ネトゲ廃人に現実(リアル)は必要ない
2024年
日本でサービスが開始されたネットゲーム、
ジャンルは、MMORPG、
舞台はあらゆる年代が一点に凝縮された世界、
キャラクターは、なんと30を超える種族と100を超える役職が選択できる。
もちろん転職可能、
バトルシステムは、完全なスキル制、
熟練度が物を言う。
だがこのゲームの見所はそんなことじゃない。
このゲームに設定してあるあらゆる剣技、魔法、射撃、拳法といった技のコマンドが10000を超える正に画期的なネトゲなのだ。
コマンドは、奥義になると10を超える数を打たなければならないため、
入力スピードで戦いの優劣が決まる。
ちなみに、キャラクターの基本性能はレベルこそないが、強化することは可能だ。
これほどのネットゲームは、過去には存在しなかった。
サービスが開始されてすぐに登録者は一万を超えて、
今では世界中で遊ばれている。
いわば、見えないもう一つの現実、
自らの力で生き抜く世界、
その名は、
「カオス・オンライン」
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季節は春、
清々しい朝を迎えて、私は目を覚ました。
名前は、小春
高校一年生の女子です。
といっても私は今学校に行ってません。
当たり前です、春休みなのですから、
今日はその一日目、
早速私は、春休み気分を満喫しますか。
で何すればいいのかな?
カーテンを開ければそこは、
暴風と雨が降っている。
TVをつける。
あれ?つかない
「あれ!?コンセントは!?」
テレビの配線が取れてる。
しかも無くなってしまったようだ。
これではすることがない。
何をすれば…………
「ネットで探してみるか…」
早速スマホを取り出し、『家で出来る暇つぶし』と調べてみた。
すると、
「ネットゲーム?」
一番上にネットゲームとかいてあるたぐを見つけた。
ネットゲームって………ゲームだよね
そんなんなら家にあるし、わざわざネットでしなくとも………
「まぁ、見るだけ見てみるか」
そのタグをクリックして内容を読んでみた。
「なになにー?ネットゲームってネットを通じて、他の人とやり取りしながら出来るんだ!!」
初めて知った。
ってことは、離れている人と話すこともできるってことよね!!
なんか興味が湧いてきた。
「早速やってみようかな〜」
ネットゲームと調べて、人気なものを探してみる。
すると、
ネットゲームの人気上位のほとんどがMMORPGというジャンルで固まっていた。
そしてその中で一番人気だったのが、
「カオス・オンライン?」
そう書かれたゲーム名の人気投票数は5万を超えていた。
すごい!
説明を読むと、
「あらゆる年代や世界を一点に凝縮したこの世界で新たな仲間と共に戦おう…ね〜」
かなり大きな舞台のように感じられた。
それに説明から読み取ると戦いを主体とするゲームのようである。
あまりそういうのは得意ではないのだが、
「まぁ、どうせ春休みの間だけだし……いっか!」
私はカオス・オンラインをクリックしてホームページへ飛んだ。
そして会員登録とかいてあるところをクリックして、ページに移る。
「えーと、この登録には性別の偽りを防ぐため、個人証明書の番号をお打ちくださいって…………まぁいいか!」
ためらいなく、番号を打ち込んだ。
すると、アバターは当然の如く女の子が現れて、名前をお打ちくださいと書いてある。
「偽名の方がいいよね?」
私は、空欄に『ハル』と打ち込んだ。
つぎに、種族だ。
ここで私は、とても迷った。
なぜなら三十を超える種族が存在していたからである。
「可愛いのがいいなー、うーん」
スクロールさせていき、最後らへんにいいのを見つけた。
「『獣人』かー、よしこれにしよう!!」
私は、動物の耳を持つ『獣人』という種族にした。
「次は職業かー」
これまたすごい、
獣人がなれる職業は五十を軽く超えていた。
またここで悩んだ。
「そうだなー、あまり操作が難しくないやつ………」
スクロールさせていくと、はたまた下の方に
「『ビーストテイマー』?」
聞いたことない言葉に少し興味を持ったので、説明を見てみる。
「『魔物や獣などゲーム内の生き物を使役して戦う職業』かー、なんかいいなー」
あっちに、猫とか犬とかいたら最高だなーー
私は迷わず『ビーストテイマー』に決めた。
あとアバターの容姿や顔、髪の色とかインナーの色とかがあったけど、
おまかせで済ませた。
アバターが完成した。
これで遊べる。
私は『ハル』というアバターでカオス・オンラインにログインしたのだった。
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雨と風の音、
おかしいなー、雨は降ってなかったはずだが………
「寝ちまってたか……」
白髪の少年はゆっくり体を起こす。
俺の名は『龍』
またの名を『ジーク』
『ジーク』は今俺がプレイしているネトゲ、
『カオス・オンライン』のアバターの名前である。
種族 人間
ステータスは
体力 15000
攻撃 3500+2000
防御 1000
敏捷 8000
腕力 2000
運気 100
片手剣熟練度 コンプ
盾熟練度25000/50000
索敵スキル熟練度 コンプ
敏捷up コンプ
ブースト熟練度 コンプ
と言ったところだ。
そう俺は、廃人プレイヤー
昨日も夜遅くまで、バトルスキルの熟練度を上げていた。
課金は、20000ほどしたことがある。
これでも廃人プレイヤーの中では少ないほうだ。
だがそれでも俺は幸運に恵まれていたため、その世界の上位プレイヤーとして名を連ねている。
ちなみに、俺のアバターの容姿は
銀髪に少し長めの髪型で
紫のロングコートの下に胸当て、
細めの黒いズボンを履いていて、
そして背中には俺の相棒『バルミール』が存在している。
盾は昨日のボス戦で、耐久力をめちゃくちゃ落とすブレスを受けて
消滅した。
結構レアなアイテムだったが、さほどがっかりはしていない。
もとよりあまり防御しない主義だったからな
それより他の廃人プレイヤーは超レアなアイテムを消滅させられて、泣き叫んでいた。
まぁ仕方が無い。
さてログインして俺は『王都セントラル』に到着した。
まぁ特に理由はないが、
しばらく歩いていると、
挙動不審に動く女のアバターがいた。
「何やってんだコイツ」
壁にぶつかり、逆方向に移動したかと思えばまた壁にぶつかる。
それを何回も繰り返している。
おそらく、操作方法をちゃんと聞いていなかったのだろう
まぁ、俺には関係ないか……
ネトゲの世界は残酷だ。
プレイヤーのほとんどが常識しらずの自分勝手、
それにここは仮想の世界、
誰かに気を遣う必要もない。
と思っていたのだが、
何故か俺はそいつに近づき、話しかけていた。
『操作方法がわからないのですか?』
俺はそう打ち込んだ。
すると返ってきたのは案の定、
『はい、全然分かりません』
返して
『細かい操作なら、キーボードでコマンドを打ち込まなければいけませんが、ほとんどは横の十字キーで大丈夫ですよ 』
『ありがとうございます』
よし、これで用は済んだ。
早速俺は、狩りにでも……
『迷惑でなければ、私に色々レクチャーしてくれませんか?』
は?
まじか(´・ω・`)
どうする……
ここで断ればすぐに済むことだ。
だがこの状況は……
『分かりました、では始まりの大地に向かいましょう』
断ることができず、レクチャーを引き受けてしまった。
俺は内心悔しい思いをしながら、アバターを操作した。
その後ろにはまだ動きがいびつなアバターが跡をついてきていた。
*******************
ここからは完全にカオス・オンライン目線で話を進めよう。
『始まりの大地』
俺たちが向かう先である。
王都セントラルに隣接し、
初心者プレイヤーも安心して狩れるレベルのモンスターがいる場所だ。
そこで俺は名も知らない獣人女アバターに戦い方をレクチャーすることになった。
武器は槍、
筋力要求値が低い武器であるのでそれを選ばせた。
さて戦い方を教える。
「通常攻撃は説明にあったとおり、キーボードを連打するだけで連続攻撃になるし、方向を指定することで、攻撃範囲も変わる、最も安定して戦える」
「なるほどー、」
「でもそれだけだと、威力は低いのでそこでスキルを使う、君のスキルの中に槍用バトルスキル初期技『点突』がある、それを使う際は設定されたコマンドを打ち込む、それだけだ」
「なるほどー」
そういいながら、目の前を横切る危険度1の青ゴブリンに槍を構える。
するとコマンドを入力したからであろう、
バトルスキル発動時、武器に発生するライトエフェクトが現れた。
そして、速度の速い突きを一発、青ゴブリンに与えた。
そのまま青ゴブリンは倒れて、その場で消滅。
「モンスター初討伐おめでと」
「ありがとうございます」
「じゃあ大体のことは教えたから、俺は戻るね」
その場から去ろうとしたとき、
「フレンドになってくれませんか?」
なるほどー、
そうきたかー
だが俺は断る。
初心者なんぞ、フレンドになっても役に立たないからな
「いいですよ、」
でもやはり断れなかった。
そして俺はそのまま謎の女アバターのフレンド申請を許可し、フレンドになった。
フレンドリストに乗った名前には
「ハル」とかいてあった、、
********************
春休み二日目、
今日は晴れた!!
私は友達とショッピングモールに来ている。
服買ったり、クレープ食べたり、プリ撮ったり、
なんてことをして楽しんでいた。
そういえば昨日会った人優しかったなー
会ったというのは不適切な表現かもしれない。
そのひとはネトゲで知り合った。
一人オロオロしている私に話しかけてくれて、色んなことを教えてもらったあげく、フレンドにまでなってくれた。
今日もログインして、その人に会えたらいいなーみたいなことを考えてしまう。
「ねぇー小春、あそこのカフェでお茶しながら話そうよ」
「うん、そだね、行こう」
友達の誘いで
目の前で営業しているカフェに入った。
中は中々おしゃれなのだが、人は多くない。
私は椅子に座ってメニューを取る際、
視界の端に誰かがいたことに気づく。
そこにはボサボサの白髪の少年がすわっていて、パソコンをいじっていた。
ネトゲでもやってるのかな?
「小春、何にするの?」
「私はカフェオレかな」
テキトーにメニューを決めて、少年が何をやっているのか見ようとしたが、
防護シートで良く見えない。
てかなんで私がこんな男がやっていることに興味を持ったのか不思議だった。
ここからじゃ見えない、
水を取りいく振りしていくか……
「ねぇ、水いる?」
「ぇ?取ってきてくれるの?」
「うん」
私は立ち上がり、冷水機が置いてあるところに行った。
そして水を入れたコップを二つ持って、席に戻るついでに少年のパソコンを覗いた。
くっ、後もう少し、、
少しずつ身を乗り出していく。
少年のパソコンに向けて、
かろうじて見える程度にはなった。
何やら戦いをしているように見える。
輝かしいライトエフェクト、
そして、打ち込むコマンドの多さ、
ま、まさか
彼がやっているのは、
「何やってんのよ、小春」
「うわぁ!?」
結構体を乗り出していたらしく友達に
急に声をかけられて驚き、手に持っていたコップを傾けて、
水をパソコンの上にこぼしてしまった。
「ぁあ!?」
「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあ!!!!」
少年は絶叫し、必死に水を拭き取っているが、パソコンの電源は勝手に落ちて何やら変な音が鳴っている。
要するに壊れたのだ。
「お前なにしてくれてんだょ!!」
「す、すいません!!」
男は怒り、私を怒鳴りつける。
まぁ当たり前なんだけど、
「まぁ、いいや、今度から気をつけろよ」
えぇーいいの!?
パソコン一台壊したのに!?
「もう一台持ってきてるから、」
「そういう問題ですか……ホントにすいません」
「いいって、」
「今度弁償しに行きますので」
「あぁそう、じゃあここに来てよ」
何か紙を渡された。
その紙には、住所が書いてあった。
「分かりました、ではまた後日、ホントにすいませんでした」
私はその場にいるのが辛くなり、逃げ出した。
でも私はこのとき気づかなかった。
彼がやっていたゲームが
カオス・オンラインであり、
彼のアバター名が『ジーク』ということを……………