2008年12月24日
12月24日、天下のクリスマスイヴ。
天下のイベント続きな連日ではあるが、この日、社会人にとっては普通に出勤し普通に仕事をする平日でもある。
……昨日も出勤したのに。
とは言っても、仕方ないものは仕方ない。
日本国家は仏教徒が大半なのだし、そもそもが多神教であり無宗教に近い。
まあ、個人思想は自由だけれど。
それでも。
「古賀さん、今夜はどう?」
頭の中はそうでもない奴ってのは、やっぱり存在するわけで。
「仕事しようよ、大宮くん」
「いやー最近古賀さん、三多にべったりだったじゃないですかー」
「べったりって。仕事だから」
そのだらけた喋り方は何とかならんのか。
「仕事仕事じゃ疲れちゃいますよ。だから、ほら、俺が癒してあげますって」
頼んだ覚えはないし、何をどう癒してくれるつもりなのかも敢えて聞きたくない。
聞かずとも残念なことに、こいつの目が語っていた。
それがより残念感を煽っていたのだけど、知らぬは本人ばかりなり。
「大宮くーん!」
「ほら、パートナーが呼んでるよ」
猫なで声のお局様が、にやにやと大宮くんを手招きしている。
本当にいろいろ残念だよね、大宮くん。
渋々とそちらに歩いていく彼の背中は、それはそれは小さく見えた。
「……帰ってくんのかな?」
しばらく空きになっている隣のデスクに呟きを投げ掛けてから、少しだけ、肩を落とすあたしがいた。
何だかんだ言って、いないとちょっと寂しいのは何故だろうか。
三多千尋。
職業/世界を相手取るサンタクロース。
国籍は日本 (らしい) で、金髪蒼眼の外人顔。
日本語は流暢だが、果たして英語はいけるのか。
バイリンガルか、トライリンガルか、どこまでもマルチリンガルなのか。
国籍は日本であっても、実際はどこの血を引いているのか。
三多っていう苗字だって“みた”と読ませてはいるけれど、明らかに当て字くさい。
キーボードを叩きながら、今夜のメニューを考える。
奴がいるときは大抵作ってくれていたけれど……。
「……カップ麺でいいか」
少しだけ、期待をするあたしがいる。
でも、飽くまでも“大人”なあたしが、世界中の“よい子”をないがしろにしてはいけないのだ。
サンタクロースは世界中のよい子のために。
クリスマスの奇跡のために。
千尋はきっと、約束は破らない。
彼は、サンタクロースなのだから。
「さ、仕事するかー」
今晩のメニューはコンビニ購入に決定し、サンタクロースの活躍を心の中で、密かに応援した12月24日。
今日はイヴ。
明日は、クリスマス。
奇跡は、起きるのかどうか。
end?