【第18話 裏切り者】
「一応報告しとく」
「うむ、わかった。しかし七芒星の戒めの会場を強襲するとはの」
次の日、事の顛末を電話で爺さんに報告する。
あっさりどうにかなったとはいえ、襲われたのは事実だし。
「その場に渡がいてよかったのぅ。もし居なかったら大参事だったかもしれん」
「それは……」
そうだ、あっさり片付いたので忘れていたがあの時まともに対抗できていたのはギンくらいだったんだよな。
他は惨憺たる有様だった。
「それにしても、ミノタウロスとバフォメットか……」
「ミノタウロスはともかく、バフォメットはかなり強かったみたいだったよ」
「そうじゃろうな。ミノタウロスは魔物の域を出ん。しかしバフォメットは悪魔じゃからな」
「うん? 同じ化け物じゃないのか?」
「広義の意味ではそうじゃがな」
そう言って爺さんは説明をしてくれた。
魔物と悪魔、この間には隔絶たる壁があるそうだ。
特に大きな違いは魔法を使用するか否からしい。
「バフォメットは特に魔法を使った様子はなかったけど」
「いや、恐らくじゃが対魔法の防御系の魔法を使用していたじゃろう」
「そんな気配なかったけどな」
「そのあたりはうまく誤魔化したんじゃろうな。渡が見た限りだと魔法のダメージをほとんど負ってなかったのじゃろう?」
「ああ、ゼロってわけじゃないけど再生の方が早かったな」
「まず間違いないじゃろうな。バフォメットは魔法耐性が高いがそれでも10人以上の魔法使いから攻撃魔法を受けてダメージなしとはいかぬはずじゃ」
「なるほどね」
そもそも悪魔は魔法を使えることに誇りを持っているため、それを使わないということは無いらしい。
もしかしたら認識阻害系の魔法も使用していたのかもしれない。
今回はあっさり倒せたからよかったが、もしかしたら結構危なかったのかな。
気を引き締めないとな。
「ふ~む、しかしミノタウロス10体とバフォメット3体程度にその体たらくとはの……」
「うん?」
「昔はそれくらいであれば、苦戦はしても押し込まれるようなことはない程度の力はあったんじゃよ」
「へぇ……?」
中立派の力が落ちているのかもしれない。
そう爺さんはぼやいていた。
「それに、誰も指摘しておらんようじゃが召喚魔法陣が会場に現れたのじゃろう?」
「そうだな」
「内通者がおるかもしれんの」
「え?」
「その規模の召喚魔法陣を遠隔で発生させるのは非常に困難じゃ。つまり身内に裏切り者が居る可能性が高い。そういうことじゃ」
「それは……」
「気をつけるんじゃぞ」
「……、わかった」
確かにあれだけ人数が居れば間者が紛れ込んでいてもわからないかもしれない。
顔は隠されているわけだし。
しかし裏切りか。
あまり気分のいい話じゃないな。
「のぅ、渡」
「うん?」
「……、いや、なんでもない」
「なんだよそれ」
「うむ……。そのうち、必要になればわかるじゃろう」
「意味が分からん」
「分からない方が良いんじゃよ」
「はぁ……?」
意味深なことを言わないでくれよ。
気になって夜寝れなくなってしまうじゃないか。
「話は変わるがお嬢ちゃんは元気か?」
「葵の事なら変わりないよ。もうすぐ入学式ってくらいかな」
「そうか、それならあと3年かの」
「ん? 何が?」
「ほっほ、その時になったら教えてやるわい」
「これもかよ」
何でもかんでも秘密にされるってのはあまり気分のいいものではない。
そんな俺の思いが伝わったのか、爺さんは代わりに贈り物をしてくれると言ってきた。
「物というより人じゃがな」
「人?」
「葵の嬢ちゃんがいるのに屋敷に大人の女性が1人もいないというのは後々困ったことになるかもしれんからの」
「あー、確かにそうかも」
俺だと女の子のあれこれはわからないしな。
信頼できる大人の女性がうちに居てくれるのは助かるかもしれない。
その後、俺が葵の入学式に保護者として出席する旨を伝え電話を切った。
「ふむ、しかし大人の女性か……」
少し楽しみかもしれない。
うん、別に他意はないんだけどね?
ほら、うちって小さい子しかいないからさ。
いや、別に他意はないよ? うん、ほんとほんと。
「列車が通りますですー!」
「痛っ!? イタタタタ!?」
そんなことを考えているとクロノの謎の掛け声とともに連続して足に痛みが走る。
「な、なにを……」
見ればうちの女性陣が全員で電車ごっこをしている。
そして俺は電車に轢かれたらしい。
……、何をしてるんだ……?
「ごめんなさい、ちょっと足元が滑ったわ」
「いや、滑ったって……」
「滑ったんやー」
「いや、でも……」
「滑りました!」
「……」
「滑ったんですの」
「あ、はい……」
まぁ、仲良くやっているみたいだし文句は言うまい……。
「それではビトレイアー号出発ですー!」
そう言いうと彼女たちはどこかへ行ってしまった。
しかし、裏切り者号とは、なんつー名前だ……。
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