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その胸、魔法では膨らみません ~100LDK幼女憑き~  作者: すぴか
【最終章】じごくのさたもロリしだい
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【第1話 暗幕を振り払い】

 ガチャッ、バタンッ。

 迎えに来た時と同じコンビニで車から彩と志保を降ろす。


「次はシルバーウィークにお邪魔しますね!」

「しますー」


 そう言い残し、彩と志保は帰って行った。


「元気でなー」


 俺は遠ざかる彼女達の背中に向けて呟いた。


 ヒグラシの声が秋が近いことを教えてくれる。

 短い秋が過ぎると、長い冬が来る。

 少し憂鬱な気持ちを胸に俺はギアをドライブに入れるのだった。



 少女達の居ない屋敷を静寂が支配している。

 時々うるさいとすら思っていたが、いざ居なくなると少し寂しいものだ。


「何とか無事に乗り切ったな」

「ええ」


 この1か月、毎日のように襲撃があったがすべて撃退した。

 もちろん、葵や朱子、彩、志保には気づかれないように。

 せっかくの夏休みをきな臭い話に巻き込むわけにいかないのでかなり神経を使った。


 撃破しては綺麗にしてお土産を渡して帰ってもらっていたのだが、最後の方は日本人じゃなくなっていた。

 まぁ、おかげで敵対している連中に大きなダメージを与えられたようだが。



「マスター助けてっ!?」

「お師匠様ヘルプ!!」

「ん? 彩と志保か? どうしたんだ?」

「とにかく早くっ!!」

「もう、ダメ……っ!!」


 その日の夜にあった2人からの緊急連絡。

 それにより俺は自分の甘さを痛感することになったのだった。



 深夜の病院。

 蛍光灯が照らすのは愚か者の背中か、それとも勇者の涙か。


「……」

「……」


 病院のベッドの上には彼女達の家族が寝ている。

 外傷はないが、自然に目を覚ますことはないだろう。

 彼女達の家族には、呪いが付与されていたのだから。


「……、すまん……」 


 油断してしまった。

 彼女達は、俺の弟子だ。

 当然敵も彼女達を狙う。


 彼女達だけなら、あるいは何んとなかったかもしれない。

 しかし彼女達の家族は?

 それを失念していた結果が目の前にある。


「マスターは、悪くないです……」

「それでも……」

「お師匠様……、悪いのは、敵……」

「すまん……、巻き込むつもりはなかったんだ……。君達には普通の生活に戻ってもらおうと……」


 自宅を襲撃された際、彼女達は精一杯抵抗したそうだ。

 そのおかげで救援が間に合ったのだが、攻撃手段のない彼女達はひたすら耐えるしかなかった。

 そして彼女達の家族には防御手段すらなかった。

 その結果がこれだ。


「もう、戻れないよ……」

「力が、欲しい……」


 絶望に染まった瞳。

 握りしめた掌は、何かをつかむことはできない。


「……、わかった」


 それでも俺は、いつか時が解決してくれる。

 そう信じて多少の手段を追加で与えることにしたのだった。



 シルバーウィークに入り、また魔法部の合宿が始まった。

 今回は屋敷に宿泊するのではなく遠征だ。


「エアハンマー!!」

「夢幻蜃気楼!」


 気持ちよく晴れた青空に少女達の声が響き、敵の体が舞う。


 彼女達は新たに取得した魔法で敵を薙ぎ払っていた。

 今までは攻撃手段がなかったが、ここ半月の魔法部の練習で攻撃魔法を多少使えるようになっている。

 最も、収束も狙いも大まかで効率がいいとは言えなかったが。


「彩、志保……」

「私たちも行きましょう」


 朱子と葵には彩と志保に降りかかった不幸を教えていない。

 2人が教えるのを嫌がったからだ。

 もっとも、なんとなく察してはいるのだろうが。


「ほい、障壁っと!」

「結界ですっ!」


 アルとクロノの支援を受けながら4人は敵陣へ切り込んでいく。

 防御を気にしなくていい分思いっきり暴れられる。

 ストレス解消にはもってこいだろう。


 戦闘とは言えない、一方的な蹂躙を俺とグリは後方で監視している。


「しかし大丈夫か……?」

「バックアップで私達も待機しているのだし、問題ないでしょ」


 まぁそうなんだけど、そういう意味じゃなくてね?

 それにものすごい勢いで俺の魔力が吸い取られてるんですよ。

 魔力パスをつなげたのはまずかったかなぁ。

 でも彩と志保、そうでもしないと気絶するまで魔力使うし……。

 それを抑えるのが師匠の役割でもあるのだろうが、若干暴走気味の彼女達を俺は上手くコントロールできないでいた。


「しばらく暴れれば落ち着くわよ」

「むぅ……」


 彼女達の家族は、呪いの解呪に手間取り目を覚ますのに3日程かかってしまった。

 そして彼女達はその間、恨み辛みを蓄積させていたのだ。


「爆ぜろ!!」

「眠って……」


 ここも、制圧完了だな。

 しかし、日本の組織をすべて抑えたと思ったら今度は海外とは。

 遠征先で偶然手に入れた所有者不明のあれこれがなければ資金が底をついていたところだ。


「ここまで、だな」


 俺は皆にそう告げる。

 明日から学校が始まるからね、移動時間を考えたらそろそろ撤収しないと。


「ええー……」

「まだ行けますよー、せっかく自家用飛行機手に入れたんですからー」

「それでも、だ。学業に支障を出すことは許しません」

「ちぇー」

「仕方ないー……」

「ほっ……」

「少し疲れましたわ……」


 アジア地域はほぼ全域制圧したというのにまだ物足りないというのか。

 まぁしかたない。

 蹂躙される側の者達には申し訳ないが、先に手を出したのはそっちだ。

 別に命まで奪っているわけじゃないし、諦めてくれ。


「むぅ、んじゃ次はまた来週の土日?」

「次は南米だねー、今月中に制圧したいー」

「お、おぅ……」


 楽しそうに笑う彼女達。

 俺は、何か目覚めさせてはいけないものを目覚めさせてしまったのだろうか……?


 そうだとしても、それのきっかけを作ったのは相手だから仕方ない、よね?

最終章、開幕です。

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