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その胸、魔法では膨らみません ~100LDK幼女憑き~  作者: すぴか
【第5章】おれひとりにロリさんにん
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【第22話 スーパーお仕置きタイム】

 さて、待望のスーパーお仕置きタイムだ。


 ……ただし俺の。


 どうしてこうなった……。



 意気揚々と破壊した扉を潜り抜け、グリ達の元へ戻った俺を出迎えたのは労いの言葉でもなく、優しい眼差しでもなく、軽蔑の視線だった。

 流石に中学生くらいの少女を素っ裸で、それもお姫様抱っこで連れ出すのはいろいろとアウトだったようだ。

 だって仕方ないじゃないか、後から考えればわかるんだが俺もその時かなりテンパっていたんだよ……。


 そもそも大人しく抱かれていた葵にも問題があるんじゃないだろうか?

 いや、うん、ごめん、俺が悪いわ……。

 だから市野谷さん、その目はやめてください……。


「お嬢様の恩人ですから、あまり言いたくはないのですが……。端的に言って最低ですな」


 お前が言うなと言いたいが、たぶん言ったら顰蹙(ひんしゅく)ものだろうなぁ……。

 なお、今はグリがどこからか出してきた品のいいワンピースに彼女は身を包んでいる。

 グリがいてよかった。


「それで、これからどうするの?」


 グリは俺から視線を外すと葵と市野谷さんに質問した。


「それは……」

「これから、考えますよ。何、老人一人と子供一人、どうにでもなります」


 口ごもる葵と苦笑いしながら答える市野谷さん。

 そうは言ってもかなり厳しい生活になることは想像に難くない。

 聞いてはいないがこの屋敷を維持するのに借金もあったのではないだろうか。


「あーなんだ、もしよかったらなんだが、うちに来るか?」

「これ以上借りを重ねろと?」

「背に腹は代えられんでしょう」

「しかしですな……」


 遠慮する市野谷さん。

 でも、本当にどうしようもないだろう。

 部屋を借りるにしたって金はいる。

 ご飯を食べるのだって、お風呂に入るのだってお金はいるのだ。


「市野谷、もういいわ、お世話になりましょう?」

「よいのですか……?」

「元とは言え、来栖家と敷紙家は盟友の間柄です。その当主の元へ身を寄せるのは不自然ではないでしょう」

「それは、そうですが……」

「そういうわけです。敷紙さん、いえ、旦那様と御呼びした方がよろしいかしら? 不束者ですがどうぞよろしくお願いしますね?」

「あ、ああ……」


 旦那様……。

 なんかいい響きだ……。

 いやまて、不束者ですがって何か意味が違ってないか?


「さて、それではまいりましょう。案内していただけるかしら?」

「お、おぅ? いや、荷物とかはいいのか?」

「あら、この屋敷の惨状を見てそれをおっしゃるの?」


 確かにこの惨状では……。

 屋敷の方を見やるとそこには扉に穴が開き、石畳は砕け散り、屋根や壁が風化した廃墟があった。


「そういうわけですから、私にはもう何もありません。身一つで押しかける不作法、お許しください」

「い、いや、気にするな……」

「そうとなれば転居の手続き等が必要ですな。あとは近くに中学校があればよいのですが」


 中学校か……、車で30分くらいのところにあったかな?


「それでは私は役所に行ってまいりますのでこれにて失礼させていただきます。その後は直接お屋敷の方へ出向かせていただきますがよろしいですかな?」

「ああ……、そうしてくれ……」


 俺は頭を押さえながらそう返すのが精いっぱいだった。


「まぁ、渡した魔力も返してもらわなきゃいけないし。ちょうどいいわね」


 ……、グリさんや、何も言わないと思ったらそんなこと考えていたんですか……。


「借りたものは返す、当然よね?」

「は、はい……」


 ……、これ、なんだろう、嫁姑戦争の開始を見ている気がする……。

 そんなはずは、ないよね?



 これで漸く(ようやく)一段落か。

 爺さんに事の顛末(てんまつ)を説明しなきゃな。



 グリ達に喫茶店で待つように言ってから俺は携帯電話で爺さんに連絡を取る。


「ってなわけで、うちで保護することになった」

「うむ、妥当な線じゃろうな」

「しかし、葵はうちの所為で来栖家が没落したって言ってたけど……」

「ふむ? 葵の嬢ちゃんがか?」

「なんだ、爺さん、葵のこと知ってるのか?」

「そりゃの、来栖家と付き合いが浅くなったのは息子の代からじゃからな」


 葵の話だと手を切ったのはうちの曾爺さんが無くなる10年くらい前って言ってたから、爺さんが現役の時は交流があったということか。


「しかし、竜也(たつや)の奴め。ちゃんと説明をしなんだか」

「どういうことだ?」

「うん? 敷紙家と来栖家が手を切ったのはな、突然と言うわけじゃなかったのじゃよ」


 そういって爺さんは語りだした。


 爺さんと来栖家2代前の当主である来栖 竜也(くるすたつや)は同じ当主同士で仲が良く、まさに盟友と言う間柄だったそうだ。

 そして、その盟友に爺さんは将来の子供たちのことを考えてオカルトの世界から手を切りたいと打ち明けた。

 当初渋られたものの、爺さんの熱意に押されて彼も渋々ではあるが納得したと。


 もっとも、オカルトの世界に足を踏み入れていたのは敷紙家だけで、来栖家はあくまで表向きの事しかしていなかったらしい。

 自分たちは安全圏に居て敷紙家だけに危険を冒させていたことを当主は知っていたため、その負い目もあったかもしれないと爺さんは語った。


「だからじゃろうな、竜也は自分の息子たちに事の顛末を説明しなかったのじゃろう」

「それで理由を知らない葵の両親は無理に足掻いて、体調を崩してしまったわけか……」

「あやつ、自分の恥を子供らに言えなかったんじゃろうなぁ……。もう少し骨があるかと思っておったが……」


 子供の前ではかっこいいお父さんでいたかったのだろう。

 その気持ちはわからないでもないが、結果として子供たちを不幸にしてどうする。


「もしかしたら言うつもりじゃったのかもしれんがな。儂たちと(たもと)を分かってから1年後位かの? それくらいで交通事故にあってしもうてな」


 もし、その事故が無ければ結果は変わっていたかもしれない。

 爺さんはそう言っていた。


「ああ、そうだ、白山羊の背後の人間捕まえたけど、要る?」

「ほぅ? それはすごいの、ならば儂のところで有効に利用してやろう」

「何かわかったら教えてくれ」

「任しておきなさい。たっぷり搾り取ってやろう」


 機嫌よく笑う爺さんに後で引き渡すと告げて俺は電話を切った。


 さて、一度爺さんのところに寄ったら後は屋敷に帰るだけだ。

 やっと、高等遊民生活に戻れる。

 俺は今にも雨が降り出しそうな分厚い雲に覆われた空を見上げ背伸びをした。


第五章 完

お読みいただきありがとうございました。

とりあえずここで第5章終了となります。

この後閑話と設定を投稿予定です~。

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