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その胸、魔法では膨らみません ~100LDK幼女憑き~  作者: すぴか
【第1章】もらいものにはロリきたる
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【第4話 立て板に水】

2016年10月15日改稿しました。

 魔道書の中から出てきた俺は目を瞬かせる。

 昼前に魔道書の中に入って結構な時間がたっていたようで外はもう夕暮れ、カラスが鳴いていた。


「今何時なんだ?」


 時計を確認すると16時を回ろうとしている。


「やっべ!コンビニ閉まっちまう!」


 俺は急いでコンビニへ食料を買い出しに行くのだった。



 コンビニで明日の朝ごはん用にインスタントみそ汁、レンジでご飯を買い足す。

 卵を付けるか迷うところだ。

 TKGもいいが納豆ごはんも捨てがたい。

 いっそ納豆TKGにするか?

 そんなことを考えながら卵を籠に入れると弁当コーナーへ移動した。


「さて、今日は何にするかな」


 と言ってもこの1週間で大体のメニューは食べつくしてしまい、どれを食べるかは決まってきているのだが。

 しかもこのコンビニ、田舎のせいか弁当の種類があまりない。

 定番の幕の内弁当、から揚げ弁当、ハンバーグ弁当、そして日替わり弁当の4つあれば良い方で

 ひどい時は日替わり弁当のみということもある。

 日替わり弁当があるならいいと思うだろうか?

 だがしかし、引っ越してきて1週間ずっと同じメニューだったんだ。どのあたりが日替わりなんだ?

 あ、そういえば漬物の種類が変わっているような。

 でもそれだと他の弁当も同じだよな。

 もうサバの味噌煮弁当と名乗ればいいのにかたくなに日替わりを主張している。

 そんな益体もないことを考えていると傍から声がきこえた。


「んー、私これがいい!」

「は?」


 顔を横に向けるとそこにはグリがいた。


「え? え?」

「何? 渡? 私の顔に何かついてる?」

「あ、えっと、可愛い目と口と鼻が……」

「えへへぇ~」


 とたんぐにゃぐにゃになるグリ。

 かわいい顔が大変なことになっていた。

 俺は混乱しながらから揚げ弁当を2つ籠へ放り込むと、くねくねと踊るグリを連れてレジで支払いを済ませ家路を急いだ。



「グリ、なんで居る」


 帰り道、動揺を隠し何とか聞いてみる。


「え?それは渡の隣が私の場所だからでしょ?」

「ぐぬぬぬ……」


 屈託なく笑いながら言われるとそれ以上何も言えなくなってしまう俺だった。

 屋敷に帰ってビニール袋の中を見ると卵が割れていた。

 動揺しすぎである。



 テレビの電源を付け一息ついた。

 14インチの小さな液晶テレビだが文句は言うまい。

 ハウスシアターセットが倉庫にあったがスクリーンがないんだよな。

 残念でならない。

 爺さんからもらった軽トラで今度買に行くかと思いながらテーブルの上に買ってきた弁当を広げる。

 適当に買ってきたが大丈夫だろうか、グリの好みに合っているといいんだが。

 というか、魔道書って飯食えるのか?

 グリはから揚げ弁当を手元で開け、首をかしげながらから揚げを箸でつまむと口に含む。


「んんんん!? ひゃにひょれ!?」

「口にもの入れたまましゃべるな。何って、ただのから揚げだろ?」

「んぐっ、ごくんっ、ただのからあげ?」

「いや、から揚げ……、お前もしかしてから揚げ食べたことないのか?」

「う、うん、今までずっと本のままだったから、見ることはあっても食べたことは無かったの」

「お、おぅ、そうか、たんと食え」

「すごいね! 美味しいね!」


 やばい、なんか泣きそう。

 お腹を空かせた子供とか、俺放っておくことできないんだよね。

 空腹は、辛いからな……。


「ん? 渡、どうしたの?」


 グリが訝しげに見つめてくるが俺はごまかすため急いで弁当をかきこんだ。


「そんなにこれ好きなの? ……、しかたないわね、一個あげる!」


 そう言ってグリは俺に一番大きいから揚げを差し出してきた。

 もうやめて!俺のライフはもう0よ!!


「グ、グリ、それは自分で食べなさい。俺はもうお腹いっぱいだから……」


 俺は震えながら何とかそう答えるのがやっとだった。



 カッポーン

「くう~……沁みるぜぇ……」


 精神的にかなり疲れていた。

 何せ魔道書なんて胡散臭い話にかかわったのだ。

 その上原因は自分の曽祖父にあるという。

 しかも逃げられないと来ている。


「大魔王かよ」


 俺は一人つぶやく。

 一人暮らしを始めて独り言が増えている気がする。


「それはメラではない、メラゾーマだ」

「ちげーよ逆だ」


 おい、待て、誰だ今の。


「あれーそうだったっけ」

「……」

「それにしても沁みるって、渡、なんかおじさんくさいよー?」

「はぁ!? まだ加齢臭には早い……っ!?」

「や~いい湯だねぇ」


 視線を向けるとそこにはグリがいた。

 おれはしょうきにもどった!

 最近の魔道書は発育がいいですね。

 なんせ水に濡れても平気なんですから。

 むしろ立て板に水でつるーんと流れ落ちてますが。

 何を言っているんだ俺は……。


「でもホント沁みるねぇ、魔法がお湯に溶けだしちゃいそうだよ」


 冗談になってないからマジでやめてほしいよ?

 いや! 落ち着け、落ち着くんだ俺、ボーイズビーアンビシャス!


「ひっひーふ~、ひっひふ~……、よし、落ち着いた」


 俺はおくちつとグリを見つめた。


「時にグリさんや」

「なんだい渡さんや」

「おまえお湯につかっても平気なのか?」

「ん? 言わなかったっけ? 実体化で仮初の肉体を付与できるって」

「つまり?」

「この体は本体のコピーってことよ、感覚は共有してるけどね」

「ああ、そうか、その体に魔法が書き込まれてるわけじゃないんだな」

「あははーっ、渡、体に文字書き込むとか発想が変態だね」


 どこでそんな知識を手に入れたか聞きたい。

 いや、聞きたくない、ドツボにはまりそうだ。


「ねえ、渡、私ね、渡と会えて本当によかった。初めてマスターができて、おしゃべりがいっぱいできた。

 美味しいご飯を初めて食べた。お風呂にも初めて入れた。これが幸せっていうのかな?」

「……、これからいくらでもできるさ。もっと楽しいことだっていっぱいある。」

「そっか! 楽しみだなー!」


 広い浴槽を泳ぎ回るグリを見ながら俺はお湯を掬い顔を拭った。

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