【第7話 牛乳、珈琲牛乳、苺牛乳】
久しぶりのお風呂回です。
今日もビジネスホテルに宿泊する。
ホテルのパンフレットを読むと、このホテルは大浴場があるらしい。
しかもジャグジーにサウナも付いているという。
うちの風呂にはサウナはあってもジャグジーは無いんだよな。
今度機会があったら増設しよう。
ああ、今から楽しみだな。
俺達は部屋に荷物を置いて浴衣に着替えるとさっそく風呂に向かう。
風呂の入り口には休憩所が設置されており、マッサージチェアー(有料)やTV(有料)、ごろねエリア(有料)があった。
……、マッサージチェアーやTVはわかるがごろ寝エリアが有料ってなんだよ。
ふつう無料じゃないか。
こういうところで回収してるのかね。
「それじゃ、俺はこっちだから」
「「「は~い」」」
入口でグリ達と別れ脱衣所へ向かう。
「風呂上りはどうするかな。牛乳もいいが珈琲牛乳も捨てがたいんだよなぁ……」
ビールと行きたいところだが、風呂上がった後にラーメンを食べに行く予定だからな。それまで我慢だ。
「私は牛乳にするわ」
「うちは珈琲牛乳がええな」
「私は苺牛乳です!」
……。
「おい、なんでついて来てる」
「え?」
「え? じゃないだろ、お前たちは女湯だ。ほら、行った行った」
「別にええやん、減るもんじゃなし」
「クロノはともかく、グリとアルはギリギリアウトだろう」
「えー、クロノみたいなのがええのん? しゃーないなぁ」
「まぁ仕方ないわね」
ふう、これで一安心だ。
「これならいいのね?」
グリの言葉に振り向くとそこにはクロノと同じサイズになったグリとアルがいた。
グリ達と繋がっているラインを意識すると魔力の流れが細くなっている。
ああ、そういうことね……。
「そうだな、それなら大丈夫……、ってそういう問題じゃないだろ!」
「じゃあどういう問題なのよ」
「年齢的な問題だ!」
「クロノは私より年上よ?」
そうだった。
というか、こいつらの体は仮初のものだし、別に問題ない……のか?
「うー、さむいです。早くいきましょうよー」
「あ、こらクロノ! ちゃんと畳みなさい!」
「えー、どうせすぐまた着るんですからいいじゃないですか」
「だめよ、ほら、アルもちゃんと畳む!」
「ほいほいっと」
「あ、おい」
「渡も早くしないと風邪ひくわよ」
「お、おぅ……?」
俺は一人脱衣所に取り残されそうになり慌てて洗い場に向かう3人を追いかけた。
洗い場では先にグリが頭を洗っていた。
クロノとアルは石鹸で泡を作って遊んでいる。
人がいないからいいとはいえ、ちょっとお行儀がなってないぞ。
まぁこれもグリがシャンプーを流し終えるまでだろうが……。
「兄さん、背中流したるわー」
「日ごろの感謝です!」
「ちょっ、まて! くすぐったい!!」
「待ちませんですよー♪」
「ほれほれぇ! ここがええんか? ええのんか? ん? いってみー?」
「ひょえあっ!!」
全身を手でまさぐられて変な声が出てしまった。
「ちょっと、あなたたち騒ぎ過ぎよ」
おお! 救いが来たっ!
俺はグリの背に隠れようと立ち上がり……そして見事にこけた。
「のわ!?」
「きゃっ!!」
周囲がスローモーションで動いているように見える。
そしてゆっくり、ゆっくりとグリが俺の頭の上に落ちてきて……。
「ぐえあっ!」
「きゃんっ!」
「いっつ……、ん……?」
目の前が真っ暗だ。
そして口が何か柔らかいものでふさがれているような。
なんだこれ。
軽く舌を出してみると少ししょっぱい気がする。
「ひゃんっ! う、動かないで!!」
「へ?」
と、視界が明るくなった。
ああ、そうか、俺は浴場でひっくり返って……。
「!! グリ!? 大丈夫か!?」
「……、渡が下になってくれたから何とか……」
「そうか……よかった……」
「あまりよくないんだけど……」
「どうした? 痛いところがあるのか?」
「ううん、大丈夫、忘れて。痛いところは……そうね、これからアルとクロノに作るわ」
「お、おぅ」
顔を真っ赤にして怒るグリの視線の先には顔を青くして震えるアルとクロノがいた。
何があったか知らないが、ご愁傷様だな。
まぁ騒ぎ過ぎだし、ちょっとは反省してもらおう。
うん、俺は何があったか知らない。そういうことなのだ。
「ぷは~……」
「んくっんくっ」
風呂上りの珈琲牛乳はなんでこんなにうまいのだろう。
風呂を満喫した俺とグリは風呂上りの一杯を楽しんでいた。
「グリ、牛乳一口貰えるか?」
「いいわよ、渡の珈琲牛乳も一口頂戴」
うん、牛乳もこれはこれでうまい。
複数人いると交換できるからいいよな。
そしてそれを羨ましげに見つめる2つの視線。
「堪忍してえな……山より深く反省しとるから……」
「浜よりも深く反省しているです……」
あまり反省してないみたいだしいいか。
まぁ、自業自得とはいえ少し可哀そうだし半分あげるかな。
「ま、仕方ないから半分やろう」
「ほんまか!? ありがとうな!」
そう言ったかと思うと、アルは俺の手から牛乳瓶を奪い去り一気飲みした。
「ぷはぁ!!」
「あ……ああ……」
……、おい……。
クロノが萎れてんぞ。
萎れたクロノを余所に、満足げに腕で口を拭うアル。
「アル、ちょっと来なさい」
「え? なんやの? ちょっ、引っ張らんでーなっ!」
グリはアルの浴衣の首元を掴み、そしてどこかに引きずって行った。
「うぅ……夢も希望もないです……」
「……、んあ~……苺牛乳飲むかな。さっきの珈琲牛乳はほとんどアルに飲まれちゃったし」
「……」
「半分、飲むだろ?」
「え……? は、はいです!!!!」
「んくっ、んくっ……」
俺の膝の上でおいしそうに苺牛乳を飲むクロノを見ていると、止めるに止められず。
苺牛乳は結局俺の口に入ることはなかった。
まぁいいか。
お読みいただきありがとうございました。
またのご来訪お待ちしております。
あとローファンタジー日間2位、総合日間30位になれました。
これも皆様のおかげです。
ありがとうございました。
なんか呆然としてしまいますね。
そして相変わらずの書き溜め0で自転車操業状態です。
この土日でどうにか書き溜めなきゃですねー。




