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その胸、魔法では膨らみません ~100LDK幼女憑き~  作者: すぴか
【第2章】ちかをあるけばロリにあう
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【第7話 好敵手】

今日は目の日ですね。

通勤通学中の時間つぶしにでも使っていただければと思いますが

目を傷めないようにご注意くださいませ。

 広間に足を踏み入れた俺は、デカカエルから視線を外さないようにしつつ周囲を確認する。

 広間にはところどころ水たまりがあり、そこからブクブクと泡が立っていた。

 3階層の暑さと湿度の原因はおそらくこいつだろう。

 足元には苔が生しており滑りやすくなっている。

 あまり無理な動きをすると滑ってしまいそうだった。

 グリとアルは入り口から不安そうにこちらを見ている。

 安心しろ、俺は必ず帰る。

 そう思いながらさらに一歩踏み込んだ。


「絶対逃がさ~ん!!」


 バリバーリのトレンチコートを着込み十手を構えたカエルが、そう叫んだかと思うと俺に飛びかかってきた。

 ハンマーで十手をいなし、背中に蹴りを入れる。

 全力で蹴りを入れたのに思ったほど手ごたえがない。

 デカカエルは蹴られた力を利用しバク転をしながら後ろ足で俺を蹴り返してきていた。

 何とかかわすも頬に痛みが走る。

 お互いに距離を取り息を整え見つめ合った。

 

「お前、なかなかやるじゃないか」

「ゲコ」

「……おい、さっきおまえ日本語話してなかったか」

「ゲコッ!? ゲコゲコ!」


 狼狽しながらデカカエルは否定するように手を振った。

 日本語通じてるじゃねえか!!

 俺を馬鹿にしてるのか?


 (そう怒るな。俺とお前とは相いれない敵同士、言葉を交わしては刃も鈍ろう?)


 こ、こいつ頭の中に直接!?


「というか、言葉にしてなくても意思が伝わったら意味がないだろうがっ!!」

「ゲコっ!?」

「今更遅え! この化け物め!!」


 俺はハンマーを硬化し、全力でその巨体を回転させるように脇腹を殴りつける。

 デカカエルは少し体を泳がせたものの耐えきり、振り向きざまにコートの中から手錠を取り出すと手に持ち殴りつけてくる。


「ゲコ(魔物と人間、その違いはなんだ?)」

「だまれ!!」


 俺は悪態をつきながらハンマーを手錠に合わせて叩きつける。

 お互いに弾き返されて距離を取ったかと思うとデカカエルは手錠を投げつけてきた。


「ゲコゲコ(所詮我らは呼び出されては磨り潰される存在)」

「黙れと言っている!!」


 慌ててハンマーで手錠を払い落とすが、デカカエルは手錠の投擲に合わせて突っ込んできていた。

 ハンマーの柄で何とか直撃は避けたものの衝撃が全身を襲う。


「ゲーコ(それ故に我らに意味はなく)」

「ぐっ……!!」


 衝撃で一瞬立ちすくんだ俺の背後にデカカエルは回り込み、回し蹴りを放つ。


「ゲコッ!(それ故に我らに言葉は不要!)」

「くそったれ! こいつのどこがどんくさいんだ!?」

「どんくさいゆーてもそいつデカカエルの中でもエリートらしいで!」

「んなこた聞いてねえ!!」


 外野からの説明に思わず俺は突っ込みを返すがその拍子にバランスを崩してしまった。

 足元が滑り踏ん張りが効かず転倒してしまう。


「ゲコ(終わりだ)」

「しまった!!」


 チャンスと見るや、倒れた俺にデカカエルが大きく跳躍して飛びかかってきた。


「これまでか……、まぁお前ほどの強敵にやられるなら悪くはない、か」


 覚悟を決める俺の頭上を黒い影が過ぎる。


 どっぼーん!


「……」


 振り向くとデカカエルは水溜りの中で茹でられていた。


「……、どんくさい、な……」


 死闘の末のあっけない終焉に俺は脱力するのだった。



 その後10分ほど待ってデカカエルが完全に茹で上がったのを確認すると水溜りから引き上げる。

 本当はそのまま放置したかったのだが、アルがドロップ品があるかもしれないと言い出したのだ。

 それを聞いたグリの反応は推して知るべし。


「しかし、ドロップ品を手に入れると言うと聞こえはいいが、やっていることは死体漁りだよな……」


 俺と死闘を演じた好敵手の哀れな姿に涙を禁じなかった。


「そういえば、渡、カエル好きなの?」

「は? なんでそうなる」

「だって、カエルに向かってずっと話しかけていたじゃない?」

「……」


 しまった……、脳内に直接響く声に返事をしていたがグリ達には聞こえていなかったのか。

 これではただの痛い人ではないか……。

 俺が頭を抱えているとグリが何かを見つけたようだ。


「あら? これって……」


 グリを見ると手の中には拳銃があった。


「こいつ……」


 彼は飛び道具を持ちながらそれを使うことはなかった。

 きっとそれは彼なりの矜持だったのだろう。

 (ハンマー)を交わした俺には分かる。

 彼は正々堂々と戦いたかったのだ。

 魔物であっても、己が磨り潰される宿命にあったとしても、正義を標榜したかったのだ。

 信念を曲げず、最後まで己を貫き通す。

 その生き様に俺は敬意を示さずにはいられなかった。


「この大きさじゃデカカエルは指が入らなかったんじゃないかしら」

「なんでもってたんやろな?」


 俺の感動を返せよ!

ここまで読んでいただきありがとうございました。

感想、ご指摘お待ちしております。

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