【閑話1 敷紙家のクリスマス(前編)】
メリークリスマスです。
思いのほか長くなったので3分割投稿です。
「もうすぐクリスマスか……」
雪がちらつく空を見上げて俺はそう呟いた。
庭を見ると魔法たちがもふーるの指揮でモミの木を植えている所だった。
高さ2mもない小ぶりなモミの木は、何もない広い庭の中央にポツンと立っている。
それが何とも言えない風情を醸し出していた。
恐らくこれから装飾していくのだろうが、逆に何も付けない方が良い気がする。
「グリ達にクリスマスプレゼントを用意しとかないとな」
クリスマスパーティーまで残り3週間を切っている。
流石にもう用意しないとまずい。
直前だと良い物は大体売り切れてしまってるしな。
魔法達はどうしようか。
いつも頑張ってくれてるし、一応何か用意するかな。
でも魔法達は何をプレゼントされれば喜ぶのかさっぱりわからない。
かと言って誰かに聞くのは違う気がするしなぁ。
「う~む……」
全員似たようなものと言うのは味気ない気がするが、如何せん数が多すぎる。
そこは妥協すべきか。
マフラーとか手袋、そういうのがいいかな。
……、手袋は無理か。
いや、ミトンタイプなら大丈夫?
う~ん……。
とりあえず町で物を見ながら考えるか。
サプライズしたいし、適当に理由を作ってばれない様にしなきゃな。
「ちょっと町に工具見てくるけど来るか?」
「工具はパスです~」
「また工具かいな、好きやなぁ」
「私もちょっと用事があるから無理ね」
「そっか、残念」
これで良し。
葵も朱子も学校だし、これでばれずに用意できそうだな。
倉庫から軽トラを出して町へと向かう。
別に用事は無いのだが工具屋にも寄る念の入れようだ。
念には念を入れてそこで2時間ほど商品を見ていたのも警戒のため。
決して我を忘れてしまったわけではないのである。
これだけ念を入れればきっとわからないだろう。
それではショッピングモールへ行こう。
「まぁこれでいいか」
魔法達へのプレゼントは全て1つ1500円のマフラーにすることにした。
値段的にも手ごろだし、数も揃うしね。
一応イメージカラーは合わせてそれぞれ個別包装をしてもらう。
30個近い紙袋はかなりのボリュームとなった。
仕方がないので一度軽トラに戻った。
「後はグリ達のプレゼントか……」
何がいいんだ。
そういえば、まともに何かプレゼントするのは初めてな気がする。
いかん、そう思うとちょっと緊張してきた。
「定番は花束とかなんだが、クリスマスのとなるとちょっと違う気がするしなぁ」
こういうののチョイスは失敗すると後々響くからなぁ。
それに予算は有限だ。
本気で考えないと……。
「服……、サイズが分からん。指輪……、同じくサイズが分からないし色々重いよな」
先に分かりやすいところから攻めるか。
まずはアルかな。
「食べ物は一番喜びそうだけどちょっと違うんだよなぁ」
ショッピングモール内を物色しながら一人練り歩く。
前はクリスマスムード一杯のショッピングモールが居心地悪かったが今はそうでもない。
これもグリ達のおかげか。
「あ、これいいな」
雑貨屋のウィンドウに飾られているくま柄のマグカップ。
これならアルも喜んでくれるだろう。
……、結構でかいし。
「どれどれ、値段は……うへ、結構するなぁ。クリスマス価格って奴かね」
ちょっと有名どころのブランドだし、そんなもんなのかな。
とりあえずアルのプレゼントはこれにしてっと。
「次はクロノだな」
クロノは割と子供じみたものが好きだし、人形がいいかな。
たしか前買い物行った時に怒涛のウナギ押しだったから、でかいウナギの人形にするか。
うん、そうしよう。
「それと葵と朱子にはネックレスがいいかな」
2人とも装飾品はあまり持ってなかったはずだし、そろそろネックレスを着けても良い年だろう。
朱子にはピンクゴールドを基調としてホワイトクリスタルが輝くネックレス。
葵にはシルバーを基調としてブルークリスタルが輝くネックレス。
これでいいな。
もちろん今流行のダンシングストーンネックレスだ。
これなら友達にも自慢できるんじゃないかな。
「グリは……、う~ん。ブレスレットが無難かなぁ」
いつも世話になっているグリのことを思うと、あまり無難過ぎるのもどうかと思うんだけど。
う~ん、あ、そういえば魔法を使えば大抵の事は割とどうにかなるんだよな……。
無駄遣いと言えば無駄遣いなんだけど、こういう時くらいいいだろ。
ただ、周りの目も気になるし、グリは特別だし……。
「うっし、これに決めた」
覚悟を口に出す。
これで腹も決まった。
ちとお値段は張るが、それくらい甲斐性というものだろう。
「すみませーん、このブレスレットのセットをもらえますか?」
「ありがとうございます。包装はいかがされますか?」
「そうですね、こっちはこの入れ物で、こっちはこれで」
「はい、承りました」
喜んでもらえるとうれしいんだけど。
そんな思いを抱えて俺は帰途につく。
「当日までばれない様にしないとな」
本当はクリスマスの朝に枕元に置きたいのだけれど、魔法は普段グリの中で休んでいるのでそれが出来ない。
そんなわけでクリスマスパーティーの際に渡すしかないのだ。
だが、これには問題がある。
俺が誰に何をプレゼントしたか一目瞭然となるのだ。
怖い……。
一応女の子たちのプレゼントのグレードは殆ど統一したし、一人一人よく考えてプレゼントを選んだけど、どういったリアクションが返ってくるか想像がつかない。
地雷を踏んでいなければいいのだが……。
クリスマスパーティー当日まで、幸いにして誰にもプレゼントが見つかることはなかった。
少しほっとする。
絶対倉庫と俺の部屋に近づかない様にと指示を出したのでバレバレだったかもしれないが……。
お読みいただきありがとうございました。
1時間後に中編投稿します。




