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その胸、魔法では膨らみません ~100LDK幼女憑き~  作者: すぴか
【第3章】とびらをあければロリをえる
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【第1話 冬の訪れ】

3章開始です。

 寒さが厳しくなってきた12月。

 窓から外を見ると屋敷の庭にできた巨大なお風呂からは湯気が立ち上っている。

 寒さで湯の温度が下がるかと思ったが、風呂はどういう原理か適温を維持していた。


 ピンポーン


 静寂を破り来訪を告げる鐘が鳴る。

 鐘じゃないか。


「ちょっと対応してくるわね」

「ああ、頼んだ」


 グリは慣れた様子で来客の対応をしに門へ向かった。

 何もかもやってくれてちょっと申し訳ないな。

 アルを手に入れた後、一時期幼女になっていたグリも今は小学校高学年くらいの少女の姿をしている。

 これなら来客も変には思わないだろう。


 俺の魔力次第で成長すると聞いたときは驚いた。

 そして同時にホッとした。

 なんせ体が大人びてきているのに一緒に風呂に入り、同じベッドで寝起きしていたのだ。

 俺の理性は煩悩と戦う日々を過ごしており、遠くない未来に敗戦することは目に見えていた。

 敗北へのカウントダウンが始まろうとしたとき、グリは小さな子供に戻っていた。

 俺の理性は束の間の休息を得たのである。



 しばらくするとグリは小包を携えて戻ってきた。


「ただいま。なんか近くに引っ越してきたからって挨拶に来られたみたい」

「ほー、こんな僻地に引っ越してくるなんて変わってるな」


 俺が言えた立場ではないが、俺の場合は屋敷を相続したからって理由があったからね。

 こんなところに引っ越してくるなんてなかなかないと思う。


「どんなひとだったんだ?」

「……20歳くらいの女の人だったわよ」


 その間は何だ。


「お、なんやなんや? おやつかいな?」

「もぅ、はしたないわよ」

「固いこといわんといてよー、どうせ身内しかおらんのやし」

「そういうのっていざっていうときに出ちゃうわよ」


 綺麗な包装紙を丁寧に開けると中身はモックモックのクッキーセットだった。

 うれしいじゃないか。

 俺、モックモックのシーガル好きなんだよね。


「お茶入れるから待っててね」

「うちも手伝うー!」


 普段はあまり台所に入らないアルもクッキーが早く食べたいらしく台所に向かって行った。

 グリはアルにてきぱきと指示を出すと包装紙を丁寧に畳み始める。

 なんかお母さんみたいだな。と益体もないことを考えながら再び外を見た。

 少し曇った窓ガラスの向こうに白いものが踊っているのが見えた。

 朝のニュースでは曇り、ところにより雪と言っていたなと俺は思い出す。

 今日は雪見風呂と洒落込めるかもしれない。


「楽しみだな」


 どんよりと曇った空から舞い降りる雪は少しずつ、しかし確実に積もって行った。



 翌朝外を見ると一面銀世界だった。

 俺は着替えもせずに外に飛び出ると白い平原に足跡を付けて回る。


「ちょっと! 風邪ひくわよ!?」


 グリが入口から叫ぶが知ったことではない。

 だって雪だよ?

 しかも誰の足跡もない雪原だ。

 これは全力で行くしかないだろう。


「うっわ! すごいなぁ!」


 グリの横を抜けてアルが飛び出してくる。


「行くぞアル! 競争だ!!」

「ほい来た! 負けへんで!!」


 俺は童心に戻りアルと庭を駆け回る。


「行け! 雪だるまロボ」

「なんのこれしき!」


 アルが作った雪だるまロボの振るう拳と俺のハンマーがぶつかり合い火花を散らす。

 火花ってなんだ、火花って。


「ちょ! あぶねえだろうが!」

「渡なら大丈夫やろ?」

「そういう問題じゃねぇ! うわっ!」


 こいつ、マジでやってきてないか?

 俺じゃなきゃ死んでるぞこれ。


「いいだろう! 俺の本気を見せてやんよ!!」

「かもん!マスター!!」


 俺は水と風の魔法を使用し氷で出来た巨大ハンマーを作り出すと雪だるまロボの上からたたきつけた。

 雪だるまロボは巨体とはいえ所詮は雪、氷のハンマーに叩き潰されるのだった。


「ずるいで!?」

「お互い様だろうが!!」


 お互いに罵り合うと今度はそのまま雪合戦に突入する。

 その後昼過ぎまで遊び続けカマクラや雪像を作ったりした。


 なお雪合戦はアルが魔法で作り出した大量の雪玉をマシンガンの如くばら撒き

俺がハンマーで叩き落とし続けるといった状況で膠着してしまい引き分けとなった。



「お餅焼けたわよー」


 というグリの言葉で雪遊びはお開きとなった。

 屋敷に戻るとグリがバスタオルと着替えを持って待っていた。


「ああ、もう、びしょびしょじゃない。風邪ひく前に早く着替えて、と言うより一回お風呂に入って体を暖めてきた方がいいわね」


 言われてみると全身びしょ濡れになっている。

 俺は着替えとバスタオルを受け取るとアルと一緒に風呂に向かった。


「「くあ~……」」


 冷え切った体にお湯がしみる。

 それに思いのほか疲労がたまっていたようで筋肉がマッサージを要求していた。


「アルー、ちと揉んでくれー」

「はいな~」


 アルにふくらはぎをもんでもらうと疲れが溶けだしていくのを感じる。

 ああ……これは不味い……寝落ちしそうだ……。


「寝ちゃだめやで! 寝たら死ぬで!」

「なんでやねん」


 アルのおかげで少し目が覚める。

 アルに視線をやると仁王立ちで腰に手を当てて笑いながらこっちを見ていた。

 グリと同じくらいの膨らみかけのそれは、濃い湯気の中でも存在を主張していた。

 少しは隠せと思いつつもアルに入っても無駄だろうなぁとも思う。

 ここまで開けっ広げだと色気も何もないな。


「綺麗なもんだ」

「はっは、せやろ? もっと近くで見てええんやで?」


 それゆえに前かがみにならなくても目の前の芸術作品を拝める。

 体もいい感じに温まったので風呂から上がることにした。


 風呂から出てダイニングへ向かう途中、醤油のいい香りが漂ってきた。

 急に空腹を感じる。

 そういえば今日は何も食べていない。


「お雑煮にお餅何個入れる?」


 ダイニングの扉を開けるとグリが聞いてきた。


「う~ん、とりあえず1個お願い」

「うちは2個や!」


 風呂に入っている間に餅が冷めてしまったのでお雑煮にしたらしい。

 鰹出汁と醤油、そして柚子の香りを楽しみながら俺は餅に食らいつく。

 絶妙な塩加減がたまらない。

 3人で雑煮に舌鼓を打つ。

 幸せとは、こういうことを言うんだろうな。

 この幸せがずっと続けばいい。

 そんなことを俺は思った。

お読みいただきありがとうございました。

感想貰えるとうれしいです。

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