第一話「HRは睡眠時間」
俺は17歳の高校二年生。名前は八雲空悟。
学校からの帰り道だが、もう夜も遅いため周りには同級生たちはいない。別に、補習があったとか、居残りをさせられたわけではない。寝てたのだ。学校で。
明け方まで小説読んで一睡もせず学校行って、そっからずっと勉強するのは思ったほかキツい。だから俺は放課後に、部室で寝ていたのだが…ちょっと寝すぎたみたいだ。
周りを見るとクリスマスシーズンだからか、カップルや家族連れの人たちが幸せそうに街中を歩いてる。
時刻は夜八時。まぁ、男子高校生が一人でいるのにはなかなかに厳しい時間帯ですな。
人の笑顔を見るのは嬉しいことだが、たまには自分も笑顔になりたい。
寝癖を掻きながらそんなことを考えてると、後ろから肩を叩かれた。振り返ってみるとそこにはよく知ってる顔があった。
「よっ! なんでこんな時間にまだ制服で歩いてんだ?」
話しかけてきたのは同じクラスの後藤誠一。俗に言う親友ポジョンの男だ。中学から一緒の友人で、なかなかいい奴である。
「部室で寝てた。んで、さっき起きたから下校してる。以上。」
「マジか。もうあの部室はお前の城みたいになってるよな…」
そうなのである。先ほどから言ってる「部室」というのは、俺が所属してる映画研究同好会の部室のことなのだが、ほぼ俺の城になってます。
なんでそんなことしてるかっていうと、俺が部長で俺が作った部だから。
入学当初、遊び場が欲しかった俺はふざけ半分で適当な理由で学校に部活設立届けを提出。そしたら認可されてしまったので、部室で好き放題してる。
「誠一はなんでこんなところに?」
「買い物。兄弟たちの弁当の準備をしないといけないからな。」
相変わらずこいつは絵にかいたようないい奴だな。自慢の友人です。
二人で適当に喋りながら帰路に着いた。
こんな感じで俺の1日は過ぎていく。受験生だが、勉強はできるタイプなので特に進路も心配してないし、友人もいる。楽しい高校ライフを送ってます。
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翌日。寝癖を掻きながら教室に入って、自分の席に着席して寝ようとしたら不意に話しかけられた。
「おはよう! 空悟くん、今日も眠そうだね~」
「そうだな。俺は非常に眠い。寝させてくれ。」
この女子生徒は吉永結衣。高校に入ってからずっと同じクラスで俺の友人。明るく、優しい性格だから男女問わず人気もので、顔も悪くない。ってか可愛い。廊下を歩いてるとほとんどの男子生徒はチラ見するレベル。
「空悟くんってほんとネコみたいだよね。授業中も身体丸めて寝てる時あるしね。」
「だれがネコだ。授業を寝てるのは、話を聞かなくても理解できる内容だからだ。」
「なにそれ~ムカつくな~天才め~」
なんか唸ってるが、無視して睡眠を決め込ませてもらおう。
だが、それを阻止するかのごとくまた俺の机に近づいてくる奴がいる。
「八雲。寝たら死ぬぞ。」
「死んでたまるかハゲ。俺の生への執着なめんなよ。」
こいつも友人の1人。見た目ヤンキーの新庄勝。顔が怖い。
「いや、お前数学の宿題やってないだろ? 1時間目に提出だぞ。」
「さすがだマイブラザー。お前がいなかったらまた平常点が赤点になるところだったぜ。」
ヤバイヤバイ。勝がいなかったら詰んでた。いくら点数取れても、平常点赤点はシャレにならん。ただでさえ俺は他の人よりも居眠りするからな。宿題まで忘れたら、赤点必死。
「そもそも授業中寝なければいいだろう…」
「それは無理だ。睡魔には勝てない。」
「少しは起きようと努力しろ。」
「はーい。善処しまーす。」
と、いつも通り軽口を叩き合いながら時間を潰してたら担任の先生が朝のHRを始めに教室に入ってきた。
「皆さーん、着席してください。」
担任の杉山瞳先生はいつも通りの挨拶をしながら教室に登場。
…寝るか。やはりHRは寝るに限るな。
この行動が後にとんでもないことになるとは思いませんでした。