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その胸、魔法では膨らみません ~100LDK幼女憑き~  作者: すぴか
【第5章】おれひとりにロリさんにん
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【第9話 ふくはない】

 端的に言って俺はお婆さんの依頼を断れなかった。

 俺達はお婆さんに案内されて、屋敷の廊下をトボトボと進む。

 つくづくこんにゃくの意志だよな、俺。

 でも斬鉄剣でこんにゃくは切れないんだぜ、豆。


「ここじゃ」


 屋敷の奥の方にある部屋の前まで着くと、(ふすま)の向こうからなんかこう、妖気的なものが漂ってくる。

 俺の本能が告げる。

 回れ右をして帰るべきだと。


「それじゃがんばるんだよ!」


 お婆さんはそう言って俺の背中を叩くと(きびす)を返してどこかに行ってしまった。

 ……。

 よく知らない男を年頃の娘さんと二人っきりにさせるとかどういうことなんですかね。

 ああ、婿取り(むことり)でしたか。

 やめてくれ。


 閉じた襖を眺めながら考える。

 これ、このまま帰っちゃダメかなぁ……。


「渡……」


 俺の考えを見透かしたような目でグリが俺を見つめてくる。

 ま、困った人を見捨てるっていうのは後味悪いし、しかたないか。

 以心伝心、目だけで会話するってなんかいいな。

 なんだかんだこいつとの付き合いも長くなってきたし、いつも一緒にいるしね。


 これからもこの関係を維持できればいいな。

 俺はそう思いながらグリに頷きを返す。


「ここは手遅れよ、あきらめて帰りましょう」


 思いは一方通行だった。


 そうね、まだ1年にも満たない付き合いだもんね。

 むしろ最後は外れたけど最初の考えは合っていたし、十分ではなかろうか。

 帰るか帰らないかの二択だからどっちでも合ってはいたとか考えてはいけない。


 まだまだ俺とグリ達の戦いはこれからだ!


「お、おぅ、そうだな……?」

「なんや帰るんか? 面白そうやのに」

「なんか渡に見せちゃいけないものがある気がしてならないのよ」

「乙女の直観ですー?」


 俺に見せちゃいけないものってなんだ。

 聞いてはいけない類の物なんだろうが……。


 「ん……?」


 そんなことを考えていると後ろから視線を感じた。

 さり気無く後ろを確認する。


 見てるよ!

 お婆さんが廊下の角からこっちを!

 逃がさない気満々じゃねえか……。


「……。困っている人を見捨てては、おけないから……」


 歯切れ悪く俺が言うとアルが反応する。


「そやそや! 兄さんええこと言うなっ!」


 お前は単純に楽しみたいだけだろうがっ。


「渡がそういうならいいけど……。知らないわよ?」


 うう……、もうちょっと反対してほしかった……。



 さて、決まったことはしょうがない……。

 俺は気持ちを入れ替えて事に当たることにする。


「だがどうすればいいんだ」


 うん、何も考えてなかった。

 と言うか、この部屋の主の名前すら知らないんだが。


「そんなの簡単ですよ、呼びかければいいんです!」

「呼びかけるって言っても、名前が分からないだろ」

「何言ってるですか、ここにちゃんと書いてあるです」


 クロノが襖の上部を指さす。

 見るとそこには木の板に「朱雀の間」と書いてあった。


「いや、これは部屋の名前だろう」

「そうなんです?」

「まぁとりあえず声かけて見よや。こんなところでまごついててもしゃーないし」


 それはそうなのだが……。

 う~ん、グリではないが何か嫌な予感がひしひしと。

 かと言って、何もせずに帰るわけにもいかないし。


「声かけるしかないか……」

「そうと決まれば行くでー」

「ですー!」


 いや、君たち何をするつもりだ?


「「す~ざ~くちゃ~ん! あ~そび~ましょー!」」


 それはまさに声掛けだった。


 子供か!

 こんなんで引きこもりが出てくるわけがないだろ。

 しかも「朱雀」って、名前ですらないし。


「あーとーでー」


 ……、あるぇ~?


「あら、返事があるなんて意外ね」

「そうだな、てっきり無視されるかと思っていたんだが……」


 引きこもりの割に社交的なのか?

 だったら引きこもってないで出てこいよ!


「中には居る見たいやなー」

「それじゃお邪魔するですよー!」


 ……。


「おい、今「あとで」って言われただろうが」

「気にしない気にしない」

「一休み一休み、です」


 何この子たち、怖いんですけど。


 アルとクロノが勢いよく襖を開けるとそこは腐海だった。


「うわぁ……」

「なにこれ……」


 どうすればここまで散らかせれるんだ。

 薄暗い部屋の中にはインターネットショッピングで買ったと思しき(おぼしき)箱や本が散乱し、ゴミ袋が部屋の隅に積みあがっている。

 俺とグリは言葉を失っていると部屋の奥から声がかかった。

 暗くてよく見えないが、彼女は部屋の奥の方に「巣」を作っている様だった。


何奴(なにやつ)!?」

御用改め(ごようあらため)でござるです!」

神妙(しんみょう)にお縄に付くんや!」


 君らノリノリだね……。

 というか、朱雀(?)もこれだけ明るい性格してるのに何で引きこもってるんだ。


「だが断る!」

何故(なにゆえ)!?」

「無駄な抵抗は(ため)にならんでっ!」

「無駄な抵抗だと……? ふふふ……、ならば我が力、思い知るがいい!」


 野生の朱雀(?)が飛び出してきた!!


 ……。


「あー、盛り上がっているところ悪いんだが……」

「なんや、水差さんといてんか?」

「お邪魔ですー!」

「無用な横槍はそなたの為にならぬぞ?」


 ブーイングを受けるが、それでもこれだけは言わなければいけない。

 それが大人として、俺が取らなければいけない行動だ。


「とりあえず、服着ようか」

お読みいただきありがとうございました。

ご意見、ご感想、誤字等がありましたら指摘いただけると幸いです。

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