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その胸、魔法では膨らみません ~100LDK幼女憑き~  作者: すぴか
【第5章】おれひとりにロリさんにん
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【第21話 契約の鎖】

「そんな……、間に、合わなかったのか……」


 ドレスを掻き抱き(かきいだき)俯いた。

 指の隙間から零れ落ちて行ったのは、もしかしたら零さずに済むことが出来た命だった。

 あの時、俺が手を離さなければそう思わずにはいられない。


 時間が癒してくれるだとか彼女自身の力で切り開く必要があるのだとか言い訳をして、俺は手を放してしまった。

 今までは運よく取り戻せていたが、とうとう取り返しがつかない過ちを犯した。


 自分の愚かさに、自分勝手さに虫唾が走る。

 噛みしめた唇からは血が滲んだ(にじんだ)


「あのー、お楽しみ中のところ悪いんだけど」

「へ?」


 後ろから掛かった声に俺は間抜けな声を上げる。

 振り向くとそこにはペンダントだけを身に付け、口をひきつらせて笑う葵の姿があった。


「なん……で……?」

「なんではこっちのセリフよ、変態さん?」

「変態って……」

「脱ぎたての私の服を抱きしめて興奮する。これで変態じゃないっていう方がどうかしてるわ」

「そうか、そうだな……っ」

「まったく、何を……!?」


 俺は葵に近づき思いっきり抱きしめた。


「な!? 何を!? 痛い! 痛いってば!! 離しなさい! この変態!!」


 葵は全力で抵抗してくる。

 当たり前か、裸のところを大して知らないおっさんに抱きしめられれば誰でもそうなるだろう。


「馬鹿野郎っ……!!」

「な、何泣いてるのよ……」

「泣いてなんか、ない……」


 抵抗が少し弱まった。

 俺の様子を見て狼狽しているようだ。


「無事で、よかった……」

「……、あなたにそこまで想われる謂れ(いわれ)はないと思うのだけど……?」

「この魔法の意味、分かっているのか?」

「それは……」


 抵抗が完全になくなり、葵は全身から力を抜く。


「覚悟は、しているわ……」

「……っ! 周囲を、巻き込んでもか……」


 俺は唸るように呟く。


「周囲って、何を言っているのよ……」

「……、この魔法で何が起こるか、知っていることを教えろ……」

「はぁ……、私の存在を魔力に変換して転送する。それだけよ。流石に下着を残して消滅っていうのも格好悪いから、全部脱いでたんだけどね」

「……」

「それでなに? 最後の最後で私を慰み者にしに来たのかしら? 別にいいわよ? どうせこのあと私は消えるんだし。ああそうそう、処女だから血が出るけど気にしないで。それと月の物はまだ来てないから妊娠もしないわ。責任取る必要ないわよ、よかったわね?」


 そう彼女はまくしたてる。


「声、震えてるぞ……」

「っ……! うるさいわね……」


 死を前にした、精一杯の強がりのようだ。

 俺の腕の中で彼女は震えを抑え、必死に虚勢を張っていた。

 そんな彼女に、俺は真実を伝える。


「この魔法はな、そんなんじゃない。既定の魔力を満たすまで無限に範囲を広げ、その範囲内にあるすべての物を魔力に変換する類の物だ」

「……は?」

「葵、君は騙されていたんだよ。その既定の魔力が君の命だけで満たされるなら確かにその通りだったろうさ。だが、君の全てを代償にしても、その規定値の1割にも届かない」

「それって……」

「市野谷と言ったか? あの執事はもちろん、この建物と周辺の住民も巻き込んで消滅だ」

「そんな……、ありえないわ……」

「どうしてそういえる? いや、そもそも君はこの魔法の事をどこで知った?」

「それは……。言え、ない……」

「言えない?」

「契約で、縛られて……」


 そう言って目を瞑った(つぶった)彼女をよく()ると、確かに鎖の様な物が全身にまとわりついていた。

 取り除いてやりたいが、今すぐには無理だ。

 勘でしかないが、無理やり取り除こうとすると彼女の命を刈り取る、これはそういう類の物だ。


「他の契約内容はあるか?」

「……、私を生贄に捧げた分の魔力をこの魔法を経由して渡すことになっているわ……。そして契約期間は魔力譲渡が終わるまで。だから、私はもう助からないのよ……。でも……市野谷やお父様とお母様が残してくれたこの屋敷、それに周りの人まで巻き込むなんて、私聞いてない!!」


 そう言って葵は俺の背中を叩く。

 ふむ、葵を生贄に捧げた分の魔力ね。

 つまりそれだけの魔力をくれてやればこの魔法を止めても問題ないと。


「魔導書から魔力がもらえるから大丈夫だって……、でもそれは嘘で……、騙された私だけならまだしも……市野谷や、周りの人まで……、私は、私は一体何のために……うっくっぅ……」

「葵……」

「私、私、まだ、死にた゛く……ない……、騙ざれだままで……何もじないままで……消えるのは……いや……う゛ぅ゛……」

「魔法の起点は、このペンダントか?」

「すんっ……、ペンダントは、最後まで魔法を発動させ続けるために、ぐすっ、渡されたものよ……。起点となるのは、そこの杖ね……」


 なるほどね、それで彼女はまだ動けていたのか。

 彼女の魔力量でこれほどの吸収力を受けては5分と持つまい。

 不幸中の幸いと言えよう。


「なら、壊すぞ」

「……、わかったわ……。最後まで手間をかけさせるわね……。ごめんなさい、ありがとう……」

「その言葉はまだ早い」

「え……?」


 俺はそう言うが否や杖に向かって魔力を放出する。

 魔法の範囲が広域に及ぶ前に既定の魔力量を満たし、その上で杖を破壊すれば八方丸く収まる。

 俺の魔力はかなり持っていかれることになるだろうが、仕方あるまい。

 背に腹は代えられないしな。


 ただ、やられっぱなしなのは性に合わない。

 ここは一つ、魔力の送付先にプレゼントを送ってやろう。


 俺は魔力をさらに放出、制御し「おもちゃ」を作ると魔力転送魔法の中へ送り込んだ。

 喜んでくれるといいんだけどな。

 そうほくそ笑むと再び葵の体に視線を戻す。


 彼女を縛っていた契約が消えたことを確認し、俺は杖を破壊する。

 そして魔法が消えたことを確認し、俺の腕の中で腰が抜けてしまっていた彼女をお姫様抱っこしなおすと部屋を後にした。

お読みいただきましてありがとうございました。

またのご来訪お待ちしております。

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