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【第15話 白い肌を汚す白濁】

「負傷者はいますか?」

「ん? ああ、幸いにして人死には出なかったがな」

「そうですか、治癒しますので案内お願いします」

「……、助かる」


 ギンは何か言いたそうな顔をしていたが、特に何も言わずに怪我人の元へ案内してくれた。

 骨が折れているらしき人たちが横にされて当て木をまかれている所だった。


「簡易の治癒は施しているので後は固定して自然治癒に任せるだけと言った状況だ。……、完治させるには魔力が足り無くてな」

「そうですか、それなら問題ありませんね」


 四肢欠損等は無いようなので少し安心だ。

 スプラッターな光景は見たくなかったからね。


「それでは治していきますよ」

「頼んだ」


 右手に治癒魔法、左手にも治癒魔法、二つ合わせて……なんて器用な真似は出来ない。

 と言うかそれをするなら素直につぎ込む魔力を増やせよ。


 そんなわけで魔力を操作して両手に治癒魔法もどきを普通に発動させる。

 医療知識が無いので自然治癒力を強化させての治癒だ。

 下手にいじくるとどうなるかわからないからね。


 まさに手当だな。

 そんなことを思いながら左右に並んだ怪我人に掌を向け、治癒していく。


 Lv5魔法を継続して使い続ける必要がある上、二重に発動させたのでごっそりと魔力を持っていかれる。

 とはいえまだ立ちくらみするほどでもない。

 全体の3割程度だろうか。

 Lv2魔法を魔導書経由で発動させただけで気絶した時と比べたら随分(ずいぶん)と魔力が増えたものだ。


「ふぅ、こんなものですかね。もう居ませんか?」


 10人ほど治癒を行い他に負傷者がいないか確認する。


「いや、これで全員だ。後はちょっとした擦り傷程度だからな」

「ふむ」


 せっかくだし魔力操作の訓練も兼ねて軽く治癒しておくか。

 範囲はこの部屋全体としてっと……。


「ふんっ!」


 よし、良い感じだ。

 少しさじ加減を間違えて魔力を入れすぎた気がしないでもないが許容の範囲内だろう。


「それではこれでいいですかね?」

「あ、ああ……。クロと言ったか、君は……」

「うわああああ!?」

「ですうううううう!?」


 ギンが何か問いかけようとした瞬間。

 部屋の隅の方から叫び声が聞こえた。

 また襲撃か!?

 慌てて声の上がった方を向いてみる。


「……、何をしてるんだ……」


 そこではうちのお嬢様達が魚と戯れていた……。

 とりあえずそこに向かうことにする。



「急に活造りの魚が暴れはじめたんや!」

「刺身が体に戻っちゃいました……」


 ……。

 少しどころではないレベルで魔力を入れすぎたらしい。

 というか、まだタッパーに料理を詰め込んでいたのか……。


「後は刺身だけやったんや……」

「先に詰め込んでおけばよかったです……」


 力なく俯くアルとクロノの頭に手を載せて軽く撫で、そして……。


「兄さん……いだだだだだぁ゛!?」

「クロさん……のあああああ!?」

「はっはっは! アルとクロノは可愛いなぁ!」

「あかんてっ!? 潰れるっ! 潰がなっ!?」

「あばばばっ!? 中身っ! 中身が出ちゃうですっ!?」


 お仕置き《アイアンクロー》である。

 まったく。


「あれ、グリは?」

「ああ……兄さん……時が見える……」

「中身が溢れるですぅ……」

「お~い、戻って来~い」


 アルとクロノは焦点が定まらない眼で俺の方を見てくるが、これは戻ってくるのに少し時間がかかりそうだな。

 しかし、こいつらを放置してグリがどこかに行くなんて珍しいな。

 俺の側にいるわけでもないのに。


「呼んだかしら?」


 と思ったら来た。

 どこに行ってたんだ? と聞こうとして固まる。


「……」

「うん? 何?」


 グリ……。

 グリの口元に手をやり、付いていた白い汚れを拭いとる。

 ぺろっ、これは生クリーム!


「ちょっと!?」


 恥ずかしそうに抗議するグリの頬に両手を持っていき、そして……。


「ひひゃいひひゃい……」

「お前もかああああああ!!」


 彼女の柔らかい頬を抓る。

 手触りがいい。

 っと、そうじゃない。


「このっこのっ!」

「ひゃっへひょうがなひひゃなひのっ」

「何がだっ!」

「ぱふぇはたっぱーにひへらへなひのひょっ」


 うう……。

 だからと言って……、グリだけは、グリだけは信じていたのに……。

 そう思いながらグリの頬から手を放す。


「あ……」

「うん?」

「何でもないわ……」


 なんでそこで残念そうにするんですかね……。


「んっんっ、それにクロならあの程度何でもなかったものの。あの羊の化け物くらいじゃ、今のクロには傷一つ付けられないわ」

「……、それを先に言ってくれ……」


 割と覚悟決めてたんですけどね……。


「……、ちょっと格好良くて止めるのが憚られたというか……」

「……、え? なんだって?」

「っ! なんでもないわよっ!」

「いやいや、よく聞こえなかったからもう一度言ってくれよ」


 うん、もう一度、ぜひ言ってほしい。


「……、聞こえてたでしょ?」

「なんのことかな?」

「なぁ兄さん、うちらと扱い違わな過ぎん……?」

「不平等ですぅ……」


 グリと話しているとアルとクロノからブーイングが入る。

 だってなぁ……。


「日ごろの行いの差?」

「うぐぅっ!」

「ですぅっ!」


 膝をつき頭を抱える二人を横目に俺はアカリとヒスイ、それにギンの元へ戻った。

お読みいただきありがとうございました。

この後閑話クリスマス編を1話投稿しますのでそちらも併せてお読みいただければ幸いです。

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