金貨自慢にならず
昼食の時間になった。さあて、学食に行きますか! 今日は何を食べようかな・・・
「よっ、ヤスハル。飯食いにいこうぜ!」
「お前今日は気分良さそうだな、なんかあったか?」
「お、いいねー行こうぜ! 良いこと? ・・・まあ小テストの出来かな」
「もしかして満点?」
「かもな、まだ分かんねーけど」
毎日のようにつるむ友達グループからのお誘いだ。当然一緒に食う。俺達四人は何時でも駄弁る仲なのだ。
今日はこいつらに自慢が出来るしな。どういった反応が返ってくるか楽しみだ。ふっふっふっ。
学食に着いた。この高校は生徒の数が多いので毎日学食に行列が出来る。前々から待ち時間が長いと苦情が出ているのか、数年後に増築する計画が上がっているらしい。
数年後って、俺らもう卒業してんじゃないか! 意味ないし! 在学中はこれが解消されないってこった。
「相変わらず混んでるな~」
「じゃ俺が先席取っとくわ、カレーで食券宜しく」
とダイキ。そう言ってそそくさと空いた席を探しに行こうとする。
「清算は後でな」
「分かってるって」
俺以外の友人達はとても金の貸し借りに緩い。今のやり取り以外にもこれこれこういうゲームソフトを買っといて~とかまで言っている。これが財布が厚いやつらの通常なのだ。
俺は唐揚げ定食にした。理由はコスパが良いからだ。白米はお代わりOK、スープか味噌汁、野菜と六つ程の唐揚げが乗っていてたったの三百円。なんて安いんだろうか。お財布にも優しく満足する程食える。
お盆を受け取り、取っておいてもらった席に座る。全員揃ったところで、
「「「「いただきます」」」」
食べ始める。まずは唐揚げを一口。パクッ。
うん、美味い。やっぱりこれが一番だ。
「そういやお前らあのゲーム最近やってるか? 最近アレに嵌まっててさ~」
ゲーマーのヨースケは相変わらず話題はゲーム。と言うより他の話をしたことがない。
「もしかしてギャラットバーク? 俺今レベル38」
「高いな、お前相当ギャラバーやりこんだだろっ。今デルマーの森で止まってる」
「・・・」
出た、俺が知らない話が。全くついていけずこの話に加われないのが超つらい。
「ヤスハル、お前もやらないか? ギャラバー。ゲーム機くらいくれてやるぜ」
「さすがにそれはまずいっしょ。自分の金で買うから。ちなみにそろそろ本体買えそう」
「おっ、貯金もう貯まったのか? 早い気がするが」
「それはだな・・・、じゃじゃーん!」
俺はポケットからあの金貨を取り出し三人の前に掲げた。
「あ? なんだそれ。コイン?」
「見たことない文字が書かれてあるな、何処のか知らん」
「聞いて驚け、こいつは金貨だ!」
「「「へー」」」
「反応薄っ!」
これ入手するのに約半年はかかったんだけど! もっとびっくりするかと思ったんだが。
「金貨なんて普通に店で買えるだろ? それがどうした?」
「俺自販機で幾つか買ったことある。スイス金貨とか」
「最近流行ってるよなー金買うの。必ず今後値上がりするとか言ってるし」
マジですか。俺なんてこれ手に入れたとき初めて金貨なんて見たぞ。やっぱ金持ってるやつらは一味違うな。
「そんで、どこのやつ? 多少知ってるぞ」
イラストレーターのナオトが話に噛みついてくる。
「えーと、それはな・・・」
異世界産ですなんて言えるかい! なんて答えたら良いんだ?
「知り合いの人から貰ったんだ。詳しく聞かなかったからから何処のかは知らない」
我ながら苦しい言い訳である。嘘はやはり暴かれ易いのか、
「保証書はちゃんと貰ったか?」
「え? 保証書? なにそれ?」
「買い取りに持っていくには保証書が要るんだぜ」
「知らなかった・・・。じゃ買い取られないのかな?」
「無理だ――――」
「いや、それはまだ分からんぜナオト。持っていく所を変えれば」
「買い取り業者もごまんとあるしな、ならば・・・」
このあと、食事の時間はずっとこの金貨についての話が続いた。