プロローグその2
俺は窓越しに【ウィネ】を見ていた。【俺】と同じ部屋の造りで、【ウィネ】はベットに震えながら体育座りをして、爪をかじっていた。髪は淡い緑色でまだ幼い顔に似合わず、目の下にはくまができていた。
「【ウィネ】君が【第一号】の【能力者】なんだ。しかし、彼は心を開いてくれなかった。それに彼は何かに怯えているんだ。」
「えぇ。わかります。心を読みましたからね。【ウィネ】が何に怯えているのかが、【俺】にはわかります。・・・それじゃ、行きましょうか。」
「大丈夫なのか?それに【ウィネ】の【能力】は【僕】は知らないんだぞ。見た事がなかったから・・・」
「大丈夫です。なんとかなります。」
【俺】は【シーナ】からIDカードを借りると、扉の差込み口に入れた。【ピピッ】と機械的な音を発てて、扉が開いた。【俺】が中に入った時、【ウィネ】は【俺】を見ていた。それはそうだ。【俺】と【ウィネ】は全く同じ服を来ているのだ。研究員の白衣しか見た事がない【ウィネ】にとって【俺】の【服装】は【ウィネ】の【心】をほんの少しだけ変わらせる事が出来た。なんとも単純だが、それがいいのだ。【ウィネ】の【心】を和らげるには丁度よいのだ。
◆◇◆
【僕】はどうして、【生まれて来たのかな?】あの【研究員】は【生きる為だ】って言ってたけど、何故【生きなくちゃいけないの?】【僕】は怖いんだ。毎日毎日、同じ部屋に閉じ込められて、毎日毎日、同じ検査をさせられて、【僕】は一体何故【存在】しているのか、わからない。毎日が怖い。意味もなく【僕】は爪をかじり、毎日を過ごしていた。それに、【僕】以外の人達は一体どうなったの?【研究員】の人はその事を話さなかったけど、【生きているの?】。【僕】は只、知りたいだけなんだ。【生きる】の【意味】を知りたいだけなんだ。それさえ、わかれば【僕】は何もいらないんだ。
その時、【僕】の部屋の扉が開いた。
また、検査か・・・と【僕】は思い、扉を見た。入って来たのは、【僕】が知っている研究員の人だ。だけど、もう一人は顔が白く、【僕】と同じ服を着た人だった。【僕】は【知ったんだ】。【僕】は【一人じゃない】てことを。少しだけ【僕】は楽になったかもしれない。その人は【僕】の顔をまじまじと見ると、【僕】にこう言った。
♪
「寂しかったろう。」
その人の言葉は【僕】の心臓辺りに響いていった。
その言葉で【僕】の【心】はまた和らいだ。
【寂しい】という言葉の意味を知らない【僕】にとってその言葉は新鮮で、始めて聞いくその言葉に【僕】は色々な感情が込み上げて来た。その人は自分を【アガレス】と名乗り、扉に寄り掛かっている研究員を【シーナ】と読んでいた。【アガレス】は【僕】を【ウィネ】と呼び、その言葉は【名前】と言い、【俺達が存在する確かな証拠。】と言った。
「【証拠】って・・・なに?」
いつの間にか【僕】は爪をかじるのを止めて、【アガレス】の言葉を夢中になって聞いていた。
【僕】が何気なく考えていた【気持ち】には、【言葉】と【意味】があり、【生きている】。それが【証拠】だ。と【アガレス】は言った。【僕】は最初、【アガレス】が言っている【意味】がわからなかった。しかし言葉が【生きている】と言う事は【僕】自身【生きている】。だから、それが【僕】が【生きている証拠】になる事が少なからずわかった。また【心】が和らいだ。そして【アガレス】は【シーナ】を呼んだ。【シーナ】が【アガレス】の隣り来ると【アガレス】はこう言った。
「俺も最初、【言葉】の【意味】を知らなかったんだ。だけど、【シーナ】に出会って様々な【言葉】を教えてもらったんだ。」
知らなかった。【アガレス】も【僕】と同じように最初は【意味】を知らなかったのだ。もしかしたら【アガレス】も【生きる意味】を最初は知らなかったのではないのか。【僕】はそう思った。
「そう。【俺】も・・・もしかしたら【ウィネ】と同じように【生きる意味】を知らないかもしれないな。」
【アガレス】はまるで【僕】の【考えている事がわかっている】のかそう言った。
「だけど【生きる意味】を知るには、【俺】と【ウィネ】はまだ【若すぎる】。だから【ウィネ】、今は少しだけで良いんだ。【俺】が思うに【生きる意味】は【知る】んじゃなくて、【体験】する事だと思んだ。【ウィネ】は今、どんな事を【体験】したい?」
【アガレス】は【僕】の顔をジッと見つめていた。【僕】は考えていが、何も浮かばなかった。【アガレス】の【言葉の意味】はなんとか理解出来るんだ。只、【僕】自身【何を体験したいのか】わからなかった。不意に【シーナ】は【アガレス】にこう言った。
「他の研究員はいいとして、警備兵・・・お前がいない事に気付くんじゃないのか?」
「大丈夫ですよ。警備兵はこの施設で【何をしているのか】全く知らないんです。だから、【俺】が部屋に居なくても警備兵は研究員に連れて行かれたと思うだけです。彼らは【傭兵】みたいなものですからね。」
「そうなのか。それは【知らなかった】」
「【シーナ】にも【知らない事】があるんですね。」
「【僕】だって、【知らない事】だってあるよ。【世界】の全てを知らないようにね。」
【僕】は二人の会話を聞いてある事を思った。この二人は【僕】がこの部屋から出た事がないのに、二人は【僕】の知らない場所を知っている。それに、二人はまだ【知らない事】があるかもしれない。それに【世界】って何?【シーナ】の話を聞いていれば【世界】はもしかしたら【偉大】な物かもしれない。【僕】は【僕の知らない事】【生きる意味】そして【世界】を知りたいのだ。
「【僕】も知りたい・・・【僕の知らない事】【生きる意味】・・・【世界】を知りたい。だから、この部屋から出て、二人と同じ所に行きたい。」
【アガレス】は唇を吊り上がらせた。この【行為】を【僕】は【知らない】。だから【知りたい】。
「【世界】は【知る】よりも【見て感じる】のが一番良いんだ。・・・【見る】とか【感じる】の【意味】を知らないかもしれないが、それは【シーナ】から教えてもらってくれ。【俺】も大体な事しか知らないからな。」
「【アガレス】。俺も大体な事しか知らないぞ?」
「それだけで良いんです。そこからは自分で【考えるしかない】・・・ところで【ウィネ】。どうして、【ウィネ】の【考えている事がわかるか】知っているか?」
【アガレス】の説明によると【アガレス】は他人の【考えている事】がわかるらしい。そして、【僕】にもその【能力】があるらしいのだが、【僕】は自分の【能力】には気付いていなかった。
「わからないよ・・・【僕】が【能力者】だなんて始めて聞いた・・・」
「【ウィネ】。君は知らないかもしれないが、【俺達】は【人間】と言ってね、【人間】には【自己防衛】って言う【能力】を最初から持っているんだ。そして・・・」
説明をしながら、【アガレス】が【僕】の方に近付いて来た。そして、いきよいよく拳を振りかざし【殴って】来たのだ。【僕】は何も出来ずにその拳を見ていた。徐々に近付いて来る拳に【僕】はある【感情】を【覚えた】。そして、拳が【僕】の顔面を捕らえようとした時、鈍い音がして【アガレス】の表情が崩れた。
「【アガレス】!大丈夫か?」
【シーナ】が心配そうに【アガレス】に近付いて行った。【アガレス】は表情を歪ませながら、【僕】の目を見た。
「わかるか?【ウィネ】。それが君の【能力】だ。君の頬を触ってみろ。」
【僕】は【アガレス】に殴られた所を触った。そこだけ、【冷たく】【固かった】。その【冷たさ】は【僕】が感じた事ない【冷たさ】だった。
「これは・・・【僕】の【能力】?凄く【冷たいよ】。それに【固い】。」
「【冷たい】と【固い】の【意味】はわかるんだな。そう、それが【ウィネ】の【能力】だ。それは【氷】と言ってな、水という液体が固って出来る固体なんだ。【ウィネ】からでは見る事が出来ないが、【俺】から見ると、【氷】の壁が【ウィネ】の頬を分厚く覆っているぞ。」
【アガレス】は殴った拳をかばいながら、そう説明した。【僕】の能力が【アガレス】の拳から守ってくれたんのかな?なら、何故【アガレス】は僕を【殴った】のかな?
「【ウィネ】が【能力】を使う事が出来たのは、【俺達】が最初から備わっている【自己防衛】が【ウィネ】の【能力】として使われたからだ。・・・後の事は【シーナ】から聞いてくれ。【シーナ】。研究員が近付いて来る。隠れるぞ。」
そう言うと、二人は急いで窓ガラスの影に隠れた。何故、そんな行動をしたのか【僕】はわからなかった
「・・・行ったか?【アガレス】」
「・・・・はい。もう大丈夫です。【心の声】が遠ざかって行きます。」
二人が元の位置に戻って来たので、【僕】は質問をした。【あの行動の意味】を知りたかったのだ。【アガレス】の説明によると【シーナ】は【僕達】を自由にする為に、【革命】という【行動】を起こそうとしていた。しかし、それには【仲間】と言う物が必要らしい。【僕】は思った。【僕】も【自由】と言う【行動】をしていいのか思った。
「【ウィネ】。君にも【自由】になる【権利】があるんだ。だから【ウィネ】、君も【俺達】の仲間になって欲しい。【ウィネ】の知りたがっている事を【自由】になればわかるかもしれない。」
その言葉の【意味】の殆どを【僕】は知らない。だけど【アガレス】。僕はもう【決めているよ】。【僕】は【世界】も【生きる意味】も【言葉】も全て知りたい。だから、二人に付いて行きたい。そうすれば【僕】は知る事ができるんだ。
「そうか・・・ならこれから【俺達】は【仲間】だ。よろしく。」
【アガレス】は【僕】に手を差し伸べた。その行動を【僕】は知らないが、【アガレス】が教えてくれた。それは【握手】と言って、【挨拶】をするのに欠かせない【行動】らしい。【僕】も【アガレス】と同じように、手を出して握った。まだ赤く腫れていた【アガレス】の手は【僕】の【能力】とは全く違った感触がした。
♪♪
「【僕】も行って良いですか?」
【俺】と【シーナ】が次の部屋に行こうとした時、【ウィネ】が付いて行きたいて言って来た。【俺】はその申し出てを快く承諾した。【ウィネ】はベットから降りると、【俺達】に近付いて来た。【ウィネ】の身長は【俺】よりも低く、幼さい顔がとても愛くるしかった。それに、【ウィネ】はもう爪をかじっていなかった。寂しがり、自分を【戒める】事をしなくなった【ウィネ】は変わったのだ。
【俺】は警戒しながら、扉を開けると廊下に出た。始めて見る【部屋の外の世界】を見て、【ウィネ】はキョロキョロと辺りを見ていた。扉が締まると、【シーナ】はその扉に何かをはめた。それは他の研究員に伝える為の、印だ。【シーナ】は研究員達に【僕自身で調べたい事があるから、この印が付いている能力者は僕の部屋にいる】という印なのだ。それをはめて、【俺達】は次の【能力者】に会いに行こうとした。その時、廊下の奥から凄まじい爆発音が聞こえ、揺れた。【俺達】はその揺れに耐えるように壁に手を付けていた。廊下の灯が消えたと思うと、赤く、まるで何かに【警戒】するような灯が照らされていた。
「【シーナ】さん!これは一体!」
「わからない。だが、何か【悪い事】が起こりそうだ。」
「待ってください!・・・いけない。【シーナ】さん!研究員やら警備兵がこっちを通ります。ひとまず部屋の中で隠れましょ。」
【俺達】は急いで、部屋のロックを外すとなだれ込むように入り隠れた。数秒後、部屋の前の廊下を研究員やら警備兵やらが、慌ただしく走っていた。【俺】と【シーナ】は黙って窓ガラスの影に隠れて、【ウィネ】にはベットに行かせて、部屋の中には【ウィネ】一人だけに見せた。【ウィネ】は不安げに【俺達】を見ていた。
「【アガレス】。皆、なんて言ってんだ?」
「待ってください【シーナ】さん。今、聞いていますから・・・」
【俺】は研究員の【心】を読み取ろうとしたが、一緒に警備兵の【心】を読み取ってしまうので、手間取った。殆どの人は【何が起きたのか】全く理解していなかったが、【一人だけ】重大な事を【心の中】で考えていた。俺はその一人に集中して【能力】を使い、読み取る事が出来た。
「【シーナ】さん。【第五研究室】で何かあったらしいですよ?」
「第五研究室・・有り得ない、そこはもう使われていないんだ。・・・行ってくる。」
【シーナ】が立ち上がろうとしたので、【俺】は【シーナ】の袖を掴み、止めた。
「駄目です。心を読んでわかったんですが、【ただならぬ雰囲気】がありました。今、【シーナ】さんが【いなくなれば】どうするんですか?」
「だ、だが・・・」
「今、この部屋を出ると、怪しまれますよ?【あっち】から見れば、【シーナ】さんが突然この部屋から現れるんです。わかりますよね?この窓ガラスはこの部屋から見ると【鏡】ですが、【あっち】からは【部屋の中を確認する事ができます】。だから、【今、出るのはまずいんです】。」
「なら・・・どうするんだ?」
「研究員と警備兵がまだ廊下にいます。少なくなったら行きましょ。【俺】も興味があります。その【第五研究室】に【俺達】も行きたい。ついでに、残りの【能力者】にも会いに行きましょ。」
【俺】は知りたかった。この研究室の全てを知りたい。それは【ウィネ】も同じだった。【俺】が【ウィネ】の方を見ると、【ウィネ】の【心の声】がわかった。【ウィネ】も行きたがっていた。
♪♪♪
突然の爆発音に【俺】は驚いた。
【俺】は自分の部屋で仮眠を取ろうとしていたのだが、その時、あの爆発音が聞こえて来たのだ。【俺】は驚き、立ち上がろうとした時に今度は、大きな揺れが【俺】を襲った。【俺】はよろめきベットに横たわると、今度は机の上に置かれてあった資料が床に落ち、パソコンが床に鈍い音を発てて落ちた。そして、揺れがおさまると俺は急いで、パソコンを持ち、起動させようとしたが、起動しなかった。
「くそ!・・・何なんだあの揺れは・・」
今度は【俺】の携帯電話が鳴った。【俺】は携帯を手に取り、画面を見た。画面には、助手の名前が表情されていて【俺】はすぐに携帯のスイッチを入れると、耳にあてた。
「どうした、何があった。」
「大変です!【アモン】教授。【第五研究室】で、【試験体】が突然、暴れ出したんです!」
「何!・・・わかった、すぐに行く。お前は警備兵に連絡しろ・・・殺しても構わない。」
【俺】は携帯をきると、急いで部屋を出た。廊下では、研究員と警備兵が慌ただしく走っていた。【俺】も急いで、【第五研究室】に向った。出来れば、アイツにはこの騒ぎで、鉢合わせにならないようにしたい。【シーナ】にだけは、知られてはいけないのだ。【第五研究室】の事に気付かれてはいけない。【俺】は【能力者がいる部屋】を抜けると、エレベーターに乗り、【第五研究室】に向った。
◆◇◆
「少しおさまりましたね。それでは、行きましょか。」
【俺】は辺りを警戒しながら、扉を開いた。【俺】と【シーナ】と【ウィネ】の順番に廊下を出た。誰もいない廊下は静かで、不気味だ。
「【シーナ】さん。【第五研究室】の場所はわかりますか?」
「あぁ、こっちだ。」
【シーナ】を先頭に【俺達】は【第五研究室】がある場所に向った。他の【能力者】は後で会いに行こう。今は、【第五研究室】に【向かいたかった】。