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その胸、魔法では膨らみません ~100LDK幼女憑き~  作者: すぴか
【第2章】ちかをあるけばロリにあう
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【第5話 魔法使い】

2章完了まで毎日投稿していきます。

「突貫突貫突貫!!!!!」


 俺は気合を入れてバールを振り回す。


「やめてえええええ!!!」


 アルが悲鳴を上げるが構わず振り回し続ける。


「ズズズズ……」

「きゅ~……」


 グリともふーるはどこからか取り出したお茶を飲んでいた。

 見覚えのあるテーブルは以前俺の背中に衝撃を与えたものとそっくりだ。

 あれ、実体化ってあの世界にあるものをこちらで作ることもできるのか?

 今度他にも試してもらうとしよう。

 お茶やテーブルががどこから出てきたのかも気になるが、もふーるが耳で湯呑を持ち上げているのはどういう原理なんだ。

 耳には筋肉も骨もないだろうに。

 魔法で作られたものにそういうことを聞くのは無粋か。

 一人納得するとさらにバールを振る速度を上げる。


 そのバールによって宙を舞っているのはもちろん魔物などではない。

 賢明な読者ならもうご察しのことだろう。

 そう、迷宮の壁である。

 迷宮作成者に喧嘩を売っている様であるがこれは仕方がなかったのだ。



 話は10分前に遡る。


 魔法で確認したところ2階層は1本道で迷うことはないのだが1m幅の通路が渦巻き状に中心まで続いていた。


「ただの嫌がらせだろこれ」

「そんなんいわれても困るわぁ……」


 魔法で確認した際に少しげんなりしたものの、よく確認すると壁の厚さがかなり薄い。

 ……、これはやるしかないだろう。

 目には目を、歯には歯を、嫌がらせには嫌がらせを。



 そして現在。


 俺は3階への階段まで文字通りまっすぐ進んでいった。

 途中に魔物もいたようだったが、壁ごと粉砕し、宝箱(?)も塵に帰して行く。

 砕け散る迷宮の壁と悲鳴を上げるアル、そして飛び散る何か。


「グリももふーるもお茶なんぞしばいとらんで渡を止めてえやああああ!!!!」

「アル、落ち着いて。気持ちはわかるけどああなった渡に言葉は通じないわ」


 さすが相棒(グリ)、俺のことをよくわかっている。

 最近寒くなってきて引きこもっていて運動不足気味だったしな。

 少しばかり体を動かすのも悪くない。

 アルはいやいやと首を振りながらグリに詰め寄った。


「いいや! わかっとらん! わかっとらんよ! この迷宮はうちの家なんやで!?

 それに壁直すにもポイント必要なんよ!?」


 忘れていた。

 やべぇどうしよう。

 思わず集中が乱れ、バールにかけていた硬化の魔法が切れる。


 バキンッ


「な!?」


 嫌な音と同時に時間がスローモーションで流れはじめた。

 嘘だろオイ……。

 無情にも目の前を通り過ぎる折れたバールの欠片。

 強化された肉体が繰り出す速度と力は尋常ではなく、硬化を施されていないただのバールではその破壊力を受け止めきることができなかったのだ。


 ガンッ

 折れたバールの欠片が後ろの壁に突き刺さる。

 誰にも当たらなかったのは不幸中の幸いか。


「そんな……俺のエクスカリバールが……」

「そんな名前やったんか……」


 止まった俺に少しほっとした様子のアルが近づいてくる。


「まぁ、壊れたものはしゃーないやろ。ほら、あと半分やし残りはちゃんと歩いて行こうや」


 俺の相棒が逝ってしまったというのにその言い方は無いだろう。

 そう思うものの家を壊してしまった手前何も言えず、項垂れた俺の肩をグリが叩いた。


「元気出しなさいよ、私がいるじゃない」

「ああ……、そうだな……」


 グリには悪いがしばらく立ち直れそうにない。

 あいつ(バール)は、俺にとって支えだったのだ。

 これまで運動不足がたたり、少し疲れてきた俺の体重をいい感じに支えてくれていたのだ……。

 俺は座り込み下を見つめる。


「ちょっと、ズボンが汚れてるじゃない。苔の汚れって落ちづらいのに」

「すまん、だが少し休ませてくれ……」

「仕方ないわね……」


 グリはそう言いながらスカートをごそごそし始めたかと思うと、柄の長いハンマーを取り出し渡してきた。


「はいこれ、バールとは少し違うけど渡ならきっと使いこなせるわ」

「こ、これは!? 雷鎚ミョルニール!?」


 この世界を塗り潰さんばかりの漆黒のフォルム。

 全てを否定する重厚な存在感。

 そして頭に刻印されてある10lbの文字。


「ホームセンターで売ってた10ポンドハンマーよ」


 当たり前である。

 早々伝説の武器が出てきてたまるか。


 俺はハンマーを受け取ると地面にハンマーの頭をつけて柄に軽く体重をかけてみる。


「これなら……、これならいける!!」


 ハンマーは俺の体重を絶妙に支えてくれた。

 ニヤリと笑う俺とそれを見て微笑むグリ。


 構えたハンマーに魔力を通すと風が吹き、周囲に砂埃が舞った。


「行くぞ!」

「行かんでええ!!」


 青い顔で叫ぶアルを尻目に、俺は高速でハンマーを振り回して再び迷宮を蹂躙し始めたのだった。

読んでいただきありがとうございました。

感想等頂けると幸いです。

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