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その胸、魔法では膨らみません ~100LDK幼女憑き~  作者: すぴか
【最終章】じごくのさたもロリしだい
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【第4話 時計塔、陥落】

 2017年秋。

 秘密結社界隈に激震が走った。


 時計塔、陥落。

 数百年の長きに渡り難攻不落を誇った秘密結社の本拠地が数人の少女の手によって落とされたのだ。

 もっとも、そこには1人の男がいたらしいのだが存在感が薄く誰も彼の存在を気にしなかった。


 さらに衝撃が追い打ちをかける。

 時計塔本拠地戦において、死者行方不明者がゼロだったのだ。


 無抵抗で降伏したのか?

 そんな話も一瞬浮上したが、ありえないと一笑に付された。


 当然だろう。

 長い歴史を持つ白人の組織が、東洋のイエローモンキーに降伏するなどあってはならない。

 しかしそうすると死者行方不明者ゼロというのはどういうことだろうか。

 圧倒的な力の差がなければそのようなことはありえないだろうに。


 まさか……?

 それこそありえない。

 世界各地の秘密結社からロンドンへ多数の諜報員が派遣される。

 しかし調査に赴いた諜報員はすべて洗脳されてしまい、威力偵察を出せばカウンターで拠点ごと吹き飛ばされる。

 一切の情報が入らぬまま、各地域の秘密結社は孤立を深めていったのだった。



「ロンドン橋落ちた~落ちた~♪」

「橋じゃなくて時計塔だけどね」

「どっちでもいいわ」

「まぁな」


 秋のロンドンをグリと二人で練り歩く。

 久しぶりに2人だけの外出だ。

 アルとクロノはアフタヌーンティーを楽しんでいるし、魔法部の面々はビッグベンを見てくると行ってしまった。

 ……、こういうの死体蹴りっていうんじゃないかな?

 そうでもないか。


 アルの障壁を貫通された一件から各自、自動発動タイプの多重障壁と多重結界の魔法を所持させているから余程のことがない限り大丈夫だろう。

 これで突破されるならどうしようもないともいう。

 さすがに常に全力で障壁と結界張り続けるわけにもいかないし。

 戦闘中もしくは敵地ならともかく、ここは既に俺達の勢力圏内だしね。


 皆元気に働いてくれている。

 おかげで世界各地の諜報員が釣れまくりで情報取り放題だ。


「悪い顔してる」

「んー、そうか?」


 そりゃまぁ、秘密結社界隈の中心地であるロンドンを手中に収めたんだ。

 気分もよくなろうというものだ。


 ある意味世界の半分以上を手に入れたようなものだしな。

 そのせいでいろいろと忙しくなってきてはいるのだが、仕方ないというものだろう。


 ……、あれ?

 俺、高等遊民生活を目指していたはずじゃ……?

 どこで間違った!?

 い、いや、まだ間に合うはずだ。

 誰かに適当に押し付けて俺は隠居するんだ。

 うんうん。


「できるといいわね」

「ん? 何か言ったか?」

「いいえ? 空耳じゃないかしら」

「そうか? っと、寒いな」


 ロンドンの秋風は冷たい。

 空を見上げると雲一つない青空に落ち葉が舞っていた。


 そっとグリが俺に手を出してくる。

 俺はその手を取るとポケットに突っ込んだ。


「暖かいな」

「ぬくぬくね」


 こんな平和な日がいつまでも続けばいいのに。

 そう思わざるを得ない。

 幸せとはこういうことを言うんだろうな。


 しかし幸せは長くは続かないものだ。

 不吉な黒い装束で身を包んだ男が俺達に向かって走ってくる。

 くそ、なぜ居場所がばれた……。


「社長! こんなところに居たんですか!!」

「ぐぬぬぬ……」


 黒装束の男の正体。

 それは俺の秘書だった。


「勝手に抜け出されては困ります!!」

「……、渡……?」

「いや、これはその……」

「仕事、片付いたんじゃなかったの?」


 グリの冷たい目線が俺を責める。

 そんな目で見るなよぅ……。

 俺だってせっかくのロンドンだもの。

 観光したいんだよ?


「えっとだな、一応急を要するものはだな……」

「緊急案件は確かに終わっておりますが、まだまだ急ぎの案件は残っておりますっ!」

「……」


 わかったよ……。

 仕事すればいいんだろう?

 仕事すればさっ!


「後で何かお土産買って行ってあげるから」

「うう……」


 俺はあきらめて秘書に連れられ事務所に戻るのだった。


 事務所に戻った俺を待ち構えるは書類の山、山、山。

 もういっそのことすべて燃やしてしまいたくなるが、そうすると元に戻す仕事が増えてしまうのでそういうわけにもいかない。

 お飾りの盟主だったはずなのに、何故書類仕事をしなくてはいけないのだろうか……。


 先日霧島に愚痴ったところ。


「いや、日本支部の中立派だけなら別に仕事はなかったんだけどね……?」

「つまり何も考えずに暴れまわった俺たちが悪いと……?」

「そういうことだねぇ」


 ということだった。

 自業自得だったのだ。

 ああ、無常……。


 書類に軽く目を通しながらひたすらサインを書いているとグリがお土産を持って帰ってきてくれた。

 お土産は名物、ウナギゼリーである。

 ……、え、マジで?

 これ、食うの……?


「グ、グリさん……? 怒ってらっしゃいますか……?」

「そうね。むしろ怒らない理由を教えてほしいわ」


 デスヨネー。

 デート中に仕事を理由に中座、しかも仕事を途中で放り出したからって理由じゃ……。


「すまん、埋め合わせは必ず……」

「……、ふふ、冗談よ。本当のお土産はこっち。有名なお菓子らしいわ」


 なんだ、冗談か……。

 一瞬目がマジだった気がしたから焦った。


「でも食べ物を粗末にするのはだめよ?」

「ハイ……」


 やっぱり怒ってらっしゃいますね……。

 ぐすん……。

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