【第5話 濡れた瞳が見つめる先は】
2016年10月15日改稿しました。
暗い寝室で目を潤ませて俺を見つめるグリ。
「だ、ダメ……そんな……」
「黙って大人しくしてろ!!」
そういうと俺はMyバールを突き刺した。
かなりの抵抗を感じたがそれは最初だけ。
すぐに抵抗が無くなり穴を広げながらMyバールは根元まで突き刺さった。
「アガガ……」
悲鳴ともいえない苦しい声がきこえる。
「手間かけさせやがって……」
俺は漸く出すものを出せてスッキリした顔でそうつぶやくのであった。
――話は1時間前に遡る
心温まる夕食を終え、俺とグリは書庫へ戻ってきた。
「グリ、探知魔法を使ってくれ」
俺は魔道書を手に持ちグリに探知魔法を使うように指示を出す。
「分かったわ、ん、探知……」
グリが探知魔法を使うと自分から何かが抜けていく感覚があった。
少しふらふらする。
これが魔法を使う感覚かそう思っていると頭の中にレーダーマップの様なものが表示された。
4つ光るポイントがある。
「このポイントが魔法が隠れている本の位置なのか?」
グリに聞くと
「ええ、分かりやすいでしょ?」
と無い胸をそらして自信満々の答えが返ってきた。
いや、距離と方向はわかったけど、高さは……、まぁ仕方ない、頑張って探すか。
薄暗い寝室。
目の前には子供向けの薄い絵本が4冊積んである。
「ふぁっふ……」
グリが大きな欠伸をした。眼には涙が溜まっている。
時刻は21時、子供はもう寝る時間だ。
普通に考えればこれからこの絵本を読みながら寝かしつけるのだろうが実はこの4冊、すべて魔法書となっている。
漸く見つけた魔法書が4冊、しかも今のグリでも見つけられるくらいの強さ、そしてこの薄さ。
俺はちょっと試したいことがあったのでグリにはもうちょっとだけ我慢してもらう。
「グリ、もう少しだけ頑張ってくれ」
「だ、大丈夫……大人のレディはこんな時間じゃ寝ない……はっ、大丈夫、大丈夫なんだから!」
「お、おう」
「それより渡、4冊も持ってきてどうするの?魔法書へは1冊ずつしか入れないわよ?」
「いや、ちょっと試したいことがあってな」
「いいけど……何をするの?」
ふっふっふ、よく聞いてくれた、これに取り出したるは最強最悪の決戦兵器!
突いてよし、抉ってよし、挟んでよしの万能アイテム!
テテテテンッ! ばぁるのようなものぉ~!!
「渡……もう寝ましょ?」
「いや、そんな可哀そうなものを見る目で見ないで? ちゃんと勝算はあるんだからさっ!」
「うんうん、そうね、ちょっと疲れたんだよね?」
「だーかーらー! ちょっと見てろ!」
俺はMyバールを振り上げる。
そして物語は冒頭のシーンへと戻る。
「だ、ダメ……そんな……」
「黙って大人しくしてろ!!」
そういうと俺はMyバールを絵本へ突き刺した。
かなりの抵抗を感じたがそれは最初だけ。
すぐに抵抗が無くなり穴を広げながらMyバールは根元まで突き刺さった。
「アガガ……」
悲鳴ともいえない苦しい声がきこえる。
「グリ、実体化いけるか?」
俺がそういうとグリは涙目で首をひたすら縦に振りながら魔法を使う。
泣くなよ、ただちょっとはっちゃけただけじゃないか。
「じ、実体化っ!!」
周りを見ると魔法書から出てきた魔法と思わしき動物の人形が気絶して転がっていた。
皆目をばってんにして口から下を出して痙攣している。
少し哀れだな。
ま、敵に情けをかける必要もないか。
「手間かけさせやがって……」
俺は漸く出すものを出せてスッキリした顔でそうつぶやくのであった。
怯えるグリに俺は告げる。
「グリ、捕縛してくれ」
「う、うん……捕縛」
魔道書から半透明な手が出てきて魔法たちを捕まえると本の中へ引きずり込んでいった。
なんというか、捕縛の魔法ってレベル低い割に怪しいってレベルじゃないフォルムと言うかエフェクトしてるなぁ。
敵じゃなくてよかった。
「これでよしっと」
「渡、普通魔法使いはそんな戦い方しない……」
「そんなこと言ったって、戦える魔法なんて持ってないし」
「そうだけど、そうだけどぉ……なんかこれじゃない感がひどいわ」
グリは納得できないといった様子で肩を落とした。
俺は絵本の穴がふさがったことを確認しながら考える。
これなら思ったより簡単に魔法を捕まえることができそうだな。
絵本をサイドテーブルに置くと俺はグリの頭をなでながら話しかけた。
「まぁ今は仕方ない、新しい魔法を覚えたら考えるさ」
「んっ……というか、わざわざ寝室に移動した意味ってあったの?」
「そりゃ、他の魔法に見られたら対策たてられるかもしれないじゃないか」
それどころかカウンターを食らったら目も当てられない。
こっちはまともな攻撃手段なんてないんだ。
それに一斉に来られたら手も足も出ないと思うんだよね。
だから極力こっちの手の内を見せずに、油断しておいてもらわなければならない。
「……、また同じ方法使うつもりなのね……」
「これ以上効率のいいやり方があったら変えるけどね」
「むぅぅ……」
「さ、もう子供は寝る時間だ」
「私子供じゃないもん」
「それは失礼、でも睡眠不足はお肌に悪いぞ。レディーとしては十分な睡眠が必要なんじゃないかな?」
俺はそういうとグリにベッドへ入るように促す。
「仕方ないわね……ふぁふっ……」
グリがベッドに入ったことを確認し照明を落とし、俺もベッドへと入る。
「必要最低限の部屋しか掃除してなかったから今日は我慢してくれな。明日はグリの部屋を準備するから。」
「ううん、気にしないで。お休み、渡」
「お休み、グリ」
明日はグリの部屋の掃除と今日手に入れた4つの魔法を調べよう。
グリの高めの体温を感じながら俺は意識を落とした。