【第9話 納豆スイーツ】
2016年10月15日改稿しました。
いや、終わんないよ?
あともう少しだけ続くんぢゃ!
絶対食べきれないだろ!という量のパフェだったが、グリが一人で食べきった。
すげえな。
というか、あれだけ食べたグリの腹が全く膨らんでいない。
その質量はどこに消えたのか……。
時空の裏側か?
「ふぁ~、食べた食べたぁ~」
グリが幸せそうにお腹を叩く。
御馳走してやったかいがあったというものだ。
パフェも残さず食べきったおかげで無駄もない。
「行儀悪いぞ」
「あ、ごめんごめん。……、ふふふ……」
「なんだよ、急に笑い出して」
「ん~ん、幸せだなーって、私馬鹿だったなーってちょっと思って」
「何をいってるんだ」
「ふふ、なんでもないよー」
「変な奴。さ、飯も済んだし、ちょっと買い物に付き合ってくれ」
「は~い」
その後商店街の木材屋へ向かう。
木材屋に近づくと木のいい香りがした。
少し癒されつつ俺は木材を購入する。
「そんなもの何に使うの?」
「まぁちょっとな、その時になってのお楽しみってやつだ」
うまくいくかどうかわからないしな。
「ふ~ん?」
「それと、これ、グリに」
「え? なにこれ?」
「髪留めだ。グリに似合いそうなのがあったからな」
「貰っていいの……?」
「グリのために買ったんだ、貰ってもらわないと困る」
「……ありがとう、大切にするね!」
いつものあざとい上目づかいではない、本当の意味での笑顔を見れた気がした。
その後ホームセンターを回りぞうきんやモップ等を買い足す。
屋敷全体の掃除は終わってないからな。
……、一体いつになれば終わるんだろ……。
屋敷に戻り倉庫に車を止めるとグリは上機嫌で玄関へ向かって行った。
「渡ー! 早くー!」
「はいはい、ちょっとまってなー」
俺は買ったものを台車に載せて玄関に向かう。
夕焼け空にカラスの声が響いた。
赤とんぼがちらほらと飛び始めている。もう秋が近い。
次の日からは毎日鍛錬を行った。
とは言っても庭に出した布団に転がって眩暈がするまで魔法を使い、昼寝をするだけだが。
ここ1か月、毎日18時間くらい寝ている気がする。
10月に入り寒い日も出てくるようになった。
幸い晴れが続いているおかげで日中は暖かく、鍛錬には影響が出ていない。
鍛錬ばかりしていたのでグリの機嫌が心配だったが上機嫌の日が続いていた。
一度変わったことはなかったかと聞いてきたが、特にないと答えると髪留めを触ってニマニマしていた。
ちょっと気持ち悪い。
鍛錬を続けたおかげで、どうにか一般人レベル程度には魔力容量が増えたとグリは言っていた。
そして元が少ないとはいえこの短時間でここまで容量が増えるのはすごいことらしく才能はあるらしい。
……、それだけ増えやすいのに今まで増えていなかったってことは……、考えちゃだめだな、うん。
鍛錬で増えたのは魔力容量だけではない。
魔法の熟練度も大幅に上がり、かなり器用なこともできるようになった。
霧で作ったスクリーンは4画面同時に作れるようになったし納豆は今では毎秒100回ペースで混ぜれる。
途中納豆の容器が砕け散り大変なことになったこともあったが納豆の容器を硬化することで解決した。
残念なこととしては納豆は50回程度混ぜたくらいが最も美味しく、その力を生かしきれていないことだろうか。
え?力の魔法?当然使ってるよ。
考えてみてくれ、高速で混ぜられる納豆の容器を普通の力で抑えられるか?
……つまりそういうことだ。
ここまでの話を聞いて諸君はふざけていると思っただろうか?
俺はいたって真面目に鍛錬をしていたんだ。
でも誰にも信じてもらえない……。
グリにさえ信じてもらえなかったんだ!
「いや、だって映画見ながら納豆混ぜてるのが鍛錬って言われても……納豆は美味しいけど」
「まぁそう思ってるがいいさ。今日までの鍛錬の成果をこれから見せてやる」
そう言って俺はグリを連れて久しぶりに書庫へ向かった。
「グリ、探知してくれ」
「いいけど……、探知……」
グリが探知の魔法を発動させたことを確認すると頭の中に描かれたレーダーマップを見る。
光る点は4つあるが……。
流れる魔力を意識し、そのラインにさらに魔力を載せるよう意識する。
「きゃあ!?」
グリの悲鳴とともにレーダーマップが消滅した。
「グリ!? 大丈夫か!?」
「だ、大丈夫、ちょっと驚いただけ……」
「そうか、よかった」
「でも、ごめんなさい、驚いて魔法を途中で破棄しちゃった……」
「いや、何をするか言ってなかった俺が悪い、すまんな」
ちょっと焦りすぎていたようだ。
そんなつもりはなかったのだが気を付けなければ。
「ううん、でも渡のすごく大きいかった……」
「まぁ、練習したからな。落ち着いたらもう一回いいか?」
「う、うん、優しくしてね?」
「……努力はしよう」
何でこいつは紛らわしい言い方するかな。
平静を保つのが困難になってくる。
「それじゃ、行くわよ。探知……」
再び頭の中にレーダーマップが表示される。
「行くぞ、力抜いて……」
ラインに自分の魔力を載せていくとともにレーダーマップ上に光る点が増えていく。
4……、8……、10……、14……。
「よし! すべての魔法を補足したぞ!」
「はぁ、はぁ……、渡……すごいわ……」
これであとはその地点の上下の本棚を漁るだけで済む。
……、まだまだ先は長い。
結局、全ての魔法書を探し出すのに3時間もかかってしまった。
「すごい厚さだな」
机の上に詰みあがった本を見ながら俺はつぶやく。
上位の魔法ほど分厚い本に逃げ込んだようだった。
「さすがにこれだけ分厚いとバールで突き刺すってわけにはいかないわよね?」
そう言って苦笑いするグリを横目に俺は肩をすくめる。
「まぁ、俺も魔法使いの端くれだからな、力技ばかりってのはな」
「それじゃ、中に入る本を決めましょ。どれがいいかしら」
本を触ろうとするグリを俺は制止した。
こいつも少し焦っているのかね?
「まてまて、気が早いぞ」
「あ、今日は探すだけで魔法を捕まえるのは明日にする? 探知で結構魔力使っちゃったもんね」
「そうじゃなくてだな、今回はこれを使うつもりだ」
「え……?」
俺は以前買った木材を取りだした。
それを本がぴったり収まるように加工する。
「この棚に魔法書を詰め込んでっと」
「渡……」
グリはなぜか悲しい顔をしてこちらを見てくる。
そう不安がるなよ。
俺に任せとけ。とグリに笑顔を返す。
悲しそうな顔をしていたグリは、今度は嫌そうな顔をする。
何が嫌なのか、解せぬ。
まぁいい。俺はおもむろにバールを取り出すと魔法を4つ同時に使う。
「硬化、バールと木材。混合、バール。力、バール」
すぅ……。
俺は深呼吸すると高速回転するバールを本へと全力で叩きつけた。
「貫けえええええええ!!!!!」
ガシ! ボカッ! 魔法書は貫かれた! グリモワール(笑)
「えええ……」
ドン引きするグリ。
だって仕方ないよね、俺はまだまだ高等遊民生活を満喫したいし。
冒険者は冒険をしてはいけない。なんて誰か言ってた気がするし。
それにちゃんと魔法(物理)を使ったし、問題はあるまいよ。
「グリ、それじゃ実体化と捕縛頼む」
「う、うん……」
なんか納得いかないとつぶやきつつ魔法を回収するグリを見ながら俺は達成感に身を震わせた。