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その胸、魔法では膨らみません ~100LDK幼女憑き~  作者: すぴか
【第3章】とびらをあければロリをえる
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【第3話 ばいんばいんバインド】

 しんしんと雪が降り積もる中、俺とアルは別館に続く渡り廊下を歩く。

 空はどんよりと厚い雲が覆い、まだ14時を回ったところだというのに薄暗い。

 幸い風は吹いておらず、雪が吹き込んでくることはなかった。


「な~んか嫌な感じやなぁ」


 アルは腕で自らの体を抱いてそういうが別館の外観には特に変わった様子は見られなかった。

 窓から中を覗くも同じく変わった様子はない。

 俺には感じられない何かを彼女が感じているということだろうか。


「さくっと確認して早く戻ろう」

「夕方までおこた様は戻ってこんけどなぁ」


 それなら夕方までのんびり風呂に入っているのもいいだろう。

 雪見風呂、雪見酒、酒池肉林再び。

 そう思いながら俺は扉を開けた。



「は……?」


 扉を開けるとそこは魔界だった。

 外から中を見た限りでは至って普通の廊下だったのに扉を開けて中を見ると

荒れ地がと赤い空が広がりとても建物の中とは思えない光景が広がっていたのだ。

 さらにはゾンビやスケルトンといった明らかに人外であろう存在が黒っぽい布の塊を囲っていた。

 ここは迷宮なのかと慌ててメニューを確認しようとするがメニューが開かない。

 つまりここは迷宮ではないということか。

 いや、落ち着いている場合ではない。

 目の前にはゾンビとスケルトン、そして謎の黒いブツが!


 バタン


 俺は扉を閉じる。

 どうやら俺はかなり酔っぱらっているらしい。

 この瓶ももう2本目だしな。


「え、なに、どしたん? 中に入らんの?」

「ああ、中はハロウィンパーティーを楽しんでいる方々がいたからね。邪魔したら悪いだろう」

「は? クリスマスやのうて?」

「そうだな、彼らにとってはクリスマスもハロウィンも大して差はないのだろう」

「って、そうやない! 何、不法侵入かいな?」


 くっ、誤魔化しきれないか?

 いや、まだだ、まだ行ける!

 自分を信じるんだ!


「大丈夫だ、アル。俺は気にしない」

「そういう問題なんか?」

「そういえばアル、昨夜雪の中に蜜柑を埋めておいたんだ。いい感じに冷凍ミカンになっていると思うんだが。」

「よし! はよ戻ろう!」


 ふっ、チョロいやつめ。

 俺とアルは別館に背中を向けた。


 バンッ!


 後ろから物音が聞こえたが、きっと気のせいだ。


「待ってください!!」


 振り向いてはいけない。


「お願い! 待って!」


 振り向いたら連れて行かれる。


「待って……、あっ!!」


 何かが飛んでくる気配がする。

 首だけ後ろに向けると棒状のものが飛んでくるのが見えた。

 まずい、避けきれない。

 俺は目を瞑り衝撃に備える。

 だがしかし、衝撃は来なかった。


「あかんな、おねーさん。うちのマスターに手を出そうなんて100年早いで?」


 前に出たアルが障壁を展開し防いでいたのだった。

 え、何この娘、かっこいいじゃない。


「杖を投げつけるなんて、一体何のつもりなん?」


 俺は棒状の物、もとい杖を投げつけてきた相手を見る。

 地面に蹲る全身を黒い服に包まれたそれはよく見れば修道女、シスターの姿をしていた。

 怪しい、怪しすぎる。

 君主危うくに近づかずだよな。

 今まで散々近づいてきたけど、今度こそは。

 俺はそう思いながら目を閉じた。


「俺に一体何の用だ」


 三度目の正直と思いながらシスターに声をかける。

 あれ、二度あることは三度あるだっけ?

 間違ってしまったがもう遅い。

 顔を上げたシスターが答える。


「あ、あの、ごめんなさい、転んだ拍子に杖を投げちゃったみたいで……」

「ああ、それは仕方ないですね」


 俺は爽やかな笑顔で答える。

 仕方ないじゃないか、困っている人はほっとけないしね。

 それに巨乳だし。

 神に仕える者を蔑にすると後が怖いし。

 それに巨乳だし。

 それに巨乳だし。

 はっ。

 いかん、目が胸元に釘付けになっている。

 違う、これは胸ではなく胸元のロザリオを見ているんだ!

 くっ、これは不味い、何かの呪いを受けているようだ。

 胸元から目が離せられない!


「兄さん……」


 アルが冷たい目を向けてくるが仕方ないんだ!

 グリやアルのささやかなブツを民兵とすると彼女はグリーンベレー並みの武装を所持していたのだ。

 これでは抵抗する余地がないではないか!

 そうだろう!?


「なぁ兄さん、正気に戻ってんか?」


 呆れた顔をしたアルが拾った杖で頬をペチペチと叩いてくる。


「あ、ああ、すまない、少しボーっとしていたようだ」

「そないか、しっかりたのむで」

「おう……」

「それで、おねーさんは一体何なんや?」


 アルが鋭い視線を投げかけるとシスターはおどおどとしながら答える。


「あ、あの、私、ここでボーっとしてたら、ゾンビとかスケルトンに囲まれてしまって……」

「ほーん? うちらが来たタイミングでか?」

「は、はい、本当にすごいタイミングで……。あ、あの、ありがとうございました! おかげで助かりました!」

「うちらは何もやっとらんけどな?」

「それでも! お二方が来たのに驚いたのかゾンビもスケルトンも逃げて行きましたので……」


 アルは俺に被害を与えそうになったシスター(原因)に対してかなり警戒している様だった。

 ふむ、少しこのシスターが可哀そうに思えてきた。

 たまには人助けも悪くないか。


「アル、落ち着けよ。この人も悪気があってやったわけじゃなさそうだし」

「そうは言ってもやな」

「さ、お嬢さん、お怪我はありませんか?」

「え、あ、はい、大丈夫です……」

「兄さん……」


 アルには悪いがどうにもこの人を見捨てるのは気が咎めたのだ。

お読みいただきありがとうございました。

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