第八話「女神との修行最終日」
「おはようございます。今日が修行最終日ですね」
いつも通り笑顔でそう言った女神は例の赤い木の実を渡した。
うん。やっぱこの木の実不味いわ。ボリボリ食ってるけど。
それから、適当に魔法やスキルの練習をして休憩をはさんだりしてると、突然女神が言い出した。
「最終日ですから、なにか特別なことをしましょうか」
「特別なことってなんだ」
「あなたに称号を授与します。昨日の授業で称号に関してはやりましたね? 今からあなたに称号を与えます」
称号とは、その人がどんな人かを端的に表すことができる。称号の貰い方には2通りある。なにか大きなことを成し遂げたり、多くの人になにかを認められたりすると自動的に貰える。もしくは与えられるかだ。世界的に権力のある人がその人に称号を授与することもできる。
そして、称号とはただの飾りではなく所持者に大きな影響を与えるので、貰うとステータスや成長スピードになにか変化がある。つまり、称号を貰うということはとても貴重なことなのだが……
「いいのか? 俺に称号を与えても。俺はただの男子高校生だし。勇者でもないんだぞ?」
「ふふっ。ただの男子高校生が仮にも女神である私と6日間も一緒にいれませんよ。あなたには素質があるのです。勇者ではない。それ以上のなにかを持っているんですよ」
「いや、さすがに買いかぶりすぎだろ。俺はのんびり暮らしたいんだよ。適当に生きたいだけのやつだぞ俺は」
しかし、女神は笑顔で続ける。
「では、女神の権限を使い、あなたに称号を授けます。手を出してください」
……これ以上言っても無駄っぽいな。
無言で右手を前に出すと、女神が両手を当ててなにやら呪文のようなものを唱え始めた。
「はい。これで称号の授与は完了です。ちょっとオマケもつけときました」
「オマケってなんだ?」
「それは、見てのお楽しみです」
すると、周りの花や木が突如として分解されたかのように消滅しだした。
「……そろそろこの空間も維持が難しくなってきました。あなたといられた時間は楽しいものでしたよ。では八雲空悟さん、頑張ってください。私はあなたを見守っています」
そうか、もうお別れか。
「じゃあな。俺も助かった。えーっと、ユリアだったよな? ありがとう。いつかまた会おう」
女神ユリアは嬉しそうな顔で手を振っていた。
目の前が光で見えなくなり、俺の意識はそこで途切れた。
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1人、花畑の空間から宇宙空間に近いようなところにきた女神ユリアはなにか満足気な表情を浮かべる。
「空悟さん。あなたなら、真の目的に気づいてくれると信じてます。どうか、この世界を救ってください」
そう言いながら彼女は空悟の成長を願うのだった……