【第26話 混ぜるな危険】
「僕達の代表になってくれないかい?」
梅雨が明け蝉が鳴き始めたころ、遊びに来ていた霧島にそう告げられた。
「……、どういう意味だ?」
「そのままだよ、中立派日本支部の指導者として僕達をまとめてほしい」
「それはわかるが、なぜ俺?」
俺が指導者?
ありえない。
以前の会合の席にいた面々とその下にいる連中を俺が統括するなんてできるとは思えない。
「そうだね、単純に力があるから。それじゃだめかい?」
「確かに魔力はある方だし魔法も多数持っているが、指導者は流石にないだろ」
「僕やヒスイ、ギンも補佐に回るからさ」
「俺じゃまとめきれないと思うが……」
力があるだけで、魔法が多いだけで他の連中が言うことを聞くとは思えないんだけどな。
大体何をすればいいのかもわからないし。
もっともその辺は霧島達がフォローしてくれるのだろうが。
「そんなことないさ、それにがちがちに管理するわけじゃないんだ」
「というと?」
「力がある者がTOPにいれば、それだけである程度まとまるからね。それくらいでいいんだよ」
そう言って霧島は苦笑いしながらこちらを見つめてくる。
逆にあまり動き回られても困る。
そういうことのようだ。
お飾りになればいいのだろうか?
でもあまり意味がない気がするけど。
「ふむ……」
「最近中立派の力が落ちてきていてね、保守派や革新派に対抗できなくなって来ていたんだ」
「それでトップに俺を据えてお茶を濁そうと?」
「まぁそういうことだね」
会合の席を思い出すと確かに魔力が少ない人が多かった気がする。
力こそパワーな世界ってことなのかな。
会合であまり他の人たちと話す時間が無かったこともあり、いまいちオカルトの世界の雰囲気がつかめない。
「霧島達じゃだめなのか?」
「う~ん、僕達だとちょっと、いや大分力不足なんだよね」
そう言って霧島は下を向いてしまった。
霧島達にとってもぽっと出の俺を頭に据えるというのはあまり面白い事ではないはずだ。
それも自分たちの力が足りないからと言う理由で。
「そんなこともあるまいよ」
「いやいや。渡、君ほど突き抜けてる人がいると、ね」
「俺程度なら他にもいるだろうに」
「そうかな? 外のプール、前々回来た時は無かったと思うけど、前回来た時は既に出来ていた。どうやって作ったか教えてもらっていいかい?」
あ、それ魔法関係ないんです。
だがそれは言えない話だよな。
ギャグ世界とシリアス世界は混ぜるな危険だろうし。
「……、そりゃ工事業者にお願いして」
「たった1か月で? 素人の僕でも不可能だってことくらいわかるさ」
「……」
「別に責めている訳じゃない。ただそれだけの力があれば、やられっぱなしにならなくて済むんだ。僕達を助けると思って、力を貸してくれないだろうか」
そう言って霧島は顔を上げると力強い目線を俺に向けてきた。
やめて、そうじゃないんですっ!
その純粋な眼差しが痛いっ!
「最近なぜか革新派は沈黙しているけど、その分保守派の動きが激しくなって来ていてね。先日の襲撃も保守派の仕業と言うことが分かっているのだけれど、僕達では何もできないんだ……」
霧島は悔しそうに手を握り締め、歯を食いしばっている。
自分の力不足が悔しいのだろう。
「しかしだな……」
「確かに面倒事も多くなると思う。どうしても訪問客も増えるだろうし」
「訪問客?」
「ああ、以前一緒に連れて来た連中とかね」
ああ、友達の友達で、俺の友達でもある彼らね。
ふむ、彼らが頻繁に訪れる様になると。
「ほ、ほぅ?」
「君があまり人とかかわるのを好まないのは理解しているつもりだ。なんせこんな山奥に身内だけで暮らしてるくらいだからね。だがそれを押してお願いしたい」
「え、いや、別にそういうわけではないんだけど……」
「はは、気遣いは無用だよ」
「お、おぅ」
「メリットも一応ある。多分に名誉的なものだけど、それに付属して役得が無いわけじゃない」
「というと?」
「そうだね、例えば我々の指導者は表ではとある財団法人の代表になってもらうわけなんだけど……」
その後霧島の説明は1時間近くに及んだ。
ざっくり説明すると、一般人が入れないところに入れるようになったりVIP専用ルームが使えたり行列に並ばなくてもよくなったり……。
基本引きこもりの俺にはあまり関係のない事ばかりだった。
しかし、葵や朱子の夏休みの自由研究の助けにはなるかもしれない。
あれ、俺もやらされたけど毎年大変だったんだよね。
決して友達が頻繁に訪れることに魅力を感じたわけではないぞ。
そう、うちの子供達のためなのだ。
「なるほど、まぁお飾りの代表でいいのであれば吝かでもないな」
「ほんとかい!?」
「俺は友達には嘘をつかない」
「くくく、そうか。友達だから、か」
「いちいち言うな、恥ずかしいだろ」
「いやいや、やはり君は面白いよ」
「うっさい」
「はははっ、なんにしてもこれから頼むよ、代表?」
「しっかりサポートしてくれよ、副代表?」
そう言って俺達は握手を交わして笑いあうのだった。
「さて、それでは準備をしなきゃな」
霧島が帰った後、俺は庭に出て別館の近くへ向かうとそう言った。
「何を準備するの?」
付いてきたグリが不思議そうに俺を見てくる。
まぁ見てなさい。
「ぽちぽちっとなっと」
そして出来上がりましたは会議場でござい。
もちろんダンスホールや小会議場も併設されている。
これでいつ大勢押しかけてきても対応できるぞ。
今までは応接室やリビングだったから一度にせいぜい4~5人が限界だったがこれなら100人でも200人でも大丈夫だ。
友達100人出来るかなって訳だ。
「富士山の上で100人で食べるって、1人どこに行ったのかしらね」
「それは言ってはいけない」
しかしこれでポイントがまた心もとなくなってきたな。
しばらくは節約モードで行かないと。
そう思いながら俺とグリは玄関へ向かうのだった。




