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7月28日。今日も暑い日が続いている。
東北の梅雨明けが宣言され,街は夏を迎えたうきうきとした雰囲気で溢れている。
特に子どもたちは,夏休みを迎えて笑顔満点。
スタジアムの様子を思い出し,一人で頷いた。素晴らしい笑顔がスタンドの至るところに見えたのだ。それなのに…
10時からの練習に向かっていた菅原は,信号で止まった車の中から,歩く子どもたちを見ていた。ブルーレ仙台の練習場は,街の中心から外れた,閑静な住宅地の中にある。仙台の中でも洒落た町並みに,天然芝と人工芝のピッチが一面ずつ。いい具合に周囲の森にとけ込んでいるグラウンドに,菅原は向かっていた。
7月27日。雨の中,ブルーレ仙台は,杜の都に乗り込んできた柏レイクスに完敗した。0−3。怒号が飛び交うスタジアムは,選手にとって本当につらい。菅原は先発するも,後半20分に交代。ボールが足に付かず,3度あった決定機をものにできない。監督の判断は妥当だった。
オレンジのレプリカユニフォームを着た子どもたちは,この無様な姿を見て,どう思ったのだろう?
菅原は,交代ボードに光る「11」の光を見ると,下を向いてピッチの外へと出た。