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その胸、魔法では膨らみません ~100LDK幼女憑き~  作者: すぴか
【第3章】とびらをあければロリをえる
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【第4話 異世界への訪問】

 シスターの名前は黒野 峰子と言うらしい。

 先日近くの教会に赴任してきたばかりで周辺の地理に疎く、誤って屋敷の敷地に迷い込んでしまったところに

雪が強くなってきたため申し訳ないと思いつつも別館に避難していたそうだ。

 何とか雪から避難できたと思ったらゾンビやスケルトンに囲まれてしまいへたり込んでいたところに俺たちが来た。

 そう言っていた。


「それでは敷地の出口まで案内するのでついて来て下さい」

「ありがとうございます、助かります……」


 俺は案内するために歩き出したが、ついて来る気配がない。

 どうしたのかと振り返るとシスターは青ざめた顔でポケットをまさぐっていた。


「どうしたのですか?」

「あ、あの、その、本を、落としたみたいで……」

「ふむ、どこで落としたか心当たりは?」

「た、たぶん先ほどの建物で落としたのだと思うのですが……」


 シスターは泣きそうな顔をしてプルプルと震えていた。

 なるほど、ゾンビやスケルトンに追われたときに落としてしまったのか。

 そしてシスター一人では取りに行けそうにないな。

 仕方あるまい。


「それは大変だ。よろしければ私が取って来ましょうか」

「兄さん? どないしたん? そんなこと言うなんて兄さんらしくないで?」

「何を言うんだ、アル。お前だって助けただろうが。いつも通りだ」

「そやけど……、なんか違わへん……?」

「人は変わるものさ」


 精一杯恰好を付けてアルにウィンクをすると


「胸か、胸がええんか……」


 とアルは一人、分けのわからないこと言い始めたのだった。

 アルは置いておくとしてシスターに話しかける。


「それでよろしいですよね?」

「あ、はい、でも一人だけで行かせるのも申し訳ないので私も同行させてください!」

「う~ん、危険ですよ?」

「大丈夫です、これでも神に仕える者ですから。先ほどは驚いてしまいましたが今度は大丈夫です!」


 自分の手を握り締め手元に引き寄せ俺をまっすぐ見つめると、頑張ります!と黒野さんは言った。

 黒野さんの覚悟を余所に屈まなくても視線が合う相手なんて久しぶりだなと全く関係ないことを俺は思っていた。



 別館の入り口へ戻り慎重に扉を開く。

 ゾンビやスケルトンが飛び出してくるかと警戒していたが特に来ないようだ。

 一升瓶を構えたまま扉をあけ放つ。

 そこはやはり魔界であった。


「どうなっているんだこれは」

「一体何なんでしょうか……」


 目を凝らすが、どこまでも続く荒野があるだけで動物の気配はない。

 さっきまで居たゾンビやスケルトンはどこに行ってしまったのだろうか。

 動物どころか岩すらもないそれは、すべてを拒絶しているように思えた。


「空間系の魔法でも展開されとるんかな。しかしこれだけ大規模となるとちょっと想像がつかんなぁ」


 アルが少し困惑気味に自信の推測を述べる。

 扉からは少し熱を持ったような乾いた風が吹き出してきている。

 にもかかわらず扉の周囲の雪は解ける気配を見せない。

 なるほど、魔法的な何かで作られた空間とみるべきか。


「しかしこれだけの広さとなると探すのは一筋縄ではいかなそうですね」

「はい……、あっ! あれは!」


 黒野さんが指をさした先を見ると、何やら黒い影が見えた。

 シスター服の裾をまくりあげて黒野さんが走り出す。


「ちょっとまって!!」


 俺は慌てて黒野さんを追いかけ扉の中へ入って行く。


「よかった……」

「その本が落とした本ですか?」

「ええ、とても、とても大切なものなんです」


 黒野さんは服に泥がつくのも構わず地面に座り込み、本を胸に抱きしめて俯いていた。

 黒野さんの双丘が素敵に歪んでいる。

 眼福眼福。

 地面に一つ二つ雫が零れ落ちる。

 きっとその本は聖書か何かなのだろう。

 シスターらしく信心深いのだろうなと俺は思った。

 あれだけ焦っていたのだからよほど大切にしていたに違いない。


「よかったですね」

「ええ、本当によかった」


 俺を見上げて微笑む黒野さんの目にはもう涙はなかった。


「さて、戻りましょうか」

「はい」


 俺たちは入り口に戻ろうと振り返るがそこに扉はなかった。

 いや、遠くの方に分類的には扉の仲間の様なものはあったのだが、それはとても扉とは言えないだろう。

 なんせそれは一般に城門と言われる類のものだったのだから。

 城門の向こうには当然その門が守っている城郭が見える。

 赤く染まった異様なほど巨大な満月を背景としてその白い城は聳え立っていた。

 そして横を見ると城壁が広がり続け、先が見えない程だ。


「何なんだこれは……」


 俺が呆然と呟くと同時に遠くに見える城門がゆっくりと、威厳をもって開かれていく。

 俺たちは地面に伏せ、息を殺して様子を伺うが誰かが出てくる気配はない。

 そしてこの世界の異常さを新たに見つける。

 一切の音がしない、風すら吹いていないのだ。

 門の動きが止まる。

 再び俺たち以外のすべてが止まった世界が戻ってきた。


「これは、入って来いってことなのかな」

「かもしれません……」


 俺と黒野さんは少し逡巡した後、罠だと思いつつも城門へ向かって行った。

読んでいただきありがとうございます。

ご意見、ご感想お待ちしております。

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