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その胸、魔法では膨らみません ~100LDK幼女憑き~  作者: すぴか
【第1章】もらいものにはロリきたる
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【第7話 くらげにんげん】

2016年10月15日改稿しました。

 ヒュゴー……

 日が暮れてから天気が崩れ、風が強まってきた。

 天気予報では今日の晩から明日の朝にかけて台風が通過すると言っている。

 俺は屋敷の雨戸を閉めて回り台風に備えた。


「これで大丈夫かな」

「ちょっとやな感じ……」

「ん?台風が怖いのか?」

「今まで一人だったしね、何かあってもどうしようもなかったから怖かったかな」

「そっか」

「でも今は渡がいるから大丈夫だよ?」


 グリは俺を上目づかいで見つめてきた。

 あざとい、さすがまどうしょ、あざとい。


「あ~、そうか、でもあんまり信頼されても困るんだけどな?」

「ん~ん、渡は信頼できるよ」

 

 こうも無条件で信頼されては答えない訳にはいかないだろう。

 俺はそう思いながらグリの頭をなでるのだった。



「渡の背中は広いねー」

「大人だからなー」

 俺はグリに背中を流してもらっていた。


――話は30分前に遡る


「一人だと怖い……」


 風呂に一緒に入るのは流石にどうかと思ったが怖がっている子供をそのまま放置するのは良心が咎めた。

 俺より年上なのはわかってるんだが、どうにも見た目が、ね。



 そして現在。


 いかんな、今日は台風来てるから仕方ないにしても、このままずるずる行かないように気をつけねば。


「渡~、何か面白い事やってよ」


 何無茶ぶりしてくるんですかね、この御嬢さんは。

 とはいえリクエストには答えたい。

 とりあえず定番いっとくか?


「んー? んじゃタオル使ってー、くらげ」


 少しめんどくさく思いながら適当に空気をタオルで包み湯船に沈めてみた。

 ちょっと行儀が悪いが、どうせ二人しかいないしね。


「わ! すごい!! わー! わー!」


 思いのほか好評だった!


「すごいすごい! どうやってやるの!」

「あ、ああ、こうやってタオルを水面に浮かべて、指で四角を作って持ち上げるんだ」

「こう?」

「そうそう、そうやって持ち上げたら今度は空気を包み込むように水面におろして」

「うんうん」

「そしてさっとタオルの下を絞るように持つんだ」

「できた!!」

「そしてそれを水の下に沈めて握りつぶすとー」


 ジュボボボボッ!

 勢いよく泡が水面に踊った。


「おおおおお!」


 ここまで反応がいいとこっちも楽しくなってくるな。


「くらげー! からのっ! 泡っ!」


 この時間がいつまでも続けばいいのに。

 そんな風にふと思った。



 風呂をあがって一息ついた後、ホームシアターセットで映画を観賞することにした。


「さて、霧の魔法を捕まえたからな、さっそく使ってみよう」

「パチパチパチパチー!」

「よっし、それじゃグリ、霧の魔法でスクリーンを作るんだ」

「いくわよ、ん、霧……!」


 俺は昨夜と同じく何かが抜けていく感覚を覚え、そしてそのまま気絶した。



「…………し……」

「……たる……して」

「お願い……る……ねぇ……」

「起きてよ、渡……」


 ん……、なんだ……。

 頬になにか温かいものが……。


「あれ……?」

「渡! 目が覚めたのね!? よかった……」

「お、俺は……?」

「!! ……その、魔力が、切れたみたいで……」

「そうだったのか……」


 俺は魔力切れで気絶してグリに膝枕をしてもらっていたらしい。

 この暖かいものは太ももだったのか。

 柔らかくは、無い。


「グリ、泣いているのか……?」

「!!」


 グリは慌てて手で目をこすった。


「泣いてなんかいないもん! ちょっと怖かっただけだもん!!」

「グリ……、ごめんな」

「なにがよ!」

「いや、なんでもない」


 俺は強がるグリに微笑んだ。


 ……ん? まてよ?


「なぁ、グリ?」

「なによ?」

「昼間、魔法を連発しない限り枯渇することはないって言ってなかったっけ?」

「っ……えっと……その……」

「スクリーンとか細かい制御だと魔力の消費量が増えるのかな?」

「ううん……」

「それじゃ、熟練度が足りなくて魔力消費量が増えたとか?」

「違うの……」

「じゃあ何が原因なんだ?」


 グリが嘘を言っているとは考えずらいし、何か原因があるなら解決しておかないと。

 これからの魔法使い生活に差し支える。

 戦闘の最中に魔力切れで気絶とか洒落にならないし。


「……えっとね……」

「うん?」

「怒らないでね?」

「何のことかわからないけどわかった、怒らないよ」

「えっとね……、渡ね、魔力がその、少ないみたい……」

「……」

「だから、その、レベル2の魔法でも魔力が尽きちゃったみたいで……」

「そ、それは……、俺の、人生経験が足りないってこと……?」

「そう……かも……?」


 がっでむっ!!

 社内ニートで過ごした時間を初めて後悔した俺であった。


 その後グリに慰められながら魔力は鍛錬で増やすことができると教えてもらい、鍛錬を行うことにした。


 ……明日から。

 ビバ! 社内ニート精神!

 人間そんな簡単には変われないのである。



 明日から頑張ろう。

 そう思いながら薄暗い廊下を通り寝室へ向かう。

 グリの部屋は俺の部屋の正面なのでそこで別れてそれぞれ自分の部屋に入る。

 そして自分の布団へ潜り込むとすぐに意識を落とした。

 一度魔力を使い切ったせいか疲れていたらしい。

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