【第10話 代償】
ちょくちょくよくわからないタイミングでPVが増えているのは一体どこから来られているんでしょうね?
態々探してくれているのでしょうか。
「魔法を使うためには魔力がいるわ」
魔法を使うためには魔力がいる。
それは当然のことだ。
だが魔法を使うための魔力が不足するとどうなるだろうか。
頭痛がする、気持ち悪くなる、目が回るそして気絶して魔法が中断される。
そう、それが普通だ。
以前俺が気絶したように。
気絶する、それは体の防御反応だ。
自分の許容量を超えた衝撃に対し、自分を守るために強制的にスイッチを落とす。
ではそのスイッチが落ちないように、気絶しないように何らかの手段を取った場合はどうだろう。
防御を捨てて、その衝撃を受け止めた場合はどうだろう。
足りない魔力で無理やり魔法を行使した。
そしてその魔法を、呪いを防がれた場合は。
呪いは防がれた場合、術者にその牙をむける。
呪いを行使する者は当然それを考慮して防御手段を用意しているものだ。
だが無理やり魔法を行使するために防御を全て捨て去っていたら?
その結果が、その答えが、目の前にあった。
「死体すら残っとらんな」
「哀れな……」
骨すら残らないそれは。
まさに禁忌と言えるものだ。
神の膝元で、禁忌を犯す。
その代償は存在の消滅。
「建てたばかりの教会が朽ちていたのもこれが原因やな」
「森が丘に変わっていたのも、たぶんね」
周囲を巻き込んでいたのか。
誰も居なくてよかった。
もし街中でやられていたらと思うとゾッとしない話だ。
……、考えてみれば俺が呪いを解いたから、返された呪いがこの人を襲ったんだよな。
「この人、俺の所為で死んだのか……」
「違うわよ、渡の所為じゃない。呪いなんて手段を取った時点でもうまともな死に方は出来ないもの」
「せやな、この感じやと呪いが成功していても長くは生きられへんかったと思うわ」
それでも、存在が消滅するまでは行かなかったんじゃないだろうか。
せめて、神の御許へ行くことが出来たのではかったのではないだろうか。
「渡さんは、とてもいい人なのですね」
「……、そんなことないさ……」
「いいえ、あなたがこの人の冥福を祈るから、この人にも救いがあるでしょう」
「救い?」
「ええ、ほら」
クロノが視線を上げる。
つられて俺も顔を上に向けると光の粒子が天井に向かい、消えていった。
見るとグリとアル、五右衛門もその光を見送っている。
「これで、よかったのか……」
「そんなこと言わないでよ、呪いを返さないと死んでいたのは渡だったのよ?」
「むぅ……」
「人を呪わば穴二つ、彼奴は代償を支払ったのでござる。これは節理でござるよ」
「それで救いまであったんやからこれ以上は贅沢っていうもんやで」
彼女はそこまでして魔導書を手に入れて、何がしたかったのだろうか。
その代償に見合うだけのものがあったのだろうか。
俺の手に入れた魔導書は、もしかしたら途方もない価値があるのかもしれない。
それこそ命を懸ける価値があるほどに。
「う~ん……」
「どうした?」
グリは瓶を拾い上げ首をひねっている。
何か気になることでもあるのだろうか。
「この瓶に入っていたものって、たぶん霊薬の類なのよ」
「霊薬?」
グリの説明によると霊薬とは世界の雫、神の血とも呼ばれ死すら超越する力を持った薬らしい。
ゲームとかでエリクサーとか呼ばれている奴か。
死者を復活とかできるのかね。
でもそんなものがあるのに何で彼女は死んでしまったのだろうか。
「だけど……」
「うん、本物なんて早々手に入らないから紛い物ね」
「なんだ、大したことないのか」
「それでも十分すごいのよ? それにこんなもの、個人で手に入れるなんて不可能だから。何かしらの組織が裏にいたはず」
うわぁ……。
中二病かよ。
現実見ろよな。
……。
目の前に魔導書があったわ。
「でもまぁ屋敷の防犯は強化するし、ここまでやって防がれたのならしばらくは警戒して大人しくしてるでしょ」
「相手の目星はつかないのか?」
「追跡できそうなものはないわね」
「そりゃそうか」
「ここまで綺麗に消されると腹も立たないわ」
「ほんまやな、魔力の流れがどこにもつながってないとか、すごいわ」
やられっぱなしと言うのは面白くないが、相手が特定できないのでは仕方ないか。
俺は釈然としないものを感じながら家路についた。
「視られているわね」
帰り道、隣を歩くグリがボソッと呟いた。
周囲を見渡すが木が林立しており視線が通る余地はない。
俺を挟んで反対側を歩くアルは目を瞑りながら俯いている。
「監視系の魔法やな。手を出してくるわけやないし、無視や無視」
「ほんと趣味が悪いわね。こういうのストーカーっていうんだっけ?」
「渡、守ってや?」
アルがニヤニヤとこちらを見つめてきた。
わかってるよ、俺もお前たちを手放すつもりはないし。
「ま、出来る限りな」
「約束、やで?」
「おう?」
急に真剣な眼差しで見つめられ、少したじろいでしまう。
あまりキャラに似合わないことをしないでほしい。
「うー、さぶいさぶい、グリー今日の晩ご飯なんなん?」
「そうね、おでんにでもしようかしら」
「ええなっ! やっぱ寒い日には鍋がええよなー!」
先ほどまでの空気はどこへやら。
俺たちは屋敷へ急ぐのだった。
若い女性の失踪。
メディアが好みそうな話題だったのに、次の日のニュースにも、その次の日のニュースにもそのことが触れられることはなかった。
第三章 完
お読みいただきありがとうございました。
第3章はここまでとなります。
この後閑話を挟んで第4章へ移行します。




