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その胸、魔法では膨らみません ~100LDK幼女憑き~  作者: すぴか
【第5章】おれひとりにロリさんにん
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【第17話 来栖家へようこそ!】

 豪邸の門前に立ち、奥を見つめる。

 門の先には綺麗な庭に石畳が敷いてあり、まさに旧家といった様相を呈して(ようそうをていして)いる。

 普通の人にはそう見えるだろう。

 だが俺達には違った景色も見えている。


「大歓迎、と言った感じかな」


 門に魔力の揺らぎを感じる。

 その向こう側に薄らと見える景色は、クロノと出会った時に行った世界に酷似(こくじ)していた。

 恐らくここから先が白山羊のテリトリーなのだろう。

 さてどうするか、と言っても選択肢は一つしかない訳だが。



 俺達が門前で佇んでいると執事服を着込んだ白髪のおじいさんがこちらに向かってくるのが見えた。


「敷紙様ですね? 来栖(くるす)家へようこそいらっしゃいました。私は執事の市野谷(いちのたに)と申します」


 彼は敷居の向こうで歩みを止めると微笑(ほほえみ)ながら歓迎の言葉を口にする。


「ああ、出迎えご苦労」

「いえいえ、これが私の仕事ですから」


 俺は彼を労うとグリの肩を軽く叩く。



「それじゃ、お邪魔させてもらうよ」

「はい、主がお待ちしております。こちらへどうぞ」


 そういう彼の言葉に従い俺たちは門を越えた。

 その瞬間、俺たちは体から力が抜け地面に倒れ込む。


「くくっ……、くははっ! こうも簡単に引っかかるとは、愚かですねぇ? あの敷紙家の者とは思えませんな!」


 彼の態度が豹変する。

 それまで穏やかな笑みを湛えて(たたえて)いたその顔には、今度は獰猛(どうもう)な笑みが張り付けられている。

 口にする言葉もこちらを見下すような内容だ。


「罠、か?」

「ふっ、それすらもわからないとは! この程度の者に他の連中はやられてしまったのですか?」

「くっ……」

「ふむ、しかし却って(かえって)よかったかもしれませんね。その様な無能の処分をしていただけたのですから、感謝をしなければいけませんかね?」


 俺はニヤニヤ笑う彼を見上げ、睨みつける。


「仲間に対してそんな言い方は無いんじゃないか……」

「仲間? ただ寄生するだけの彼らが? はっはっはっ!! 君は実にいい、笑わせてくれる。ここまで笑えたのは久しぶりですよ!」

「……」

「そのお礼に、私の奥義で苦しみ抜いて死になさい! 食らえ! 炎の蛇!!」

「ぐわあああああ!!」



「って夢を見ているみたいよ」

「ほんと屑だな……」


 門の向こうで転がっている執事を見ながら俺はそう呟く。


 俺はいつもの如く(ごとく)障壁、結界、闇、夢の魔法を同時発動していた。

 得意の複合魔法、バルサンだ。

 でもバルサンっていうとグリ達が嫌がるから言えないんだよなぁ。

 わかりやすくていいと思うのに。


「終わったでー」


 そんなことを考えているとアルから声がかかる。


「おう、お疲れ様」


 アルに中に張られている結界を解除してもらい俺たちは今度こそ本当に敷居を跨いぐ(またいぐ)

 執事は外から見えない様に石畳から少し離れた木陰に転がしておいた。


 石畳を進み、入口の扉を遠慮なく開く。

 待ち構えていた白山羊の連中が転がっているだろうと思っていたのだが、エントランスには誰も居なかった。


「あれ~? 誰も居ないです?」

「なんや、ここ本拠地やなかったんか?」

「油断するなよ」


 もしかしたら奥の部屋で待ち構えて居るかもしれないしな。


 エントランスの正面にある赤い絨毯の敷かれた階段を見上げると巨大なシャンデリアが目に入る。

 これだけの資産があるのにどうしてオカルトなんかに手を出したのだろうか。

 道を外さず、まっとうに生きることもできただろうに。



 俺達は注意しながら奥へと進む。


 不自然なまでに人の気配がしない。

 ここまで大きな屋敷を維持するとなると、執事一人ではどうしようもないだろうに。

 うちと同じように実体化した魔法が掃除とかしているのだろうか。

 そうなると魔導書が相手の手にもあることになる。

 俺は警戒のレベルを1つ上げた。


 しかし俺達の警戒を余所に、最奥(さいおう)の扉まで何もなかった。


「ここか?」

「ええ、この扉の向こうが魔法の起点となっているみたい」


 念のため障壁と結界を2重に展開し扉に手をかける。


 ギギギ……。


 立派な扉にはつりあわない不快な音が響き、扉が開いていく。


 カッ!


「うわっ!」


 扉を開くと閃光が煌めき、それと同時に何かが障壁にぶつかった。

 部屋にいた誰かがこちらに向かって魔法を放ったようだ。


「食らえ!!」


 再度閃光と衝撃、しかし1枚目の結界に阻まれ俺達には届かない。


「なんでっ! なんでよっ!?」


 悲痛な叫びと共にさらに閃光と衝撃が俺達に向かってきては消えていく。


「なんで……」

「もういいかしら?」


 グリが一歩前に出る。

 後ろからはその表情はうかがえないが、声から怒りが伝わってくる。


 魔法が止まったので部屋の奥をうかがうと、そこには震えながら杖を構える少女が立っていた。

 暗めの茶髪に縦ロール、胸元のペンダント、そしてフリルのついたドレスを着こみ、いかにもお嬢様と言った感じだ。


「……」

「どうして私たちに手を出そうとしたのか、教えてくれる?」


 グリの冷たい声の問いかけに、しかし彼女は誰何を返す。


「あなたは……、魔導書……!?」

「そうね、だからなに? それより、私の質問に答えてくれるかしら? どうして」

「命令よ! 私の物になりなさい!!」


 彼女はグリの言葉を遮りそう叫んだ。

お読みいただきありがとうございました。

またのご来訪お待ちしております。

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