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【第13話 襲撃】

 そうこうしている間にも魔法陣には魔力が収束していき、その中心から化け物が現れた。


 牛の頭に人間の体をしたそれは、所謂(いわゆる)ミノタウロスと呼ばれる類の物か。

 全長は2mを軽く超え、その手には巨大なハンマーを持っている。

 ……、そのハンマーが少しだけ欲しいと思ったのは秘密だ。


「GALAAAAAAAA!」

「逃げろおおおおお!」

「きゃああああ!」


 会場に化け物の叫び声と人々の悲鳴が響き渡る。


「クロさん! 隠形使うのです!!」


 クロノが俺に指示を出す。

 そうか、とりあえず化け物から身を隠すんだな。

 相手の戦力が見えない以上、とりあえず自分たちの身を守らねばなるまい。


「五右衛門、頼んだ」

「お任せ下され!」


 俺の影から五右衛門の声が聞こえる。

 あ、そこにいたんだっけ。

 ……、いや、忘れてたわけじゃないけどね。ホントダヨ。


「その間にこそっと料理をタッパーに詰めるです!」


 そっちかよ……。

 まぁとりあえず使うけど。


 アルとクロノがタッパーを出している間に次々と魔法陣からはミノタウロスが出てくる。

 そして出てくると同時に手に持ったハンマーを振り回し会場にいる人たちへ攻撃に向かう。


 しかし会場にいる人たちは半数以上が魔法使いだ。

 そう簡単にやられたりはしまい。


 隠形で身を隠し、総勢10体程度になったミノタウロスの様子を伺う。

 確かにそのハンマーの威力は脅威だが、動きが鈍重だな。

 他の人たちも今のところ誰もやられていない様だ。


 少しほっとする。

 飯に気を取られてる間に仲間がやられたとか笑えないし。


 そうこうしている内に今度は魔法使い達の反撃が始まる。

 テーブルや椅子が空を舞いミノタウロス達に直撃した。


「喰らえっ!!」

「GRUAAAAAAA!」


 たたらを踏んだミノタウロスが絶叫を発する。

 よく見ると足元に岩でできた(とげ)が出来ていた。

 なるほど、使い方が上手いな。

 あの使い方なら最小限の魔力で済むだろう。

 勉強になるなぁ。

 そんなことを思いながら俺はドリンクに手を伸ばす。


「ん……?」


 また何か来るような気配がする。


 そう思ったのと殆ど(ほとんど)同時に魔法陣に再び魔力が収束され、化け物が3体吐き出される。

 羊の頭に背中には黒い羽根、体だけ人間の素敵スタイルの彼は、一般にバフォメット等と呼ばれる悪魔と同じ姿をしていた。


「BUMOOOOOOO!」

「ひるむな! 放ち続けるんだ!!」


 指示を出している声の主を見るとそれはギンだった。

 人望があるのは事実の様だ。

 彼の周りに火力の高い魔法使いが集まってテーブルを倒して簡易の陣地を作り、その上から波状攻撃を仕掛けている。

 そのおかげかバフォメットはその場に釘付けになっていた。

 ミノタウロスはバフォメットの陰に隠れているようだ。


「あの……」


 グレープフルーツジュースの酸味に目を細めているとアカリが話しかけてきた。


「何と言うか、ずいぶんと、その……」


 アカリの目線を追うとそこには山積みになったタッパーが!

 どんだけ詰め込んでんだよ!?


「あ、あの、いえ、いつもちゃんと食べさせてますから!」

「は、はぁ……」


 これじゃ俺がご飯ちゃんと食べさせてないみたいじゃないか。


「アル! クロノ! それくらいにしておけ!」

「え? でもまだ半分くらいあるで?」

「もったいないです……」

「きゃあああああ!?」


 渋るアルとクロノを説得していると後ろからさらに悲鳴が聞こえた。


 振り向くとバフォメットが倒れたミノタウロスを持ち上げ、盾にして陣地に突っ込むところだった。

 さらにその後ろには傷だらけなものの、まだ動けるミノタウロス達が続く。


「バインドを放て! その後すぐに後ろへ退避!!」


 ギンの怒鳴り声が響く。

 いつの間にか第二防衛ラインを作っていたようだ。

 うまく削り倒せればいいのだが。

 そう思ってバフォメットを視るが、有効ダメージはほとんど入っていない。

 このままではジリ貧じゃないか。


「行かないので?」


 そうヒスイが聞いてくるが、ここで俺がでしゃばると注目を浴びることは避けられない。

 魔導書の所有者ということもできれば隠しておきたいし。


「う~ん……」

「私は、逝って参ります」


 その目には覚悟の光があった。

 ジリ貧で状況を打開する算段もたっていなくても、それでも仲間を見捨てられないのだろう。


「それなら僕も逝くかな」


 アカリが同調する。

 ふむ……。


「盟友だけを死地に赴かせるわけにはいかない、か」

「無理をしなくてもいいのですよ?」

「そうだね。君はまだ仲間になったばかりで義理もないんだし」

「杯を交わした相手を見殺しにするのは寝覚めが悪いのでね。それでも心苦しいというのでしたら後で彼女達にたらふく御馳走してあげてください」

「はは、やはり君は面白い」

「クロ殿は欲が無いのですな。喜んで御馳走させていただきましょう」


 ……。

 騙している気がして少し心苦しい。

 彼女達は無限の胃袋を持っているのでいくら食べても満足しないんですよ……。

 そんな思いを仮面の下にかくし、俺は一歩前に出る。


「皆、生きて帰りましょう」


 じゃないと飯のスポンサーがいなくなるしね。


「ええ。それでは、参りましょうか」

「御武運を」


 アカリとヒスイが俺に続く。

 さて、それじゃパーティーを始めようか。

お読みいただきありがとうございました。

またのご来訪お待ちしております。

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