【第16話 約束】
「それじゃ、これくらいで俺達は失礼するよ」
「せっかく呼んだのにこんなことになってすまないな」
「いえ、気にしないでください。むしろ楽しかったですよ」
アカリは申し訳ないと言うが、これはこれでよかっと思う。
それに実力行使をしてくる相手がいるということもわかった。
仲間もできたし、十分な成果だろう。
「そう言ってもらえると助かるね」
「よければ今度は家に招待させていただきますよ」
「いいのかい?」
「もちろん」
せっかくできた仲間だ。
この縁、大切にしたい。
「今度はゆっくり話をしたいものですな」
「よろしければヒスイも家に招待させていただきますよ」
「おお、よろしいのですか?」
「ええ、ぜひとも」
「それは楽しみですな。ああ、その際には手土産を持参させていただきますよ」
「気を使われなくてもいいんですよ?」
あまり気を使われるとこっちも疲れるんだよね。
フレンドリーに肩に力入れなくて済む関係を作りたいんだけど。
「そこの御嬢さん達に御馳走するとの約束がありますからね」
なるほど、そういうことなら別にいいか。
「おおっ! 頼むでっ!」
「ですですっ!」
……、君たちは少し遠慮するように。
後で連絡したときに彼女達の胃袋はブラックホールレベルだと伝えておかないとな。
恥をかかせかねない。
俺の言うことを聞いてちゃんと食べる量を抑えてくれればいいのだが、恐らく物足りない顔をするだろうし……。
「この借り、いつか返させてもらうよ」
「ああ。ギンも良かったらうちに来てくれよ」
「いいのか? 最初かなり失礼なことを言ったと思ったけど」
「戦友、だからな」
そう言って俺は拳を突き出す。
「ははっ、それはいい。うん」
苦笑いするギンが俺の拳に合わせて自分の拳を軽く打ち付ける。
戦友の俺達にそれ以上の言葉は要らない。
さて、帰るとするか。
「それじゃ、アカリ。頼む」
「うん、すぐに繋げるからちょっと待ってくれ」
「おぅ」
しかし、これも魔法なのだろうか。
転移系の魔法って俺は今のところ使えないから少し羨ましい。
今度教えてもらうかな。
「よし、繋がったよ」
「ありがとう。またな」
「ああ、元気で」
最後に握手を交わして俺たちは屋敷に戻って行った。
「お帰りなさいませ」
「お帰りなさい……」
屋敷のリビングに到着するとそこでは市野谷と葵が待っていた。
もう深夜2時を過ぎようというのにまだ起きていたのか。
「お館様より早く寝る使用人など居りません」
「お、おぅ、そういうものか……」
そういえば昔見た本か何かでそういうことが書いてあった気がする。
主人が寝るのが遅かったり不規則な生活をしていると使用人が困るとか何とか。
……、気を付けよう。
うう、家にいるはずなのにまったく落ち着かない……。
かと言ってクビにするわけにもいかないし……。
仕方ない、のか……。
「葵もまだ起きてたんだな」
「旦那様より……、早く寝るなんて……、ありえませんわ……、ふぁふっ……」
しかし何とか耐えているもののもう限界ギリギリの様だ。
「もう俺も寝るから葵も寝室へ行きなさい」
「はい……」
そういうと葵はふらふらとリビングから出て行った。
さて、俺は少し汗かいたし軽く風呂に入ってから寝るとしよう。
市野谷さんは……、男だし我慢してくれ。
「兄さん、早く風呂いこーや」
「ですですー」
「お~ぅ」
ふむ、そういえば小腹もすいたな。
アルがタッパに詰めてきた料理もあるし、お酒を持って行って月見酒とするか。
会場ではあまり飲み食いできなかったし。
そういえば刺身はどうなったのだろうか。
いや、食べたいわけじゃないんだけど元気になってしまった魚達の処遇が少し気になるところだ。
ん……?
まてよ、魚から死なない程度に身を取り出して食べた後治癒を掛ければ永久に食べ続けれるんじゃ……?
まぁ魔力の無駄遣いだし、それに可哀そうだからダメかな。
「アルー、酒もってくから料理出しといてくれー」
「あいよー。あ、そや、うちらの分のコップも用意してな?」
「あれ、飲めるのか?」
今まで飲んでいたところ見たことないんだけど。
「飲んだことないですけどたぶん飲めると思いますです」
「ふ~ん?」
「兄さん美味しそうに飲むやん? うちらも飲んでみたいなぁ思ってなー」
「それは構わないけど……」
未成年が飲酒云々は……。
まぁこいつら俺より年上だし問題ない、のか?
そもそも人間じゃないし。
ただ、酒乱とかはやめてくれよ?
「いざとなったら私がとめるから大丈夫でしょ」
……、まぁそうだと思いたいけど、今日の失態を考えると微妙なところだ。
ま、今度は身内しかいないし自分の本拠地だ。
多少何かあっても問題はあるまい。
そう考えて俺は一升瓶を念のため2本持って風呂へ向かった。
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