【第6話 買い物+映画+食事+カラオケ=???】
「いかがでしょうか……?」
「うん、似合ってるよ」
制服だから誰にでも似合うとは思うのだけれど、葵には特に似合っているように思えた。
これから葵がその服に身を包み青春を謳歌するのだと思うと、自分の事ではないのに少しノスタルジックな気分になる。
いかんな、年を感じてしまう。
「よかった……」
「おぅ、それじゃ次は映画だな」
「ええ、よろしくお願いいたします」
そう言うと葵は俺の腕に手を絡める。
「ん?」
「……、迷惑、かしら……?」
いえ、むしろご褒美です。
違った。
「いや、葵が嫌じゃないなら」
「そんなこと、あるわけないじゃありませんか……」
そっぽを向いた葵の表情はわからないが、真っ赤になっている耳が感情を伝えてくれる。
可愛いものだ。
まぁ、父親代わりなのだろうが。
そう俺は苦笑すると次の店へと向かった。
「これ?」
「はい……」
映画館についてどの映画を見るか葵と選んでいたわけだが。
葵が指さしたのは、こってこての恋愛映画だった。
俺、この手の映画見たことないんだけど……。
「だめ、ですか?」
「……、そんなことないよ。俺のお姫様?」
「っ!!」
ちょっと反撃をしてみると、一瞬で葵の顔が沸騰した。
「t9くgふぁj:あlっ」
「どうどう、落ち着け」
「だ、旦那様が変なことを言うからっ!!」
「変なことって?」
「~~っ!!」
「あはは、それじゃ行こうか」
「っ……!」
葵の手を取るとチケットを買いにカウンターへ向かう。
ポップコーンとコーラを買って席に着くまで、葵はずっと無言で俯いていた。
そして俺の手を放してもくれなかった。
……、映画が終わるまで……。
「仕返し、ですの……!」
可愛い仕返しもあったものだ。
そう思いながら俺達はレストランへ向かった。
「あの時のセリフはよかったですわ」
「ああ、シンディーがココナッツに埋まった時はどうなるかと思ったけどな」
食事をしながら会話に花を咲かせる。
映画という共通の話題もあるからか、今度は会話が盛り上がってくれた。
しかし、アルの存在の大きさを思い知ったな。
今まで沈黙とは無縁だったのはあいつのおかげだったのかもしれない。
まぁ、そこまで考えてやっているわけじゃないだろうが、お土産の一つでも買って行ってやるか。
「むぅ……」
「うん? どうした?」
「いいえ、なんでもありませんわ」
「そうか?」
急に不機嫌になった葵を訝しむものの、本人は何でもないという。
変な奴だな。
まぁグリにも同じようなことが時々あるし、女の子特有の何かなのかな。
そう考えて俺は納得することにした。
「痛っ!?」
「あ、すみません、ちょっと足が当たってしまったみたいですの」
当たったって……、思いっきり踏まれた気がしたんですが……。
「さ、行きましょう。携帯電話、買ってくださるんですよね?」
「あ、ああ……」
俺は会計を済ませ、葵に腕を引かれながら携帯ショップへ移動する。
「私、こういったものには疎くて……」
「んじゃ俺と同じ奴にしとくか?」
「っ! そ、そうしようかしら?」
その方が分からないことがあっても教えやすいしな。
「お揃い……」
「ん? 何か言ったか?」
「い、いえ、何でもありませんわ!」
「お、おぅ?」
「ではそれでお願いします!」
「へいへい」
店員さんを呼び、携帯電話を購入する。
契約を済ませて操作説明をしてもらい、最後におまけを色々貰って店を出る。
「それじゃ、とりあえず連絡先の交換をしとこうか」
「え?」
「うん?」
「その、そ、それは今でないと駄目なのでしょうか……?」
「まぁ、はぐれたとしてもすぐ連絡取れるし」
「うぅ……」
なぜか渋る葵、なんでだ……。
「で、では、メールアドレスは見ないと約束してくださるのでしたら……」
「なんだそれ」
「でないと嫌ですっ!」
「よくわからんが、わかったよ。メールアドレスは見ない。これでいいか?」
「はい……」
連絡先を交換し携帯をしまう。
「あの……、メールアドレス、見ました?」
「いや、見てないよ? 約束だしな」
「そ、そうですか……」
なぜか露骨に落胆された。
いや、見るなっていったの君だよね?
解せぬ……。
「次はカラオケ、でしたわね?」
「そうだな、1時間くらいで軽く歌って行こう」
「カラオケ……、私、初めて行きますわ」
「え? マジで?」
「ええ、カラオケも市野谷が行ってはいけませんと……」
「ああ、うん……」
「でも、合唱等はしたことありますから!」
「まぁ、歌いながら好きな歌を探すのもいいさ」
「はいっ」
店員にじろじろ見られたものの、ここ最近のあれこれで鍛えられた俺のハートはびくともしない。
……、葵はそうでもないみたいだが。
「何やらすごい目で見られましたわ……」
そりゃな、ずっと手を繋いでるし、端から見たら援助交際に見えなくもない。
……そうとしか見えない気がしてきた。
中学生くらいの少女をカラオケルームに連れ込む中年。
どう考えても事案です。
ありがとうございました。
「ドキドキしますの」
そう言って目を輝かせて指定された部屋に向かう彼女のことを考えると、やっぱりやめようとは言えるはずもなく。
俺は監視カメラの存在に怯える1時間を過ごす羽目になった。
尤も葵は控えめに言って歌が非常に上手く、俺は聞き入ってしまいあまりストレスなく過ごせたのだが。
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