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その胸、魔法では膨らみません ~100LDK幼女憑き~  作者: すぴか
【最終章】じごくのさたもロリしだい
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【第3話 時計塔への道】

 キィ……。


 少し古ぼけた扉からその姿にふさわしい音が響く。


 カランコロン……。


 そしてこれまた少しばかり懐かしい音色が響いた。


 カウンターからは店主のけだるげな視線を感じる。


 俺と朱子達は特に気にすることもなく店に一歩踏み入れた。

 そして入って右側、奥から2番目のテーブルに着く。


「ご注文は?」


 席に着くと同時に店主が注文を聞きに来た。


「おすすめのサンドイッチとコーヒーを」

「生憎おすすめのサンドイッチは売り切れでね」

「それならスコーンをもらおうか。ああ、コーヒーに砂糖は要らない」

「すまんな、お詫びと言っては何だが特等席に案内しようか?」

「ぜひとも頼む」

「こっちだ」


 ふう、間違わずに言えた。

 少しドキドキしたぜ。

 それにしても、この符丁って奴はなかなかにめんどくさいもんだな。


 マスターに案内され裏口から外に出る。

 そして隣の建物へ入り地下へと続く階段に足を踏み入れた。

 壁にはランタンが吊るされており、何とか足元が見える程度には照らしてくれている。


 2017年の秋。

 俺達はヨーロッパはロンドンに来ていた。


 目的はただ一つ。

 俺達にちょっかいをかけてくるおバカさん達を黙らせるためだ。

 ヨーロッパ地域での秘密結社の盟主、時計塔。

 彼らも俺達と敵対していた。


 何故そんなことになっているのかはよくわからないのだが……。

 別に俺達から何かしたというわけではない。

 向こうからちょっかいかけてくるのがうざかったから、カウンターを仕掛けた際に少しばかり痛い目にあってもらっただけだというのに。


 現在、アジア、南米、北米地域は俺達の支配下にある。

 1か月と少しでこれだけの地域を支配した俺達に、未だに手を出してくる彼らの考えが理解できない。

 普通少しひかないか?

 というか、逆に友好の手を差し伸べてくれればそれを振り払うことなんてないのにな。


「っと、やっぱそう甘くはいかないか」


 俺の探知魔法に引っかかる反応があった。

 上手く隠しているようだが俺には通用しないよ?

 よくよく見ると店主は少し汗をかいているようだ。

 なるほど、彼も俺達のことを知っているらしい。


「なぁ店主さんや」

「黙ってついてこい」

「そうかい? 先頭を歩いていると待ち伏せてる連中からの攻撃が直撃すると思うんだけどね?」

「なっ!!」

「そう警戒しなさんなって。俺達は別にあんたらを殺しに来たわけじゃないんだからさ」


 そう言って俺は店主に笑顔を投げかけた。


「うるさい! この化け物め!!」


 しかし返事はつれないものだった。


「おいおい、化け物とはひどいな」

「し、知っているぞ!! 冴えない男と美少女の四人組、お前ら東洋の悪魔だろうが!!」

「悪魔って……」

「魔王とその配下が世界を支配しようとしているという情報はとっくに来てるんだよ!」

「魔王……」

「だがそれもここまでだ!! ここまでのこのこついてきた自分達の間抜けさを恨むんだな!!」


 彼の言葉が終わると同時に通路の向こう側で魔力が膨れ上がる。


「おいおい……」

「ははは! ここならば逃げ場はないぞ!」

「……、お前は?」

「俺への攻撃は避けてくれる手はずになってるんだよ!!」

「ふーん……」


 膨れ上がった魔力が炸裂した。

 魔力の暴風がこちらに押し寄せてくる。


「ははは……。ぐああああああ!?!?」

「ほい、そこまでな」


 店主が巻き込まれて飛ばされると同時に障壁を展開し店主を守ってやる。

 さすがにかわいそうだし。

 かと言って最初から守ると逆恨みされそうだからこうするしかなかった。


「痛っ……」

「おーい、大丈夫かー?」


 壁際で突っ伏している店主に声をかける。

 結構な勢いで吹き飛ばされていたからな。

 擦り傷がひどいことになってそうだ。

 尤も、それだけで済んだのなら幸運なのだろうが。


「お、お前何を!?」

「あなたの仲間はあなたごと俺達を吹き飛ばそうとしたんですよ」


 何とか起き上がった店主に、朱子が少しいやそうな顔で事実を告げる。

 そりゃなぁ、仲間に裏切られて捨て駒にされたと告げるのはなかなか心に来るものがあるよな……。


「そんなバカな……」

「あなたは大丈夫と言っていたのでとりあえず最初は私達だけ障壁で覆っていたのですけど……」

「……」

「あなたが攻撃に巻き込まれたのが見えたのであなたも守るように障壁を再展開しました。お分かりいただけまして?」

「そんな……そんな……」


 葵がその先を説明すると店主はうなだれ、頭を抱えてしまった。


「そして追撃の魔法が来てるー」

「さっきより威力が上だね。3割り増しってところかな?」


 とどめを刺すつもりなのだろうが、この程度の魔法では多重障壁の1枚目すら抜くことはできないだろう。

 だからこそ、こうしてのんびり話ができるのだが。


「それで、店主さんよ。あんたこれからどうするよ?」

「どうするって……」

「俺達と敵対してこの障壁の外に出るか、それとも俺達の仲間になって障壁の中にいるか。どっちがいい?」

「障壁の外に出されたら死んでしまうじゃないか!」

「そうだな、だがその原因を作っているのはあんたのお仲間だ」

「っ……」

「悪いが時間がないんでね。すぐに決めてもらおうか」

「……、わかった……。降伏する……」

「そうかい、まぁ悪いようにしないさ。少しばかり協力してもらうだけだからな」


 そう言って俺は手を差し出した。


「悪魔め……」


 彼は恨みがましい目をしながら俺の手を取るのだった。


「悪魔、ね。俺は魔王じゃなかったのかな?」

「知るかよ……。はぁ……」


 項垂れる彼の背中を叩くと俺達は障壁を押し出して通路を進んでいくのだった。

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