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その胸、魔法では膨らみません ~100LDK幼女憑き~  作者: すぴか
【第4章】まどうしょかくしてロリかくさず
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【第1話 ハルウララ】

4章開始です。

 不幸な事件から3か月。

 厳しい冬が終わり、梅の花と鶯が春の訪れを知らせる。

 今年の冬はいつになく騒がしい冬となったな。

 炬燵を倉庫へ仕舞ながら俺はそう思った。

 彼とも次の冬までしばしのお別れだ。

 今までありがとう、そして来年もまたよろしくね。


「ん゛~……」


 倉庫からの帰り、少し冷たい風と柔らかい日差しを感じながら背伸びをする。

 冬の間屋敷にこもりっぱなしだったこともあり、爽やかな空気の心地よさに少し体を動かしたくなった。


「ちと練習の成果を試してみるか」



 ――冬の間、ただ屋敷にこもっていたわけではない。

 グリから魔力の管理権限を返してもらうために少しずつではあるが魔力制御の練習をしていたのだ。

 ただ、埃が舞うからとグリから派手に魔力を使うことは禁止されており、そのため蜜柑の皮をむいたり珈琲を魔力で保温したりとしょぼい練習しかできないでいた。

 しかし笑うことなかれ、この制御が地味に難しかったのだ。

 最初のうちは蜜柑が爆発したこともあった。

 珈琲は一瞬で蒸発したり、逆に凍りついたこともあった。

 バールやハンマーと違い強度がなく、ちょっとでもさじ加減を間違えると失敗してしまうため非常に精密な制御が必要だったのだ。

 何度絨毯をしみだらけにしたことか。

 そしてその度に絨毯のしみ抜きをこれまた魔力で行い、さらに穴をあけ……。

 なお、穴の開いた絨毯はグリに直してもらった。


「まぁ最初はそんなものよ」

「穴が開くだけで済むんなら十分ちゃう?」


 グリとアルはそういうが、出来そうで出来ないとなるとつい夢中になってやってしまうのが人間の性というものだ。

 何度も失敗し、一箱無駄にしたくらいで漸く安定して皮をむけるようになった。


「兄さんもう1個剥いてやー」

「あ、私もお願いしますです」


 ……、アルとクロノは俺が魔力で蜜柑の皮が剥けるようになると毎回頼んでくるようになった。


「渡、この鍋80度くらいで保温お願い」


 グリはグリで煮込み料理等の保温を頼んでくるようになった。

 俺は家電製品か何かか。


「俺、一応君たちのマスターなんですけど?」

「まぁまぁ、固いこと言うなや。ほれ、あーん」

「むぐぐ……」


 何やら誤魔化された気がしないでもない。

 しかし、鍋の保温か……。

 ちょっと試してみるかな。

 お、行けそう。


「まさか炬燵から出ずにキッチンに置いてある鍋を保温するとは思わなかったわ……」


 だって寒いし。

 おこた様から離れるなんて考えられないよね。


 万能家電としてこき使われたような気がしないでもないが、その甲斐あって今では薄皮も剥くことが出来るし日本酒だって熱燗、ぬる燗、人肌燗と好きな温度にすることが可能だ。

 ……俺はどこに向かっているんだ。



 魔力制御の練習と同時にグリ達から魔力を使ってできることを学んでいた。

 そもそも魔法とは特定の結果を出すために魔力に方向性を持たせるためのものである。

 魔法を使う者は、魔力を法則に従って使用する。ゆえに魔法使いというと。

 魔法を持っていればその魔法に魔力を流すだけで発動できるため細かい制御は不要だしそうそう失敗することもない。

 しかしそれゆえに応用はあまりきかず、いわば初心者向けのものらしい。


 だが、魔力の制御を自ら安定して行えるようになればその魔力を使い様々な事象を生じさせることが出来る。

 このことをグリ達は魔導と呼んでいた。

 魔法とは違い、自ら魔力を導くと言う意味らしい。

 もちろんリスクもある。

 制御に失敗すれば蜜柑の如く爆発してしまうのだ。

 焦りや油断で思わぬ事故につながることもある。

 その点魔法は万が一失敗しても事象が発動しないだけで爆発などはしない。

 一長一短なのだと。

 ただ最近では魔導が使える者もめっきり減って、魔法や魔導書に頼りっきりな人間も増えたとグリ達はぼやいていた。


 ――閑話休題


「まずは手に魔力を纏ってみるか」


 俺は魔力を薄らと自分の外に放出し、うどんの生地のようにゆっくり引き延ばしていく。

 ある程度の大きさになったらそれを手に纏わせる。


「うん、問題ないな」


 あとは指向性を与えてやる。

 そうだな、動きの補助と硬化、それから保温の3つでいいかな。

 俺は集中して魔力に指向性を付与していく。


「お、いい感じ」


 手の表面がほんのりと暖かくなる。

 保温の効果がイメージ通り発揮されているようだ。

 これなら手袋要らずだな。

 もう冬は終わっているが。


 次にコインを取り出して指で力を加えてみる。

 ん……少し足りないか。

 魔力を追加で注入することにする。


「お、来た来た……」


 上手くいったと思った時だった。

 バチュンと音がしてコインが潰れる。

 ゆっくり曲げるつもりだったのだが魔力を注入しすぎたらしい。


「まだまだだなぁ」


 とはいえ、それだけの力がかかったのに指は特に痛みを感じなかったし進歩はしているのだろう。

 気を取り直して俺はコインを何枚か取り出して制御の練習を続けた。


 え? 体動かすんじゃなかったのかって?

 動かしてるだろ、指を。

お読みいただきありがとうございました。

またのご来訪お待ちしております。

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