミモニーニュ「うぅぅ、そんな・・・」


男はそう言って店を出ていった。その場で泣く少女。借金か~いくらなんだろ。男が机に置いていった請求書を覗き見る。俺は目が良いから見えちゃうんだな~。


うわっ、2200万G。金貨22枚か。ええっ!?客足が減少した中でも既に一年ごとに300万Gずつ返済してきたのかよっ!果てしなくこの少女の商売の上手いことが伺える。


俺より年下の女の子が、まさかの地球のリーマン年収くらい稼ぐとか気持ち悲しくなる。俺なんて生きてきた中で一円すら現金を稼いだことないんだよ!大手旅行会社の商品券なら相当貰ったが、景品で。


男なら俺に任せろと言いたいところだがまず金がこれっぽっちもなかった。ないので、無理です。ごめんなさい。俺は俯いたまま逃げるように店から離れた。


救うには金。何処の世界でも金でしか解決出来ない問題がある。俺なんかでは歯が立たない。運が無かったと諦めるしか・・・。


だが、このあとに知り合ったばかりの先輩冒険者についてこいと言われ付いていったらなんと賭け専門の獣レース場。入場料になけなしの全財産で獣券を一枚だけ買ったらまさかの1等賞。しかも60年前以来ずっと当たっていなかった全順位当てで何故かミスリル硬貨を景品で貰ってしまい、それが3000万の値がつき、期限に俺が全額払ったので奴隷落ちはなくなったのだ。あのときの借金取りの男の顔、面白かったわ~まさに言葉が出ない表情だったなぁ。何で赤の他人のお前が払うんだ?的な。余ったお金もぜーんぶお店の改装費に充て、見事彼女の大事な思い出のお店は再オープン出来たわけだ。


ミスリル硬貨を売っぱらった時金貨をお目にかかることはなかった。偽造不可能の魔法紙紋で支払われた為だ。何でも奪われても登録制なので所有者以外使えず他人が使えば捕まるし、超軽量で燃えないので広く利用される。特に重くない点と安全な点が大きいようだ。


また借金のお釣りは全部プラチナ硬貨だった。大量のプラチナを見て最初はうっほうほだったが地球に持ち込めないのではお札と一緒だ、意味がなーい。毎回思うが本当金貨の方が価値高いとか理解できん。


1Gたりとも残さず全部使ってしまったのはパパラッチ対策だ。大勢に見られたからな、ミスリル硬貨を売ったところを。目をつけられて巻き上げられては敵わない。金持ちは狙われるのが何処の世界でも共通事項、俺も気を付けておくことにしたのだ。


その結果、大したことしていないのだが少女を救済したことに。それ以来彼女は感謝の気持ちで俺の食事代をなしにしてくれるのだ。それと借りたお金はお返ししますと常に言っているがそれは断っている。

自分の為に使いなよ、と。


だってさ、まともに稼いだ金でもないのに貰ったらダメ人間に見えるじゃん。小さい子からお金を貰って生活する大人。うん、恥ずかしいしカッコ悪い。


金の話より俺が一番言いたいのは彼女の料理が絶品だということ。初めてその料理を食した時、思わず涙が止まらなかった。食事で泣くなんてこれまでに経験はない。行ったことはないけど3つ星高級レストランの料理レベルと断言したいね。


・・・彼女の料理を食べてから地球の飯が不味く感じだしたのは舌が肥えてしまったからと思う。どうしようか。いっそ移住したい!


「お待たせしました。最近人気になっている穀物を混ぜてみた料理です」


「待ってました!」


来るや否や即座に俺は食い始めた。


ムシャムシャ。ゴクリ。


あー。美味いな、いつ何を食べても。これを食べるために異世界に来てると言っても良い。本命は金稼ぎなんだけどね!

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