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【第29話 夏休みの朝】

 ノースリーブのシャツに膝上ギリギリのスカート。

 朱子はピンク、葵は水色を基調としたデザインだ。

 そんな夏に相応しい恰好をした美少女二人は今、玄関でなにやら所在なさげにウロウロとしていた。


 うん、わかるよ、その気持ち。

 だから俺は何も言わない。


「ふぁふ……、こんな朝早くに何やっとるん……」

「「!?」」


 だが、俺以外の者にその配慮は無い。


 今はまだ空が白み始めるまであと1時間という時間帯だ。

 流石に起きるのには早すぎる。


 そんな時間になんで俺が起きてたかって?

 プールの最終調整をしてたらこんな時間になっちゃったんだよ!

 あーねみぃ、実質0時間しか寝てないから眠いわー。

 まぁこれから軽く夜食をつまんで寝るんだけど。


「一つもらうでー」

「あ!?」


 っと言う間にアルが俺の夜食のおにぎりを1つ持って行ってしまった。

 まぁいいけどさ。


「あー、気持ちはわからんでもないが、集合は10時だろ? あと6時間くらいあるんだし寝てた方が良いんじゃ」

「「っ!!」」

「な、なんのことですかっ? わ、私はちょっと目が覚めたので外の空気を吸ってこようかと思っただけですわっ!」

「そ、そうです! 私もたまたま目が覚めてっ!」

「うんうん、そうか。それじゃ空気吸ったらまた部屋に戻って寝るんだぞ? 今日は忙しくなるだろうからな、途中で力尽きたらもったいないぞ?」

「う……」

「分かりましたわ……」


 そう言うと二人は素直に自室に戻って行った。

 外で空気を吸うのはやめたらしい。



「あっさやでー!」

「朝ですー!」


 今日も元気のいい2人に起こされる。

 時計を見ると8時を回っていた。

 いつもなら7時には起こされるのに、気を使ってくれたらしい。


「朱子達が夜中起きとったからな、朝を少し遅らしたんや」


 ……。

 別に俺に気を使ったとは言ってないし!


「そうか、ありがとうな」

「いいってことですよ!」


 無い胸を逸らしながらクロノが自慢げに言う。

 撫でるぞ、そのまな板。


「さっ! 早くいくです!」


 カーテンは既にあけられており、そこから朝日が射し込んでくる。

 雲一つない青空、今日も暑くなりそうだ。

 蝉の声を聴きながら、2人に連れられて俺はリビングへ向かった。


 全館冷房を効かしている廊下にはリビングから味噌汁の匂いが漂ってくる。

 今日の味噌汁は何だろうか。

 昨日の夜はそうめん懐石だったし、その残りを味噌汁に使ってるかもしれない。

 俺、結構好きなんだよね。

 そうめんの味噌汁。


 扉を開け、テーブルを見るとそこには朱子と葵が突っ伏していた。


「「うぅ……」」


 夜遅くに起きたせいで眠いらしい。

 何とか起きているが、これ朝ごはん食べ終わったら一度寝かした方が良いかもなぁ。


「はいはい、しゃんとして」

「「はぁい……」」


 グリとアルが料理を運んでくる。

 味噌汁の匂いが示す通り、今日の朝ごはんは和食だ。

 焼き魚、玉子焼き、佃煮、酢の物、和え物、漬物、そして味噌汁。

 いつもならこれに納豆と海苔が付くのだが今日はついていない。

 どうしたのだろうか。


「一応、乙女への配慮って奴やな」


 俺が疑問に思ったのを感じ取ったのだろう。

 アルがそう言った。

 ああ、そういうことか。

 確かに初めて友人が自宅を訪問するのに、納豆臭かったり歯に海苔が付いてたりするのは頂けないもんな。

 食べ物なのに頂けないとはこれいかに。

 なんちって。


「「いただきます……」」


 葵と朱子はぐったりしつつも何とか箸を持ち食を進める。

 う~む……。


「はい、お茶。濃く淹れてるから少しは目が覚めると思うわ」

「ありがとうございます……っ!」

「助かります……にがっ!」


 2人はお茶に口を付けるとしかめっ面をした。

 うん、ものすごく濃そうなお茶だもんね。

 緑を通り越してる。


「あ、でも目が覚めたかも」

「ですね、ありがとうございます」

「どういたしまして。さ、早く食べましょ」

「「は~い!!」」


 今度は元気に返事をした2人であった。



「もうすぐかな……」

「はい……」


 そう言いながら玄関でそわそわしている2人を見て、2人が大切なことを忘れていることに気が付いた。


「あ~……大変申し上げにくいのだが……」

「え?」

「なんでしょうか?」

「山岡さんと前田さんな」

「は、はい……」

「何かあったのですか……?」

「俺が迎えに行ってあげなきゃいけないんだわ」

「え?」

「あっ」


 そりゃそうだ。

 車で5分ちょっとと言っても山道で3~4kmだ。

 自転車で、しかも泊まりの荷物も持ってとなるとちょっと大変だからな。

 迎えに行くことになっていたのだが……。

 2人はLineToolを見てなかったのか?

 いや、既読は付いていたから頭からすっぽ抜けていたのだろう。


「んじゃ、迎えに行ってくるから。10時くらいに戻ってくるからよろしく」

「行ってらっしゃいませ」


 市野谷さんに見送られ、俺達は屋敷を出発した。

 荷物の積みこみとかを考えても30分程度で帰ってこれるだろう。

 合宿、楽しんでくれるといいのだが。


 あ、ちなみに合宿と言っているけど正規の合宿じゃないからね。

 流石に魔法部での合宿って何するのよ?ってなって申請が通らないし、顧問がやる気ないらしくてそういうのは無理らしい。

 そういうわけで親御さん達には友達の家に泊まりに行くとだけ話してあるそうだ。

 うん、なんかいけないことをしている気がしないでもないが今更なのでスルーするとしよう。


 あー、今年の夏はどんな夏になるのかなっ!

 楽しみだぜっ!

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