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その胸、魔法では膨らみません ~100LDK幼女憑き~  作者: すぴか
【第2章】ちかをあるけばロリにあう
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【閑話 私が私であるために】

改稿までのつなぎです。

 お日様が顔をだし暖かな日差しを届け始めてきた頃。

 一緒に寝ている渡が寒くならないよう、そっとベッドから抜け出す。

 床が少し遠くに感じる。


「ん……さむっ……」


 暖かい布団に後ろ髪をひかれるが、日課となっている門前の掃除の時間だ。

 辺鄙なところに屋敷があるせいでほとんど人は通らないが、それでも周りへのアピールは重要だと私は思う。

 外堀から少しずつ埋めていくのだ。

 昨日からアルが仲間になっている。

 ライバルがいるとなれば油断はできないのだ。

 それが終わると朝ごはんを作らなければならない。

 胃袋をつかめと誰かが言っていた気がするし、渡の食べるものは私が作りたい。

 寝起きの頭で今日1日の予定を考えながら着替えに腕を通す。


「なんだか少し丈が長いような……?」


 しかたない、実体化で適当にサイズを合わせた服を作る。

 着替えると扉へ向かう。

 ……、あれ……?


「ドアノブがなんか高い位置にある……」


 部屋が大きくなっているのだろうか。

 ……。

 いや、認めねばなるまい。

 いくら寝起きの頭とはいえ流石に理解した。

 体が小さくなっている。

 叫びそうになったが渡がまだ寝ていることを思い出すとなんとか我慢しそっとドアノブに手をかけて廊下に出る。


「な、なによこれ……」


 私は急いで衣裳部屋へ向かう。

 衣裳部屋で姿見を確認すると私の姿は中学生くらいの少女から、渡と出会ったころくらいの幼女に戻っていた。


「なんで……」


 あまりのことに呆然としてしまった。

 この姿では門前の掃除をするわけにもいくまい。 

 ふらふらとした足取りで、それでも朝食を作ろうとリビングへ向かう。

 リビングからは明かりがこぼれており先客がいることを知らせてくれる。

 リビングの扉を開くと目の前にアルの顔があった。


「アル……おはよ……」

「おー、グリか~、おはようさん」


 アルは明るく挨拶してきたが顔色は少し悪い。

 普段なら気を使ってあげるところだけど残念ながら今の私には余裕がなかった。


「アル、ないの……」

「のーなってしもうたなぁ……」

「え……?」


 沈んだ声にアルをよく見る。

 動揺していた私はすぐには気が付かなかったが、アルも小さくなっていたのだ。

 大体私と同じくらいだろうか。

 身長の割に存在を強烈に主張していた2つの塊は、今では私と同じ真っ平らになっていた。


「ふふっ……」

「ん? どないしたん?」

「ううん、なんでもないわ」


 ライバルが自分と同じところにまで落ちてきたことを確認すると、私の中に少しだけ黒い喜びが生まれた。

 そんなことを思った自分が少し嫌だ。

 アルが仲間になったことは素直にうれしい。

 最初は渡が浮気したのかと思っていたけど、そういうわけではないみたいだし。

 それにアルも思ったより悪い子ではなかった。

 一緒に話しているところを見ると少し、うん、ほんの少しだけ妬いてしまうけれど。


「すまんなぁ、うちが渡の所有物になったからやろ、これ」

「ううん、よくよく考えればわかっていたことだもの」


 渡は一人で魔導書は二つ。

 今まで私が独占していた渡の魔力は、今は私とアルの二人に分けられている。

 単純に魔力が半減しているのだ。

 アルの所為ではない。

 それはわかってる。

 でも、それでも、落ち込まざるを得なかった。

 最初はほとんど意識してくれていなかった渡。

 少しずつ成長してきた私の体を、最近漸く意識してくれるようになってきていたのに。

 でも考えてみればアルの方が意識されていた気がする。

 私はまだ一緒にベットで寝てくれるけど、昨夜アルも一緒に寝たいといった時は断固拒否されていたし。

 その際は優越感を覚えたけど、よくよく考えてみれば負けていたのは私だったかもしれない。

 それを思うとこれは僥倖だったのではないだろうか。

 そんな考えをしていたことに気が付くと私は首を振った。


「落ち込んでいても仕方ないわ。とりあえず朝ごはんの支度をしましょう」

「そうやなぁ、なんか手伝うことあるか?」

「ううん、大丈夫。テレビでも見ながら待ってて」


 渡の食べるものは極力私が作りたい。

 そんな思いで手伝おうと言ってくれたアルを遠ざける。

 自分勝手で我儘、他人を騙すことなんて何とも思わない。

 でもそんな私を渡は受け入れてくれた。

 私の居場所になってくれると言ってくれた。

 だから私は……。


「よっし、準備できたから渡を起こしてくるわね。アルはお皿の準備をお願い」

「は~い」


 渡を起こすのは私の特権だ。

 この役目は誰にも渡したくないな。


 今日の朝ごはんは味噌汁、納豆、玉子焼きに大根おろし。それに渡だけは焼き魚を付ける。

 喜んでくれるかな。

 味噌汁の実はジャガイモと玉ねぎ、玉子焼きは甘く。

 焼き魚は鰈の干物。

 どれも渡の好物だ。

 大根おろしは昨日お酒を飲みすぎていたから。

 二日酔いになっていたらいけないし。

 渡は何を出しても美味しいと言ってくれるが、よく見ているとそれらが好物だということがわかる。

 渡の嬉しそうな顔を見ると、汚い私がキレイになれる気がした。


「渡、起きてー」

「ん……もう朝か、けほっけほっ」

「あら……? おでこ出して」

「んー……」


 触るときにドキドキしたのは秘密だ。

 一緒に寝てくれるのに、直接触れられるのは嫌みたいでなかなか触らせてもらえないのよね。

 渡のおでこは少し熱っぽかった。


「ちょっと熱があるかも? 今日は一日安静にしていた方が良いわね。朝ごはんは食べられそう?」

「すまんな、食欲がない」

「そう、少し待ってて、食べやすいもの作ってくるから」

「ありがと……」


 渡の為に出来ることがまたできた。

 そのことが少しうれしい。

 今日は1日中渡の側で看病をしよう。

 渡の為に、私が少しでもキレイな私であるために。

お読みいただきありがとうございました。

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