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【第17話 酒池肉林】

この話で20万字となりました。(設定集込ですが)

皆様のご愛護に感謝いたします。

 多少何かあっても問題はあるまい。

 そう思ってました。

 つい先ほどまでは。


 何故彼女たちにお酒を飲ましてしまったのか。

 1時間前の俺を問い詰めたい。


 ――話は1時間前に遡る。


「ふ~、今日は疲れたな……」


 かけ湯をした後、湯船につかり手足を伸ばす。

 じわっと疲れがしみ出していくようだ。

 あー、たまらん……。


「渡、お疲れ様」


 そう言いながらグリが隣に座る。


「グリもお疲れ様」

「ううん、今回は私ほとんど何もやってないから」

「そういうな、お前が傍にいてくれるだけで心強いんだから」


 そう言って俺はグリの頭を撫でる。


「ん……」


 すると彼女は俺の肩に頭を預けてきた。

 前に比べてだいぶ距離が縮まった気がする。

 いいこと、なんだよな。


「あー、こんなところに居ました!」

「お、こっちかいな!」


 静かに月見風呂を味わっているとザバザバと音がして静寂の破壊者、アルゴンとクロゴンがやってくる。

 違った、アルとクロノがやってくる。


「よぅ」

「よぅ。じゃないで、兄さんお酒お酒!」

「お酒ですー!」

「んあー、まぁ持ってきてるけど、本当に大丈夫なんだろうな?」


 一応コップは4つ持ってきてるけど……。

 冷だしなぁ、悪酔いしなきゃいいんだが。

 風呂につけて温燗(ぬるかん)にしといたほうが良かったかもしれない。

 まぁ今更か。

 あ、良い子の諸君は風呂に入るときにお酒を飲んじゃだめだぞ!


「大丈夫やって、うちらいくら飲み食いしても影響せーへんやろ?」

「成長したくてもできないんですよ!」

「あー、うん、そうね」


 渋々俺はコップをみんなに渡す。

 あらかじめ氷水に漬けて雪冷え(ゆきひえ)にしておいた一升瓶には水滴が付いている。


 それぞれのコップに半分程度注ぐ。


「兄さんそんなしみったれたんやなくてもっと景気よく行こうや?」

「です!」

「いや、一気に注いだら温くなっちゃうし零れるかもしれないだろ?」

「そうね、またおかわりすればいいじゃない」

「しゃーないなぁ……」

「とりあえずはこれで我慢するです……」

「そんじゃ、乾杯」


 コップを掲げて乾杯し、その透明な雫を喉へと流し込む。

 火照った体に冷たい日本酒が沁みて行く。

 ああ……、たまらん……。


「ぷはぁっ!」

「お、おいしいです! 感動です!」

「うん、美味しいわね」


 あら、君たち案外いける口?


「おかわり貰えるかしら」

「うちも!」

「私もです!」

「へいへいっと」


 しかしもうちょっと味わって飲もうぜ。

 この日本酒、結構いい値段するんだから。


「あ、そうだ、アル」

「なんやー?」

「つまみ出してくれよ」

「おお、忘れとったわ」


 そう言ってアルは次々とつまみを出す。

 だが刺身は無い。

 残念だな。


「次は刺身用意しとくわね」

「頼む」


 そして1時間後。

 追加の日本酒をもふーるに取りに行ってもらっていた。

 わずか1時間で2升空けるとは……。

 ちょっと予想外だ。


「うみゃいなぁ……」

「おいひ~れふぅ……」

「ふふ……」


 若干出来上がっている気がするものの、俺はほとんど酔ってないからな……。

 もうちょっとだけお付き合い願おう。


「そうだぁ、渡ぅ、背中流してあげよっか?」

「んぁ? そうだなぁ、頼もっかなぁ」

「ずるいでぇ、うちも洗うっ!」

「私もでれすっ!」


 たまにはそういうのも良かろう。

 そう思いながら俺達は洗い場へ向かった。


 そして今、俺は体を洗われている。

 どうやってとは表現が出来ない。

 何故ならこの国には表現の自由などないのだから。


 しかし、気持ちいいは気持ちいいが色々アウトだよな、これ……。


「こんなもんかしらねー?」

「完璧やっ」

「ちくわ大明神ですっ」


 誰だお前。

 クロノか。


 泡を流して湯船に戻る。

 ああ……月が遠い……。


 もふーるに持ってきてもらった一升瓶を傾け、コップに命の源を注ぐ。


「うちもうちも~!」

「でしゅでしゅ……」

「うぃっく……」

「おおぅ、飲め飲めぇっ!」


 その日、空が白み始めるまで酒宴は続いた……。



「うう……気持ち悪い……」


 痛飲のツケは翌日払う羽目になった。

 しかし、とても楽しんだ気がするのだが風呂場に向かうあたりからの記憶がない。

 楽しい記憶がないのに苦しみだけ味わうとは……。


「頭が痛いですぅ……」

「む、むりや……」

「……」


 アルとクロノはもとより、グリも愚痴こそ言わないものの顔を真っ青にしている。

 治癒の魔法を使おうと思ったのだがそれはグリに止められた。


「痛みは、体の、警告だから……、二日酔いとかを、魔法で治すのは、ダメ……」


 こういうのを魔法で治すと最初のうちはいいが段々体がそれに慣れてしまい、自然治癒能力が低下するそうだ。

 過去には痛飲をしては魔法で治すと言ったことを繰り返し、最後にはちょっとした体調不良すら自力で治せなくなってしまった人がいるらしい。


「私達も、付き合うから……渡も我慢して……」


 そう、グリ達は一度実体化を解除すれば元通りなのに俺に付き合って苦しんでくれている。

 そこまでしてくれているのに魔法で治すわけにもいかないよな……。


「これ、飲むです……」

「これは……?」

「薬草を、煎じたもの、です……苦いけどよく効くですよ……」

「ありがと……」


 漢方であれば問題ないらしい……。

 俺はその苦くて臭くてドロドロとしたブツを目の前に死を覚悟する。

 クロノが苦しみながらも作ってくれた物だ。

 飲まないという選択肢は、ない……。


「うぐぐ……」


 ヤバイ、これ、もうね、ヤバイとしか言えないくらいヤバイ。

 人間が口にするものじゃないって、マジで。


 そう思いながらもなんとか飲みきる。


「ほら、兄さん、後はこれ食べて口直しするんや……」


 見るとそれは果物の砂糖漬けだった。

 流石アル、食べ物関係のフォローだけは完璧だ。


 結局その日、俺達は一日中寝て過ごす羽目になったのであった。

お読みいただきありがとうございました。

来年も良いお年を~。

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