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【第10話 魔導書の所有者】

 会場に到着した俺達の目に入ったのは奇抜なファッションに身を包んだ集団であった。


「普通の格好だと、その服の販売地域とかで身元が割れてしまうかもしれないからね」

「それにしてもこれは……」


 仮面舞踏会。

 その言葉がふさわしい光景が眼前に広がっている。

 100人以上は居るだろう、カラフルで前衛的な恰好をした男女の集団。

 ううむ……、これなら俺の格好もそこまで目立たないかな……。


 俺はグリ達のコーディネートの名の元におもちゃにされた。

 その結果、少しばかし痛々しい恰好になったと思っていたのだ。

 しかしこの場ではむしろ地味な分類に入るだろう。


 白色のタクシードに宝石がちりばめられた銀色のマスク。

 髪の毛にはエクステで白のワンポイントを入れている。

 それらは全てグリの謹製である。


「似合っているじゃないか」

「それはどうも……」


 アカリがそう褒めてくるが、あまりうれしくない……。


「そしてそちらのレディーたちも」


 そう言ってアカリが俺の横に視線を向ける。

 そこには普段の格好ではなく、ドレスを着こんだグリ達がいた。


「別にあなたに言われても嬉しくないわ」

「せやなぁ」

「わた……、クロさん! どうです? 似合ってます?」

「……」


 アカリ、あまり気にするな、こいつらはいつもこんな感じだ。


「おぉ、3人ともすごいな。うん、見違えたよ。本当に綺麗だ」


 強いて言うならベネチアンマスクが無ければとも思うが、これはこれでいいのかもしれない。


「……、ありがと」

「ふへへ……」

「うぇへへ……」


 照れるグリ達。

 しかしアル、クロノ、女の子がそんな笑い方はしちゃいけません。

 色々と台無しだ。


「おや? ここは小学校の学芸会ではないのですがね?」


 そこに厭味(いやみ)ったらしい声がかかる。


「……、あなたは?」

「これは失礼、私は銀狼(ぎんろう)の盟主を務めさせていただいております。ギンと御呼びください」

「そうか、俺は黒山羊の盟主、クロとでも呼んでくれ」

「はは、気が向いたら覚えておいてあげましょう」


 ギンはジロジロと不躾に俺の全身をなめまわすかの如く視線を動かす。

 気持ち悪い……。


「……、何か?」

「いえいえ、君は魔法書持ち、でいいのかな?」

「うん? 一応そうかな」


 作ろうと思えばいつでも作れるし持っていると言ってもいいだろう。

 ああ、後五右衛門も居たな。

 しかしこいつは何が言いたいんだ。


「なるほどなるほど、七芒星の戒めへようこそ。それで魔法は使えるのかな?」

「あたりまえだろ?」

「はっはっは、当たり前か、そうかそうか。うんうん、歓迎しよう、戦友」


 下品な声で歓迎されても全くうれしくない。

 周りを見下す、典型的な嫌な奴だこいつ。


「おぅ……」

「ところで君の魔法はどんな魔法だい? 誇り高き死霊系? それとも後ろでこそこそ動き回るしか能のない治癒系? お頭(おつむ)の足りない放出系? おいおい、まさか補助系魔法しか使えないなんて言うんじゃないだろうな?」

「……、何を言いたいのかわからないが、とりあえず全部使えるぞ」

「は……?」

「それから俺は魔法書持ちと言うより魔導書持ちだ。勘違いしてくれるな」

「なっ!?」

「グリ、アル、クロノ、行くぞ」

「ええ」

「兄さん、あっちに料理あるみたいやで!」

「いくです!」


「そんな……、ありえない……」


 ぶつぶつと呟きながら呆然としているギンをその場に残し、俺達は料理の元へ向かった。



「っくっく……」

「何がおかしい?」


 ギンの所為で少し不機嫌になった俺はアカリに矛を向ける。


「いやいや、怒らないでくれたまえよ。ただ、あのギンが……くくっ……」

「知っているのか?」

「ああ、嫌味な奴だったからね。おかげで胸がすく思いだよ」

「そうかい、それはよかったな」


 俺は胸糞が悪いがな。


「はぁ……、昔はそうでもなかったんだけどね……」


 ギン、彼が変わったのは魂の共鳴というLv4魔法を手に入れてかららしい。


「まぁ、それでも悪いことに使用しているわけじゃないし。それに一部の人間からは人望があるみたいなんだ」


 それで注意もできないと。

 ほんっと性質悪いなぁ。


「しかし魔導書持ちか……」

「そんなに珍しいのか?」

「そうだね……。少なくとも前回の会合に来ている者には一人もいなかったな」


 そういえば、以前グリも力ある魔導書はあまり数が無いようなことを言っていた気がする。

 覚醒していない魔導書を含めればそれなりにあるのかもしれないが。


「ふむ……」

「それに魔導書を持てるだけの魔力を持っている人なんてそうそう居ないからね」

「そういうものか」

「それに君は3冊も持っているんだろ? ちょっと考えられないね」

「まるで俺が人外みたいな言い方だな」

「まるでじゃなくて、そのものさ」


 そういうとアカリは肩をすくめてどこかへ行ってしまった。

お読みいただきありがとうございました。

日刊で投稿し始めて2か月となりました。

皆様の感想、評価、ブックマークのおかげで何とかここまで走ることが出来ました。

ありがとうございました。


お詫び

諸事情により、更新頻度がかなり低下します。

お待ちしていただいてるのに申し訳ないのですが、土曜日と水曜日に投稿をする予定です。

それとこれに合わして投稿時間の変更を行います。

通勤通学時に読めるようにと毎朝5時に投稿しておりましたが、日刊でなくなるので22時に変更します。

よろしくお願いします。

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