表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
90/114

【閑話 敷紙家のお正月】

明けましておめでとうございます。

本年もよろしくお願いいたします。

 ゴーン……、ゴーン……。


 除夜の鐘がどこからか聞こえてくる。

 もう今年も残す所あと10分程度か。


 リビングのテーブルではクロノがウトウトと舟を漕いでいる。

 流石に彼女にはこの時間まで起きているのは辛いらしい。


「もう寝た方が良いんじゃないのか?」

「まだです……、私はまだこんなところで終わるような魔導書じゃないんです……」

「そうか……」


 普段なら無理やりベットまで連れて行くところだが、今日はまぁ仕方がないか。


「お雑煮出来たわよー」

「おっ、まってました!」


 台所からはグリの作った雑煮をアルが運んでくる。

 今日の雑煮は醤油の雑煮か。

 グリは毎回雑煮の味付けを変えてくるから飽きることなく食べることが出来る。


「太ってしまいそうですわ……」

「それならお餅の数減らせばいいのに」

「お餅のないお雑煮なんてお雑煮じゃないですの!」

「そうかなぁ?」


 葵と朱子がそんなことを言っているが、俺は葵に賛同するね。

 むしろお餅だけでいい。

 野菜食べろってグリがうるさいから全部食べるけど。


「それでは……」

「「「「「いただきま~す」」」」」


 皆で合掌してお雑煮に手を付ける。

 TVにはゆく年くる年が全国各地の神社の模様を伝えてくれる。

 あんな人ごみにわざわざ寒い中出掛けるとか、ほんと日本人はマゾ気質だよなぁ……。

 そんなことを思いながら俺は雑煮に舌鼓を打った。


「もうすぐね」

「そうだな……」


 TVからはカウントダウンの音が聞こえてくる。

 5,4,3,2,1……。


「「「「「「あけましておめでとうございます!」」」」」」


 俺達はそのカウントダウンに合わせて新年の挨拶をしたのであった。


「お年玉! お年玉です!」

「お年玉屋~!」


 アル、それなんか違う。

 俺は苦笑いしながらぽち袋を取り出すと彼女達へ渡していく。


「これで縁日で豪遊するんや!」

「イカ焼き、わたあめ、フランクフルトですっ!!」


 少しは貯めるとかそういうことを覚えた方が良い気がするけど、魔導書的にはどうなんだろね。


「葵、朱子。はいこれ」

「え? よろしいのですの?」

「いいんですか?」

「もちろん、遠慮することは無いよ」

「旦那様、ありがとうございます……」

「師匠~っ! ありがとうございます!」


 うんうん、この反応が普通だよな。

 ちょっと落ち着く。

 君たちはこの家のオアシスだよ……。


「それから、グリも」

「私はいいのに」

「グリだけ無しなんてダメだろ。俺の気持ちだ、受け取ってくれ」

「そういう言い方は狡い(ずるい)わ……、ありがとう」


 素直じゃないなぁ。


 さてと、明日に備えてもう寝なきゃな。

 明日何があるかだって?

 そりゃもちろん初詣だ。


 ……、人ごみにわざわざ寒い中出掛けるなんて……。

 でも、皆の振り袖姿を見るために必要な代償なんだ。

 仕方がないんだ……。

 もういっそのこと敷地内に神社建てるかな。

 ダメか。

 縁日ないし。



 翌日の昼過ぎ、俺達は着物に着替えて近くの神社へ向かった。

 近いと言っても片道車で1時間近くかかるのだが。


 振り袖姿のグリ達は、美しい。

 そんな言葉しか言えない程だった。


 グリ、アル、クロノ、葵、朱子。

 振り袖姿の美少女5人を連れて俺は参道を進む。

 ふふ……、周りの視線を独り占めだぜ。


「イカ焼き3本ください!」

「うちは5本やっ!」


 ……。

 決して無限の胃袋<インフィニット・ジャスティス>を持つ二人の所為ではない。


「お~い、買い食いは神様に挨拶してからにしなさい」

「売切れたらどうするんです!」

「せやせや!」

「初日から売り切れとかないから安心しろ……」


 アルとクロノに注意をしながら参拝の列に並ぶ。

 流石に初日だけあって長蛇の列だ。

 30分ほど並んでいると、拝殿が近づいてくる。


「ほい、んじゃ一人5円な」

「もったいないです……」

「そういうこと言いません」

「願掛け、師匠はどうするんです?」

「特に決めてはなかったんだが、どうするかな」


 しかしそこでふと思いつく。

 もうこれ以上縁はなくていいんじゃないだろうか。

 むしろ縁を切りたい。


「う~ん、漠然としすぎてるかもしれないけど良いことがありますようにかな。そういう朱子はどうするんだ?」

「え? それ聞いちゃいます? だめですよー、こういうのは人に言うと叶わなくなるんですからっ!」


 じゃあなんで俺には聞いたし。

 仕方ないな。

 賽銭10円にして円満とか適当に願掛けるかな。

 そう思いながら俺は拝殿の正面に立ち財布に5円を戻すとお札を手に取って賽銭箱に差し込んだ。


「は……?」


 え、今俺は何をした?

 10円を取り出そうとして……、万札を……。


「渡、後ろが使えてるから早く」

「あ、ああ……」


 俺は呆然としながら鈴を鳴らし、礼をする。


「ご縁がありますように……、あ、違う、円満に……」


 その時だった、俺の脳内に声が響く。


「その願い、確かに聞き届けた」


 ……。


「グリ、今なんか声が聞こえたんだけど……。願い聞き届けたって」

「何を言っているのよ。空耳じゃない?」

「そ、そうか……?」


 ふと影が差した気がして空を見上げると、1羽の烏が拝殿の屋根から飛び立つところだった。

 どこか違和感を覚えたが、それが形となる前に烏は姿を消した。


「なんだったんだ……」


 そう思いながら俺は拝殿から離れる。

 あの烏、なんか変だったんだよな。

 う~ん。

 そんなことを考えていると葵に声を掛けられた。


「あの、旦那様。よろしければおみくじを引きませんか?」

「ん、ああ、そうだな」


 小銭を用意しておみくじが並んでいるテントへ向かい各々好きなおみくじを引く。


「大吉ですっ!」

「うちもやっ!」


 皆大吉を引けたようだ。

 まぁ、お正月だしな。

 こういう時っておみくじの中身がほとんど大吉に代わっているって聞いたことがある。

 気遣いだよなー。

 そう思いながら俺もくじを引き、結果を見て固まる。


「渡も大吉?」

「ま、まぁ似たようなものかな……?」

「そう、よかったわね」

「ああ。さ、引いたくじを結びに行くぞ」


 今年こそは平穏な1年になって欲しいものだ。

 結んだおみくじを見ながら俺は苦笑いをするのだった。

犬吉


犬も歩けば棒にあたる。


何をどうしようとも縁があります。


願事 縁がある、待人 縁がある、失物 縁がある、旅行 縁がある、商売 縁がある。

学問 縁がある、相場 縁がある、争事 縁がある、恋愛 縁がある、転居 縁がある。

出産 縁がある、病気 縁がある、縁談 縁がある。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ