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その胸、魔法では膨らみません ~100LDK幼女憑き~  作者: すぴか
【第1章】もらいものにはロリきたる
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【第10話 真実はアジの味噌煮に敵わない】

2016年10月15日改稿しました。

「終わったね」

「そうだな」


 魔導書、グリモワール。

 彼女に収められ、そして逃げ出した魔法、全22種を無事にすべて捕らえることができた。

 1年という期限が与えられていたが、それも大きく前倒ししての達成。

 1年間この屋敷で生活しなければいけない件も、元々の怪異騒動の原因を抑えたため問題ない。

 契約は成されたのだ。


「渡、あの、あのね」


 グリが怯えたように話しかけてくる。

 一体なんだというのだろうか。

 そんなに俺の魔法が怖かったのか?


「私、渡に大事なことを話していないの……。まだ魔法を捕まえるのに時間がかかると思ってたから……。ごめんなさい……」

「ん? いや、別に気にしなくていいと思うぞ。もう問題は何もないだろ?」

「違う、違うの……」


 そういって彼女は首を振った。


「私、渡を騙しているのは、嫌だから、だから、話を聞いてほしいの。

たとえ渡が私のことを嫌いになっちゃったとしても、最後まで渡を騙すのは、私は、嫌……」


 そう言って彼女は語り始めた。


「本当はね、私の中に魔法が収められていたのではなく、魔法は世界に混沌をばら撒こうとする私を封印するためのものだったのよ。

 おかしいと思わなかった?

 曾御爺さんが世界を回ってる最中に珍しい話を集めていただけのはずなのに魔法の種類に全く偏りがなかったでしょ?

 私を封印するために各属性の魔法が網羅されていたのよ。

 それでね、私は私を封印する魔法の記憶を少しずつ改竄して、私を封印するっていう役割を忘れさせていったの。

 探知、会話、実体化、捕縛の4種の魔法は最後まで抵抗していたけど、私の所有者が出来た時に隙ができたからその時に傀儡にしたわ。

 ただ、漸くすべての魔法の封印が解けたと思って気を抜いたとき、他の18種の魔法に私の力と記憶をもって逃げられちゃって。

 役割は忘れても、私に対する敵意は残ってたみたいでさ。

 ふふ、ほんとドジふんじゃったわ。

 さらに間抜けなことに記憶を失った私も魔法に対する敵意は残ってて。

 そのまま魔法を放置してれば私の希は叶ったのに、必死になって捕まえようとしちゃって……。

 ほんと、バカだよね私……。

 それでね、もっと言うとね、魔法を最初に捕まえたときに記憶は戻ってたのよ。

 でも、渡との時間が楽しくて、ずっと言い出せなかったの……。

 だって怖かったの!

 最初に私の中の世界に引きずり込んだ時、私は渡の魂を凍結するつもりだったの。

 自分の都合のいい所有者を作れば、もっと自由に動き回って、私を無視した世界に、私を一人にした世界に復讐できるって!

 それなのに、自分勝手に、復讐はやめたから水に流してなんて言えなかった。

 渡が魔法の鍛錬を始めた時、少し怖かった。

 魔法との意志疎通ができるようになったらどうしようって。

 私が傀儡にしていた魔法と捕まえた魔法で使い方が違うのに気が付かれたらどうしようって。

 意志疎通ができないってわかって安心した。

 これでいくらでも誤魔化せれるって。

 汚いよね、軽蔑されても仕方ないと思う。

 だってそれだけのことをしてきたんだもの。

 渡、今まで騙してきてごめんなさい。

 許してくれなんて言いません。

 許されるなんて思いません。

 でも、私は渡に嘘をついたままでいたくなかった……。

 色々と都合のいいことばかり言って信じられないかもしれないけど、それだけは信じてください……」


 そういうと彼女は俯いてしまった。

 1つ、2つ、零れ落ちる雫に夕日が煌めいた。


「そうか、わかった。それじゃダイニングに行って晩ご飯にしよう」


 俺はそう言ってバールを手に持った。

 グリの気持ちは分かった。

 だが俺にとって、今まで騙そうとしていただとか、利用しようとしていただとかはあまり問題ではなかったのだ。

 魂を凍結しようとしていたというのは少し驚いたが。


「へ……?」

「今日は日替わり弁当のおかずが初めて変わったからな。なんとアジの味噌煮だそうだ」

「サバからアジに変わっても大して変わらない……ってそうじゃなくて!」

「なんだよ? から揚げ弁当の方がよかったか?」

「違う! ちゃんと私の話聞いてた!?」

「ん、ああ、聞いてた聞いてた」

「まじめにっ!!」


 グリが眉を吊り上げる。

 俺はやれやれと首を振りながら少ししゃがんでグリに視線を合わせる。


「グリは悪い魔導書で俺を騙して利用しようとしたけどやっぱりやめた。そうだろ?」

「う、うん、そうだけど……」

「契約は成された、だからもう関係ないとでも思ってるのか?」

「え? だって……、それに私の本当の姿、ぼんっきゅっぼんでもないし……」


 本当にこいつは、ポンコツだ。

 ここまで付き合ってきて、俺のことを何も理解していないようだ。

 いや、罪悪感が先走って混乱しているのかもしれないな。


「グリ、お前は俺の所有物だ。所有物が勝手にどこかに行こうとしてるんじゃない」

「……」

「俺の隣がお前の居場所。お前は以前そう言っていたな?」

「言ったけど……良いの……?」

「言った事は守れ、それだけだ」

「渡……渡ううううう!!!」

「ええい、くっつくな! 歩きづらい!」

「私の居場所はここだもん!ここにいるんだもん!!!」

「ああもう、好きにしろよ……」

「ずっとそばにいる! もうどんなことがあっても離さない!!」

「そばとうどんを使って例文を作りなさいってか」

「太く長~く付き合って行こうね!」


第一章 完

第1章(?)終わりになります。

第2章が書けたらいいなぁ。


ここまでお読みくださった皆様、ありがとうございました。

正直アクセス0とかあるかなーと思っていたので評価までいただくことができるとは思っていませんでした。(正直ビビっております)

また機会がありましたら私の駄文で時間を潰していただけたらと思います。

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