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ひとの背中をぐりぐりするな

タイトル通りのお話です。

初投稿で、つたない文章ですが、軽く読んで楽しんでもらえたら、幸いです。

 ぐり


―痛い―


 うつ伏せになった俺の背中に、何か固いものがぐりぐりと押し付けられている。

 ぐりぐりぐり


―痛い、痛い、痛い―


 ぐりぐりぐりぐりぐりぐりぐりぐりぐりぐりぐりぐり


―だから、痛いって―

 

 ぐりぐりぐりぐりぐりぐりぐりぐりぐりぐりぐりぐりぐりぐりぐりぐりぐりぐりぐり


「痛いんだよ!いい加減にしろ!!」


 俺は、体をはね起こして、怒鳴った。


「うわああああああ!」


 声をあげて、ぱっと蜘蛛の子を散らすように、3つの影が飛び退った。

 ガキだ。

 男二人と、女一人。それぞれ、十二、三歳くらいに見える。

 男のガキが、おもちゃの剣を構えていた。

 こいつで、ぐりぐりとやったに違いないと、検討をつける。


「お前か!」


「だったら、なんだ!」


 悪びれる様子もない。

 逆に、剣をこちらに突き出してくる始末だ。たちが悪い。


「お前なあ!人の背中の背中をなあ!いくら子供でもなあ!そんな尖ったものでぐりぐりされたらなあ!痛いんだよ!」


「ご、ごめんなさい!」


 白いローブを着た女の子が、涙目になって謝った。


「バカ!謝るな!とっととやっつけるぞ!」


「いや!だめだよ、ラップ!このドラグニク、しゃべったんだよ!初めて見たよ!話せるなら話してみよう!」


 黒いマントに、黒い三角帽子、大きな眼鏡をかけた黒髪のガキのほうも、戦意はないようだ。

 逆に、青いシャツを着た銀髪のやつは、おもちゃの剣をこちらに向けて、実に好戦的だ。

 今にも、こちらに飛び掛からんばかりだ。


「おい!そこのガキ!お兄さんはなあ!他所の子でも、躾けには容赦しない大人なんだぞ!痛いめに会いたくなかったら、そんなおもちゃ捨てて、謝りなさい!!」


「おもちゃじゃない!バカにするな!」


 銀髪が、おもちゃの剣を振りかぶって、こちらに向かって突進してきた。

 とんでもないガキだ。親の顔を見てみたい。

 なに、おもちゃの剣だ。そう見くびった俺は、一度剣を手でつかんでから、取り上げてやろうと待ち構える。

 子供にしては、腰の入った鋭い振りだが、俺の目には、その軌道がはっきり見えた。

 もくろみ通り、手のひらで受け止める。

 しかしその途端、予期していなかった、とんでもない痛みが手に走って、思わず飛びすさった。

 とても、つかめたものじゃない。

 というより、子供の持つおもちゃの威力じゃない。


「いてええええええええ!」


「なんで?なんで切れない?!」


 ガキもガキで、驚いている。


「お前、そのおもちゃなんだよ!危なすぎだろう!プラスチックじゃないのかよ!金属でできてんのか?!」


「だから、おもちゃじゃないっていってるだろ!」


 もう一度、剣を大上段に構えて襲ってくる。

 手で受けるのは、もうごめんだった。

 俺は、ひょいと後ろに飛んで、剣を避けた。


「避けるな!」


「無茶言うな!」


 それから、剣をぶん回して襲ってくるが、すべての攻撃を、ひょいひょいと下がりながら避ける。

 剣の動きが、よく見える。体が軽い。自分はこんなに俊敏だったろうか?

 調子よく避けていると、背中が何かにあたって、退路がふさがれた。大きな木だ。

 これでは、もう後ろに下がることはできない。


「覚悟しろ!」


 追いつめたと思ったか、一気に踏み込んできた銀髪の、横なぎに払われた剣を、俺は真上にジャンプして避けた。

 銀髪の頭上をとんぼ返りに飛び越えて、その背後に立つ。

 自分のやったことに驚いた。

 そんなことができたことも、それができると体が知っていて、無意識のうちにそんな避け方を選んだことも、異常だ。

 けれど、もっと異常で、驚くべきことは、俺が背にしていた木の幹が、振るわれた剣によってばっくりと抉られていたことだ。

 背中で触れたときには、しっかりと固い幹だったはずなのに。


「おい、なんだそれは!そんな物騒なおもちゃ、どこに売ってるんだ!」


「次は仕留める!」


 ガキが、剣を構えて、こちらを向く。


「お前、そんなもんで人叩いていいと思ってんのか!人殺しになって、親を泣かせてもいいのか!」


「母様のためだ!」


 突っ込んでくる。

 どうする?このまま、いつまでも避けているわけにはいかないぞ。

 そのとき、俺は無意識のうちに、背中に手を伸ばしていた。

 そこに、事態を打開するための何かがあることを、体が知っているようだ。

 

 手に、固いものが触れる。鉄の棒のようだ。それを背中に負っていた。

 俺の身長くらい長く、丈夫そうな、鉄棒だ。

 両手で持って、待ち構える。

 剣を鉄棒で受け止めると、金属と金属のぶつかる大きな音が響いた。

 ガキのくせに、とんでもないバカ力だ。

 けれど、俺も力では負けない。よろめきそうになったのをこらえて、逆に押し返す。

 銀髪は、たたらを踏んでよろめいた。


「ほら、お前もけがするぞ!やめとけって!」


 銀髪の戦意は、まだ衰えていないようで、剣を構えなおして俺をにらんでくる。

 こちらから殴りかかるわけにもいかないから、また鉄棒を両手で構えて待つ。

 そうして、二合、三合、四合と打ち合ううちに、相手の攻撃が弱まってきた。どうやら、手がしびれてきたようだ。

 片手を剣から離して、ぷらぷらさせている。

 そろそろ、頃合いだな。


 俺は、力なく振るわれた剣を、正面から受け止めるのでなく、横へと受け流して、そのまま地面に引き倒した。

 そして、尻餅をついた銀髪の目の前に、鉄棒を突きつけて、せいぜい怖く見えるよう、にらみつける。

 いい大人が、子供相手に、鉄棒片手に凄んでいる絵というのは、見栄えがよくないだろうが、仕方がない。


「ほれ!謝れ!謝らんかい!」


「くそっ!」


「あーやーまれっ!あーやーまれっ!」


 調子に乗って、はやし立てると、銀髪が、涙目になっている。

 なんだか、バツが悪くなってきた。


「あ、あのなあ、お前が悪いんだからな。お兄さんだって、鬼じゃないんだから、謝ってくれれば・・・」


 そういったときだった。

 なんだか、体がむず痒いなと思ったとたん、全身に激痛が走った。

 頭から、煮立った熱湯をぶっかけられたみたいな、とんでもない激痛だった。


「ぐわああああああああああああああ!!」


 自分のものとは思えない、獣のような絶叫をあげて、地面に崩れ落ちた。

 あまりの痛みに、意識がもうろうとする。

 なんだ今のは。

 スタンガンでも、当てられたのか? 


「助かった、グラー」


「切りかかっておいて、追いつめられるなんて。うかつだったよ」


「こいつ、なんで剣が効かなかったんだ?」


「ドラグニクだから。金属製の武器では傷つかないんだ。でも、魔法には弱いんだよ」


「そういう大事なことは、もっと早く教えてくれ!」


「教える前に、君が突っ込んでいったんじゃないか」


「突っ込んでいった後に、教えてくれてもいいだろう!」


「喧嘩しないで・・・」


 だんだん遠くなる意識の中で、そんな声を聞いていた。

甘いもの、辛いもの、どんな感想でもお待ちしています。

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