【第11話 じっくりことこと】
第2章最終話になります。
2016年10月15日改稿しました。
全国100億人の読者の皆様こんにちわ!
みんなのアイドル、敷紙☆渡でっす♪
え? 地球の全人口でもそんなにないって?
まー細かいことなんて気にすんなって☆ミ
そんなカリカリしても何にもならないゾっ!
みんな調子はDO-DAI!?
え? 俺? そうねー。
「絶賛混浴中だ」
「何言ってんの?」
「ひとりごとかー?」
なんでこんなことになっているのか。
それは当然呪われた魔導書に囚われたからだ。
恐るべし、魔導書! 侮りがたし、魔導書!
「六根清浄、六根清浄……」
「なにいっとるん?」
「何よ、私たちが不浄なものって言いたいわけ?」
「そういうわけでは……」
ほんと、なんでこんなことになっているのか……。
――15分前のこと
「渡もボーっとしてないで早く行きましょ」
「そやそや、風呂が冷めてまうで!」
魔導書の攻撃!
二人は衝撃波を放った!
クリティカルヒット!
渡は混乱している!
「さっさといくでー」
「ちょっ、まっ、待って」
「まったなっいよ~」
渡は逃げ出した!
「ちょっとどこ行くのよ!」
しかし回り込まれてしまった!
「ほらほら。もう、わがまま言ってないで」
「しかしだな!」
「いつも一緒に入ってるのに何で今日は嫌がるのよ」
「それは……」
俺は思わずアルの方を見る。
アルは一瞬きょとんとした後、少し悲しそうに苦笑いをする。
「もしかしてうちと一緒に入るのが嫌なん?」
「っ……! そんなわけあるかっ!」
「いやいや、遠慮せんでええって。わかっとるから、わかっとるから……な?」
「違うって、むしろ一緒に入りたいと思ってるって!」
「それならかまへんな!」
悲しそうな顔からころっと笑顔になったアル。
はめられた。
俺は天を見上げる。
そこには変わらず三日月があった。
この三日月野郎! ニヤついてんじゃねーぞ!?
俺は天に八つ当たりをしながら引きずられていった。
そして現在。
「南無妙法蓮華経、南無妙法蓮華経……」
「もー、失礼しちゃうわね」
うるさいっ!
俺だって健全な男の子(30)なんだっ!
目の前に年頃の少女をぶら下げられて何も思わないなんて無理なんだよ!!
少し成長した膨らみとその頂点は凄まじい吸引力を発揮している。
吸引力の衰えないただ二つの膨らみ。
ほのかにピンク色をしたその柔らかそうな2つ×二人の塊は俺の心をダークサイドへ誘う。
俺はロリコンじゃない、俺はロリコンじゃない……。
目をつぶって精神統一する。
「いいわ、もう渡なんてほっといてむこう行きましょ」
「あ、まってーな!」
バシャバシャと音がして二人の気配が遠くなる。
「ふぅ……」
悪魔は去った。
相手は魔道書だし年上なのだからそこまで気にしなくてもいいとは思うのだが、それはそれ、これはこれだよなぁ。
年上と言っても二人とも社会経験ほぼ0だし、見た目は……少女から大人に変わり始めてきてるからきついな。
何も生えていなかった大地には薄らと、だが確実に芽生えてきている。
このまま俺の魔力が増えて行けばきっと……。
いや、考えまい……。
「やっと落ち着いて風呂を味わえるな……」
すでに夜の帳が下り、星々が姿を現しはじめている。
風に揺れる蝋燭の火が俺の心を鎮めてくれた。
クレーターの中心にあった間欠泉も今は落ち着いている。
夜空に踊る風、彼が連れて来た紅葉はひらり水面に波紋を広げた。
「酒でも飲むか……」
俺はメニューをいじり日本酒を出す。
盃に流れ星が映った気がした。
「きゅー」
「ん? お前も飲むか?」
なんてな、ウサギが飲むわけがない。
「きゅ!」
「お? お前いける口か?」
「きゅー!」
俺は仲間を得て湯船につかりながら盃を傾けた。
星を飲む、そんな気分に浸りながら。
「曾爺さんは一体何者だったんだろうな」
「きゅ?」
「世界を飛び回り敷紙家を大きくして。そして魔法を集め、魔導書を封じて」
「きゅー」
「やり手だと聞いていたけど、本当にそれだけだったのだろうか」
「きゅー……」
「もしかしたら曾爺さんは……」
「あー! 二人だけで何飲んでんのよ!!」
「ずるいでっ!」
グリとアルが戻ってきた。
仲間外れにされたと少し怒っているようだ。
「なんだ? お前たちもやるか?」
少し気が大きくなった俺はグリとアルにも酒を勧めた。
「飲む飲む!」
「かーっ! 贅沢やなー!」
「つまみも出そう」
何か重要なことを考えていた気がしたが思い出せない。
まぁ思い出せないということは大したことではないのだろう。
俺は怠惰に身を任せることにした。
裸の女を侍らせ、酒を飲みつつ肉をつまむ。
まさに酒池肉林だ。
3人と1匹の酒宴は夜遅くまで続いた。
「ふぇっくち! ……っ!!」
翌日、風邪を引いたことに不思議はなかった。
しかしこの頭痛は風邪の所為なのかそれとも酒の所為なのか。
それは誰にもわからない。
「はい、あーん」
「あちち……」
俺にわかるのはグリの差し出すスプーンに載った卵雑炊の熱さくらいだった。
第2章 完
ここまでお読みいただきましてありがとうございました。
ご指摘、感想、感謝しております。
これより第1章~第2章3話までを皆様の感想を元に改稿する予定です。
第3章は改稿が終了してから作成となりますのでお時間をいただきたく。
未熟な作者ですが見捨てないで頂けると幸いです。