2009年1月3日
1月3日。
正月三が日と呼ばれる最終日の今日。
我が家のサンタクロースは、
「朱美さーん、ほっぺに○って書いてください!」
浮かれていた。
「ちょっと、わざわざ墨汁買ってきたの?」
「はい!」
そんないい返事されても。
「最近の日本はすごいですねえ、100円ですよ100円!巷で噂の100円ショップってとこに行ってきました」
どうでもいいが100円ショップは今さら巷では噂にはならないが、本当にどうでもいいので特に口は挟まなかった。
右手にプラスチック羽子板、左手にバドミントンのシャトル、サイドテーブルに墨汁滴る筆が突っ込まれたプラスチックコップ。
100円ショップ戦利品達は、どうひいき目に見ても、日本の正月を間違って理解しているとしか思えなかった。
「さあ、早く○って書いてください!」
いや、書かないから。
「○はね、羽子板で勝負して勝ったら書くんだよ」
確かそう。
よくよく考えたなら、勝ったのに顔に○って書かれるなんて、正直、勝敗関係なく羽子板自体が罰ゲームみたいに思える……よくわからないゲームだ。
「じゃあ×でもいいです」
「それは負けたら書くの」
これは間違いない。
左頬を突き出した千尋に、身も蓋もなく言い放つ。
大体、誰とやるつもりで買ってきたんだ羽子板。
「じゃあ朱美さん、一緒に、」
「やらないから」
やっぱりそうか。
そうじゃないかと薄々勘付いてはいたし、アピールの仕方からしてそうかなとはもう確定的に思ってはいた。
千尋御用達となったいつぞやのユニセックススウェットを眺めて、くたくた感に大分着込んだんだなあとか物思いに耽りつつ。
有り得ないくらいにしょぼくれた千尋を笑ってから、
「今年だけね」
右頬に、べったりと○を書いてやった。
「え、あ!○だ○だ!○ですよ朱美さん!」
「よかったね」
シャトルに至っては一度も羽子板と合間見えていないんだけど、よかったのか。
それは定かじゃないけれど、何はともあれ三が日。
我が家のサンタクロースは、
「やっぱり羽子板しましょう!ほら!」
がしゃ──んっ。
「……板飛ばしてどうするのさ」
「……すみません……」
豪快に窓ガラスを割って、○を付けた顔で、やっぱり浮かれていた。
「あのさ、本当羽子板を室内でとか無理だから」
「ベランダでやりますか?」
「無理だから、危ないし」
「ですよね……あっ」
「無理だから」
「まだ何も言ってませんけど」
「吉蔵さんちでなんて、絶対、何が何でも無理だから」
「よくわかりましたね!」
「無理だから」
「……行きませんか?」
「行きません」
end?