表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
その胸、魔法では膨らみません ~100LDK幼女憑き~  作者: すぴか
【第4章】まどうしょかくしてロリかくさず
35/114

【第2話 そんなに見つめないでよ】

 屋敷の庭で魔力を纏う練習を始めて1週間。

 少しずつ纏う範囲を広げ、今では全身を覆えるようになっている。

 魔力注入量のさじ加減にも慣れて、コインを潰してしまうこともなくなった。

 これなら次のステップに進めるかな。

 今までは止まった状態で魔力を纏っていたが今度は歩きながら纏ってみよう。

 目標は無意識レベルで纏えるようになることだ。

 そうじゃないと日常生活を送っている中で魔力を制御できないからな。


 幸いなことに晴れの日が続き、少しずつ気温も上がってきている。

 桜が咲き始めるのも、そう遠くないだろう。

 そんな小春日和の中、俺は屋敷の方から視線を感じた。

 てっきりグリ達が見ているのかと思ったのだが……。


「アルマジロにゴリラ、それに赤いトカゲ……」


 体長30センチくらいだろうか。

 デフォルメされた動物の人形達がが俺を見つめていた。

 アルマジロの人形はハンカチを口にくわえて引っ張っている。

 ゴリラは地面に指でのの字を描いているし、トカゲは顔が真っ青だ。

 何か衝撃を受けているようだが……。

 トカゲは元々赤い体をしているのに顔だけ青くなっているので余計に目立つ。


 ああ、俺が練習している魔力の制御と同じ効果を持った魔法か。

 用済みになるとでも思っているのかな。

 というか、魔法も嫉妬とかするのか……。


「おい、こっちに来いよ」


 手招きすると魔法たちは少し逡巡した後トボトボとこちらに向かってきた。

 その足取りは重く、アルマジロに至っては目に涙をためている。

 俺は彼らの頭を順になでる。

 頭に手をもって行った際、一瞬ビクッとしていたが、優しくなでてやると緊張を解いてくれた。


「おまえたちを捨てたりはしないから安心しろ」

「「「!!!」」」


 魔法たちは驚愕の色に顔を染めた後、俺にしがみついてきた。

 そういえばあまり魔法とコミュニケーション取ってなかったなと今更思い返す。

 唯一の例外はもふーるくらいか?

 彼らにはそれぞれ人格の様なものがあるのに、今まで興味すら持ってこなかったように思う。

 使うだけ使って相手をしていなかったのだ。

 俺はそれに気が付くと少し申し訳ない気持ちになる。


「ちょっと見て回るか」


 俺がそうつぶやくと魔法たちは首を縦に振りながら各々嬉しそうに声を上げた。


 ――1時間後


「どうしてこうなった……」


 そこには全身を魔法たちにしがみつかれた俺の姿があった。

 どうやら捨てられるかもしれないと思っていた魔法は思いのほか多かった。

 というか、例外(もふーる)を除けば、すべての魔法がそう思っていたらしい。

 お前ら逃げ出そうとしてたこともあったはずなのに、なんでそうなるかな。


「動きづらい……、暑い……、そして……くすぐったい!!」


 困る俺を見かねてか、もふーるが前に出て耳を振りながら号令をかけた。


「きゅー、きゅっ!」


 号令を聞くと魔法たちはたちまち俺の体から離れ行列を作った。

 先ほどまでのもふもふっぷりが嘘のように整然と整列している。


「きゅっ! きゅっ! きゅっ!」


 そしてもふーるの指示?に合わせて行進を始め、どこかに消えて行った。

 後には呆然としている俺が残された。

 ……、少しさみしい。



 それからの日々は全身まとわりつかれることこそ無くなったものの、魔法たちは会うと気軽に挨拶をしてくれるようになった。

 今までは隅っこの方に避けてこそこそと通り過ぎるだけだったからな。

 良い兆候だ。

 それに魔力制御の練習をしていると時々やってきては身振り手振りでコツを教えようとしてくれる。

 何が言いたいのか残念ながらまったくわからなかったが、とても楽しい時間を過ごせた様に思う。

 魔力の管理権限を取り戻せば話せるようになるのかな。

 そう考えると楽しみが1つ増えた。


 楽しみながら出来たおかげか、練習の成果は着々と実を結んで行った。

 すでに寝ながらでも魔力を纏うことが出来るようになっている。

 魔力を圧縮して実体をもたせることにも成功した。

 もっとも、こっちはまだあまり大きいものは作れないのだが。


「兄さんもほんと器用なことするなぁ」

「ちょっと呆れちゃうわ」


 魔力に実体をもたせることが出来るようになってからは箸やフォークと言った食器類は全て魔力で賄っている。

 日々使う物はイメージがしやすいからな。

 それに洗い物もしなく済む、と思ったがグリには不評だった。


「私の仕事、取らないでほしいんだけど……」

「慣れるまでちょっとの間協力してくれ」

「仕方ないわね……」


 う~ん、むずかしいな。

 早く慣れて武器とかの実体化にシフトしよう。



 毎日練習を続け、桜が咲き始めたころに漸く俺は武器の実体化に成功した。

 右手に持つは突いてよし、抉ってよし、挟んでよしの懐かしのアイテム。

 そう、バールである。

 そして左手には10tハンマー、改め10ポンドハンマーだ。

 しかも魔力で作ったおかげか質量はあるのに重量は無いという不思議物体となっていた。

 投げたら基本的にどこまでもまっすぐ飛んでいくので注意が必要だ。


「うおっしゃああああああ!!!」


 俺は思わずバールを掲げて雄たけびを上げる。

 長かった、長かったが俺はたどり着いたのだ。

 夢にまで見た武器召喚を、俺は実現させたのだ。

 なおその夢を見たのは今日の昼である。

 まぁそんな細かいことはどうでもいい。

 武器を召喚するってやっぱロマンだよね。


「「「「「「「パチパチパチパチパチ!!!」」」」」」」


 周りから拍手がきこえる。

 見渡すと周囲はどうぶつ王国になっていた。

 いや、魔法か。

 魔法たちが俺の成果に拍手をしてくれていたのだ。


「ありがとう! ありがとう!!」


 俺は皆に礼を言う。

 君たちのおかげで、俺はここまでこれたんだ!


「きゅー!」


 もふーるが叫ぶと魔法たちは俺の周りに集まり、胴上げをしてくれた。

 胴上げなんて初めての経験かもしれない。

 嬉しいものだな。

 そんな俺の姿をグリ達は生暖かい目で見守ってくれていた。


「結局兄さんは工具作り出して何がしたかったんや?」

「さぁ……」


 聞こえない、聞こえない。

 手段と目的のエクスチェンジは俺の得意技だしな。

 


 そんなうららかな春の午後、屋敷の黒電話がジリジリと鳴り響く。

 そのベルの響は、嵐の訪れを告げているようだった。

お読みいただきありがとうございました。

感想、ブックマーク頂けると嬉しいです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ