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その胸、魔法では膨らみません ~100LDK幼女憑き~  作者: すぴか
【第5章】おれひとりにロリさんにん
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【閑話1 隠した想い】

短めです。

「どうすればええんやろなぁ」


 うちは屋敷の裏手で一人そう呟く。

 グリは家のあれこれをやっているし、クロノはマスコット的なポジションに収まっている。

 その点うちはただ居るだけ……?


「かといってうちに出来ることなんてないし……」


 グリに家事を手伝うと言ったこともあったのだが、やんわりと、しかし明確に拒絶されてしまっている。


「うちだって兄さんの役に立ちたいんやけどな……」


 クロノを真似してみたけれど、ただの食いしん坊にしか見えていない気がする。

 場を盛り上げようと、うちなりに考えてみたんやけどな……。

 分かっていたことではあるけれど、うちでは頭脳で勝負することは無理や。

 細かい気配りが出来るわけでもなし。

 あとは敷紙家の過去を知っているくらいやけれども、それだって吐き出してしまえば終わりや。

 兄さんがそれでうちを捨てるとは思わんけど、何も役に立たないままただいるというのは心苦しい。


「未来視は兄さん嫌がっとったしなぁ……」


 うちに収められている魔法で最も強力かつ他に例のない類の魔法、未来視。

 兄さんは、一度未来視の魔法を使ったことがあった。

 その際何を見たのかはわからないが、その後青ざめてもう二度と使わないと宣言されてしまっていた。


「そうなると錬成、解呪、障壁の微妙な魔法3つかぁ……」


 時代が時代なら錬成で金を錬成し、小遣い稼ぎくらいは出来ただろうが今の時代では法的に問題があるらしい。

 それに兄さんの大魔力でも1日に錬成できる金の量はせいぜい10g程度。

 小銭ではないものの、大金という程ではない。


「そうなると解呪と障壁かなぁ……」


 どちらも使い勝手のいい魔法ではない。

 なにせ敵がいないと使い道がないのだ。

 ここぞというところでは使えるが、そうでなければ意味がない。


 グリみたいに生活に密接した魔法が使えればうちも兄さんに褒めてもらったり頭なでたりしてもらえるかもしれない。

 そんな妄想をするが、それは意味のないことだ。


「いざというときの為に練習するくらいしかないかな……」


 魔導書が今更魔法の練習なんてと思わないでもないが、慣れておけばいざというときに魔法の出が多少早くなる。

 それに魔法の練習なら兄さんと一緒に出来るかもしれない。


「少しでも、二人だけの時間が欲しいしなー。……え?」


 不意に口から飛び出した言葉にうちは自分の耳を疑った。

 二人だけの時間が欲しい……?

 今まで、そんなことを思った相手はいなかった。

 まさか、これは……。


「くすぐったい!!」


 その時遠くから兄さんの声がきこえてきた。

 心臓が高鳴る。

 自然と足がそちらに向く。


 屋敷の庭に駆けて行くとそこには動物、いや魔法に全身を覆われた兄さんの姿があった。


「兄さん!」


 そう呼びかけようとして、……声が出ない、足が止まる。


 どんな顔で会えば、そしてなにを話せばええんや……。

 今までそんなこと考えなくても出来たのに。

 それが、出来ない。


 固まったまま見つめていると、もふーるが何か指示を出したようで魔法たちはどこかに行ってしまった。

 今がチャンスか。

 ……なんのや?


 いや、分かってはいるのだが、どうしてか現実逃避してしまう。

 うち、こんなへたれやったかな……。


 今は声をかけるのはやめとこう。

 きっと顔が真っ赤やわ。

 顔を洗って来よう。

 冷たい水で顔を洗えば、きっと元通り。

 今まで通りの態度で兄さんに接することが出来るはずや。


 そう考えるとうちは(きびす)を返した。

お読みいただきありがとうございました。


時系列は第四章2話のあたりです。


あと、葵の参戦に伴いタイトル変えたのですが合ってますかね?

100LDK幼女憑きだとタイトル詐欺になるなと思って変えたのですが。

ダメっぽかったら戻しますです。はい。

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