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365日のサンタクロース  作者: 鈴木真心
2009年のサンタクロース
14/17

2009年1月3日

1月3日。

正月三が日と呼ばれる最終日の今日。


我が家のサンタクロースは、



「朱美さーん、ほっぺに○って書いてください!」



浮かれていた。



「ちょっと、わざわざ墨汁買ってきたの?」

「はい!」



そんないい返事されても。



「最近の日本はすごいですねえ、100円ですよ100円!巷で噂の100円ショップってとこに行ってきました」



どうでもいいが100円ショップは今さら巷では噂にはならないが、本当にどうでもいいので特に口は挟まなかった。


右手にプラスチック羽子板、左手にバドミントンのシャトル、サイドテーブルに墨汁滴る筆が突っ込まれたプラスチックコップ。

100円ショップ戦利品達は、どうひいき目に見ても、日本の正月を間違って理解しているとしか思えなかった。



「さあ、早く○って書いてください!」



いや、書かないから。



「○はね、羽子板で勝負して勝ったら書くんだよ」



確かそう。

よくよく考えたなら、勝ったのに顔に○って書かれるなんて、正直、勝敗関係なく羽子板自体が罰ゲームみたいに思える……よくわからないゲームだ。



「じゃあ×でもいいです」

「それは負けたら書くの」



これは間違いない。


左頬を突き出した千尋に、身も蓋もなく言い放つ。

大体、誰とやるつもりで買ってきたんだ羽子板。



「じゃあ朱美さん、一緒に、」

「やらないから」



やっぱりそうか。

そうじゃないかと薄々勘付いてはいたし、アピールの仕方からしてそうかなとはもう確定的に思ってはいた。

千尋御用達となったいつぞやのユニセックススウェットを眺めて、くたくた感に大分着込んだんだなあとか物思いに耽りつつ。

有り得ないくらいにしょぼくれた千尋を笑ってから、



「今年だけね」



右頬に、べったりと○を書いてやった。



「え、あ!○だ○だ!○ですよ朱美さん!」

「よかったね」



シャトルに至っては一度も羽子板と合間見えていないんだけど、よかったのか。


それは定かじゃないけれど、何はともあれ三が日。

我が家のサンタクロースは、



「やっぱり羽子板しましょう!ほら!」



がしゃ──んっ。



「……板飛ばしてどうするのさ」

「……すみません……」



豪快に窓ガラスを割って、○を付けた顔で、やっぱり浮かれていた。





「あのさ、本当羽子板を室内でとか無理だから」

「ベランダでやりますか?」

「無理だから、危ないし」

「ですよね……あっ」

「無理だから」

「まだ何も言ってませんけど」

「吉蔵さんちでなんて、絶対、何が何でも無理だから」

「よくわかりましたね!」

「無理だから」

「……行きませんか?」

「行きません」




end?

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