表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
その胸、魔法では膨らみません ~100LDK幼女憑き~  作者: すぴか
【第3章】とびらをあければロリをえる
31/114

【第9話 人を呪わば】

 行くわよ! と勢いよく立ちあがったグリだったが……。


「その前にちょっと喉が渇いたわね。お茶を入れてくるわ」


 立てない俺を前に何とか取り繕うもののその場は微妙な空気に支配された。


「拙者、グリ殿を手伝ってくるでござる!」

「あ! 一人だけこの場から逃げるとかずるいで!?」


 その場に残されたのは俺とクロノだけだった。

 これは……チャンスなのではないだろうか?

 クロノは明日と言ったが今目の前にあるこれは……、きっと神様が暮れたチャンスなのでは!?


「ク、クロノ?」

「え? なんです?」

「きゅー」


 ……。

 ちゃっかりもふーる(監視)が居た。

 くそぅ!



 何とか痺れが収まると俺はグリに手を引かれ外に向かう。

 後ろを確認するとアルとクロノ、そして五右衛門もついて来ている。

 この大所帯で向かうと流石に目立つんじゃないかな。

 五右衛門の魔法があるから問題ないか。


「ところで、どこに行くんだ?」

「こないだ引っ越してきたご近所さんのとこよ」

「そこが怪しいと?」


 何の根拠もなく人を疑うのはどうかと思うんだけどな。

 俺は人の善性を信じたい。

 信じる心が争いをなくすんだ。きっと。


「私の推理に間違いはないわ」

「ほぅ?」


 グリには何か考えがあるようだ。

 ニヤリと口角を吊り上げてこちらを見つめてきた。

 むぅ、何かヒントの様なものはあっただろうか。

 女の勘ってやつとか?

 いや、それじゃ推理とは言わないな。

 う~ん……、考えてみれば引っ越してきたタイミングが近いような。

 それにこの周辺だと住んでる人なんてほとんどいない、そういうことか。


「五右衛門に聞いたのよ!」


 勘ですらなかった!

 どや顔をするグリの顔をもみくちゃにする。


「ひゃにほすりゅのよほ!!」

「聞こえんなぁ! はっはっは!」

「ひひゃい! ひひゃいい!!」

「はっはっは! ごふっ!」


 グリの膝が綺麗に俺の鳩尾に入った。

 地面が俺の膝に雪を押し付ける。

 いや、違う、俺が膝をついていたのだ。


「はーっ、はーっ、乙女の柔肌になんてことを……」

「くはっ……」


 グリは頬を赤くして俺に追撃してくる。

 もう勘弁してくれ、わかった、俺の負けでいいから!


「いつもこうなんです?」

「まぁいつものことやな」

「仲がいいのでござるなぁ」


 そこ、なんで傍観してるのかな?

 俺の魔導書と魔法だろ?

 マスターを助けろやっ!!

 ……グリ(加害者)も俺の魔導書だったわ……。



 緊張感のないやり取りをしながら雪道を歩く。

 これから敵(?)のところに行くというのにいいのだろうか。

 ん、そう思うとちょっと緊張してきたな。

 今まで明確な敵意と対峙したことなんてなかったし。

 いかん、少し手が震えてきた。

 そう思っていると両手が暖かいもので包まれる。


「渡、大丈夫よ」

「兄さん、安心し。うちらがついとる」

「……、さんきゅ」


 少し恥ずかしいが、それでも緊張はほぐれた。

 目的地まであと少し、気合入れていくぞ!




「この辺は全部森だと思ってたんだが、教会があったのか」


 森の小路を抜けた小高い丘の上に小さなそれはあった。

 どんよりと曇った空を背に、白い壁に三角屋根、そして十字架。

 よく見ると塗装は所々剥げており、十字架は錆びついていた。

 鐘の音は響かない。

 扉は固く閉じ、来るものを拒絶しているようだった。


「そうね、最近建てたばかりと聞いていたけど」

「最近建てたばかり……?」


 見る限り建てられて数十年は経過しているように見える。

 教会へ続く道は除雪をされておらず、足跡もなかった。

 本当に人が住んでいるのか?


「ここであってるの?」

「相違ありませぬ。間違いなく拙者はここより放たれたでござる」

「誰かが住んでいるようには見えないのだけど……」

「あまり喋らないで欲しいのでござるが……隠形にも限界があるのでござるよ?」

「むぅ……」


 とりあえず俺たちは教会に近づく。

 明かりはついておらず、人の住んでいる気配は感じない。

 そっと扉に手を触れると静かに開いて行った。

 これは……、誘われているのか?


「……ここで待っていても仕方がない、行くだけ行って見よう」

「そうね」


 俺たちは教会の中へ足を踏み入れる。

 建てられたばかりという教会の中の通路は一歩踏み出すごとに足跡がはっきりわかる程埃が積もっていた。


「アル、障壁いつでも展開できるように頼む」

「誰もおらん見たいやけどな……」

「念のための保険だ」

「ん、まかしとき」


 嫌な予感がする。

 魔導書を奪おうとしたのに誰も居ないなんて。

 奪えたとしてもこれじゃ回収できないじゃないか。

 俺たちは警戒しながら祭壇へ向かい身廊を進む。


「ん? なんだこれは」


 説教台を覗き込むとそこには黒い布が落ちていた。

 よく見るとそれは修道服と言われるもののようだった。

 周りには瓶や本などが散乱している。


「何だこれは」

「これは……」

「グリ、何かわかるのか?」

「ええ……、でも……」


 グリが少し言いよどんで口にした言葉は、気分の悪くなるものだった。

お読みいただきありがとうございました。

もう少しで3章終わります。

が書き溜めがないので頑張ります。。。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ